街頭演説集

第86回 子どもまちづくり事業への疑問

教育効果に逆行する、特定の子どもへのばらまき予算!

Facebook 2017.4.8

 去る4月4日は、新年度スタートに合わせ、脱着用コートでの街頭演説。さしずめ衣替えととなり、通算86回目を数えました。テーマは子どもまちづくり事業等についてです。
 
 呉市は新年度予算に、子どもまちづくり事業として300万円を計上致しました。これは、小学生から大学生までを対象に、子ども自ら企画立案したまちづくり事業に対し、1件当たり10万円を限度に事業費を助成するものです。
 但し、次世代を担う子どもを支援するというのは聞こえはよいですが、子どもが主体となって行うまちづくり事業が存在するのかということです。高校生以上ならともかく、小中学生では至難の業でしょう。
 と申しますのも、例えば子ども会という組織がありますが、私達の子ども時代は、夏休みの海水浴や勉強会等、確かに子どもが主体となって企画し、それを親たちがサポートしていました。ところが、現在の子ども会は親が主体となり、行事を企画していることが多いのではないでしょうか?
 次に、公募や選定方法をどうするのかといいますと、各まちづくり委員会に推薦してもらった企画を地域協働課が選定することになります。確かにまちづくり委員会(協議会)は市内に自治会連合会単位に28地区ありますから、それで30団体分の予算を組んだ訳です。これはまちづくり委員会に新たな仕事を押しつけた格好となります。
 過去、様々な活動を縦割り行政毎に表彰する際、まちづくり委員会に推薦を上げさせることが多かったのですが、ある意味枠があるから、仕方なく推薦をしていた感があります。
ましてや、各まちづくり委員会がプレゼンテーションを審査して、それが本当に子どもが主体となって企画したのか、子どもが本当にプレゼンテーションを行うのか、地域差が出るでしょうし、甚だ疑問です。
 しかも、まちづくり委員会から推薦の上がった候補を、地域協働課としては、そのままそれを受け入れざるを得ないのは目に見えています。少なくとも、市全体で公募しプレゼンテーションを行い、それを市長の諮問機関である市民協働推進委員会が審査するのでなければ、地域差で不公平が出たり、子ども主体は表向きで、実際は親達が立案した企画であったとしても見破ることはできないと思います。
 実は、これと類似する事業が、昨年度初めて予算計上されているのです。それはふるさと子ども夢実現事業と言って、呉市立中学校選抜生徒による「ふれあい夢議会」での最優秀事業提案に対して、事業費30万円を助成する内容です。これは、呉市議会議場を使って、生徒に模擬議会体験をさせるもので、私も過去何度か傍聴したことがあります。
 確かに、斬新なアイデアを生徒が提案するのはよいですが、それを実際に事業化するのは、投資効果や事業の継続性という専門家の視点が欠かせない訳で、安易にそれに市民の血税を充てるのは大いに疑問です。模擬議会の意義は、生徒にまちづくりや議会を体験させることで、ふるさとへの愛着を醸成し、主権者教育に寄与することにある訳で、その事業を提案するために生徒自らで調査したり、成案を得るというプロセスに教育効果があるのです。
 しかも、提案が採用されたグループと不採用のグループとで差別感が渦巻き、教育的には逆効果と考えます。
 一方、新年度の新規事業として、やはり子どもを対象とした、文化・スポーツ応援事業が計上されました。これは、中学生と高校生を対象として、文化・スポーツ両分野において、全国優勝等の優れた成績を収めた生徒及び団体に対して、報奨金を交付するものです。 具体的には中学生の場合、個人5万円、団体は上限20万円(5万円×構成人数)、高校生では、個人10万円、団体は上限30万円(10万円×構成人数)で、個人の対象人数を各々5人に設定することで、合計325万円の予算となっています。
 先ず、小学生を対象外としたのは、中学、高校では部活を通じて、中体連や高体連という組織的な全国大会があるのに対して、小学校の場合は、そのような大会が少なく、ユースでの活躍となりがちで、学校生活と離れるという理由でした。ということは、バトミントンの高松ペアが各々小学生の時全国優勝をしましたが、それらは対象外ということになります。これもおかしな話です。
 しかも、既存事業としてオーク賞制度が呉市にはあるのです。これは小学生から大人にかけて、どの世代でも全国優勝すれば表彰されるのです。これは記念のメダルと表彰状を授与するのであって、その栄誉を称える趣旨です。私はこれで十分だと考えます。
 当然オーク賞を受賞した中高生には、文化・スポーツ応援事業での報奨金の対象となりますから、方や栄誉を称えられ、方やお金を貰えるということになります。準優勝や入賞者との差別化を図るのに金銭というのは、健全育成とかけ離れるような気がしてなりません。
 そして、極めつきの疑問点は、対象中高生が呉市民でなければならないことです。例えば県立高校は県内全体が校区ですから、呉市外から通っている生徒も多い訳です。同じ呉市内の高校に在学していても、呉市民は報奨金の対象になっても、呉市民では対象外というのも不公平です。
 しかも団体となると、それが顕著になります。例えば3人の団体戦で全国優勝したとして、3人中2人が市外通学者であれば、団体に対し10万円しか報奨金が交付されません。3人とも呉市民でなければ、報奨金は交付されないことになります。
 また市立呉高校において、野球推薦枠で入学する生徒は県外から中村監督を慕って甲子園を目指しますが、彼らは呉市民でない場合が多く、寮生活を送っています。この様なことを考えますと、矛盾した制度であり、教育的にも逆効果となる可能性を秘めているのです。
 そもそもこれら事業は、お金で激励するという考えが根底に流れており、教育の在り方とかみ合いません。
 そして、財政が毎年度赤字になると予想されている本市において市長は、「我慢するものは我慢する。どうしても必要なものにだけ、予算を講じる」とかねてから豪語していた訳ですが、この趣旨にも全くそぐいません。選挙目的の得点稼ぎと言われても仕方ないでしょう。
 しかも一旦予算化したら最後、これを廃止する勇気は選挙で選出される政治家にはないでしょうから、いきいきパス制度の様に半永久的に財政負担を強いることになるのは、火を見るよりも明らかです。緊縮財政の原点に立ち返るのが本然の姿だと考えます。
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