街頭演説集

第53回 エアポートバス

エアポートバス復活の影に政治的配慮が!?

Facebook 2016.8.24

 去る8月18日(木)は53回目の街頭演説。お盆休みと重なったため、月曜日を木曜日にずらしての挙行となりました。
 さて、テーマは呉広島空港線、いわゆるエアポートバスについてです。
 この路線は20年近く前まで呉市交通局と中国JRバスの共同運行でしたが、採算が合わないとの理由で、JRバスが撤退し、呉市交通局独自で運行して来ました。1便当たりの平均乗車人数は僅か8名で、毎年度2千万円から3千万円の赤字を出し続けて来たのです。
 市営バスを民営化するに当たって、呉市はアキレス腱となっている本路線と大広白岳線、吉浦天応高地部線の3路線を廃止し、経営を身軽にした上で、広島電鉄に移譲した経緯があります。民営化1年前の平成23年3月末のことでした。
 当時、呉広島空港線を廃止するに当たり、市当局は議会に対し、運行1km当たりの平均乗客数が僅か5.6人、100円の収入を得るために必要な運行経費248円であり、各々ワースト評価基準の5人、200円に照らし合わせて、廃止やむなしと説明したのでした。併せて、本路線を廃止しても、広島バスセンターやJR白市駅までの空港リムジンバスが代替手段として存在している旨を強調したのです。
 ところが、本路線を廃止して僅か1年2ヶ月後の25年6月定例会で、市長はあっさり方針転換を表明したのです。つまり呉広島空港線の復活です。表向き理由としては、平成24年4月に東呉道路の阿賀~黒瀬間の開通により時間短縮がなされ、バス利用の需要が増えるというものでした。
 ここで疑問が生じます。先ず、東呉道路の部分開通は、路線廃止時には折り込み済みだった訳ですので、理由にならないのではないかということです。しかも社会実験を行うということですが、それなら平成27年3月に東呉道路が全線開通するのを待ってから実施して判断すべきでしょう。
 更には、平成25年7月からの運行は、24年12月にプロポーザルを行って民間に委託する様な格好となりましたが、あくまでも社会実験ではなく、当初から正規の路線申請をしてもらう条件にすり替わってしまっていたのです。そしてそれには広電1者のみが応え、通年ベースで1,089万円を呉市が補助する提案だったのです。勿論プロポーザルを実施するに当たってはそれに応えてくれるよう、広電に根回ししたことは容易に想像されますので、出来レースだったと言われても過言ではありません。
 しかもこれは、1便当たりの平均乗車人数を10人として積算しています。つまり、それに満たない場合の穴埋めは呉市に求めると同義と解釈されます。これなら最初から路線譲渡を受けるよりも、税金での確実な補填が担保されるため、広電としては安心です。呉市は市営バスを民間移譲するために、アキレス腱を切った訳ですが、別建てで支援することになった訳です。
 更に、プロポーザルを実施する際に、予算の裏付けとなる債務負担行為の設定は行いませんでした。これでは新庁舎建設の場合と逆行しています。先にプロポーザルで広電を選定すれば、平成25年度予算にその補助金を計上しても、議会は否決しないだろうと甘く見られたことになります。
 一方、初年度は7月からの運行ですから、予算は726万円です。この内、初年度に限り1/3を県に補助してもらうことになりました。これは空港リムジンバスを導入する為の社会実験を行うための制度です。県に対しては社会実験、広電に対しては、正規の運行と見事に二枚舌を使い分けました。
 しかも社会実験補助の受け皿として、呉市、広島県、広島電鉄、呉商工会議所、観光関連団体、ホテル等で構成する実行委員会を起ち上げた訳です。実行委員会と言っても名ばかりで、呉市以外の構成団体は負担金の支出は皆無であって、空港線のポスター製作や広報活動に係る経費は、全て呉市が負担するところとなりました。実行委員会に広島県が入っているのは、呉市の二枚舌を分かった上での共犯と言われても仕方ありません。
 実は、東京都にある企業が飛行機を利用し出張で呉市を訪れる際に、利便性を図るよう、市長に財界が圧力をかけた形跡が伺えます。
 というのは、自治連や市民団体からの要望は全く上がっていなかったのです。よくよく考えてみれば、市民が上京する場合、新幹線を利用する方がずっと安価に済ませることができるのです。呉市民の飛行機国内便利用の内87%が上京便ですが、飛行機利用率が 38%に止まっているのに対し、新幹線利用率は49%なのです。
 しかも、家族で飛行機を利用する場合は、自家用車で空港へ行き、駐車した方がずっと安価となります。何せバス運賃は一人片道1,340円、往復2,300円かかるからにほかなりません。加えて、既に東呉道路が全通した今となっては、自宅からバス停に出る時間やバスの待ち時間も差し引きますと、かなり時間短縮が実現できるのです。
 ということは、一部富裕層や財界のために、市民の血税を投入していると言われても仕方ないでしょう。つまり、受益者負担原則からはかけ離れていることを意味します。
 結局は、政策がぶれているのです。本路線を廃止した時の市長の英断には感服しましたが、程なく真逆の施策を打ち出したことには、がっかりさせられました。財界主導ではなく、あくまで市民本位の政治を行って欲しいと切望しています。
ところで、エアポートバス復活初年度の1便当たりの平均乗車人数は8.1人に止まりました。しかし呉市の広報活動、広電の主要ホテル付近をバス停に設定する方策が功を奏し、昨年度のそれは9.6人、今年度は7月までで9.7人と、目標の10人に近づきつつあります。
 いずれに致しましても、今後の経営状況を見守って参りたいと思います。
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