街頭演説集

第101回 障害者の就労とA型事業所難民

中軽度障害者の就労先確保で、A型難民流出に歯止めを!

Facebook 2017.7.26

 去る7月19日は101回目の街頭演説。テーマは障害者の就労問題です。
 障害者の就労に関しては国として、障害者雇用促進法により、一般就労を促進して来ました。これは法定雇用率2%、つまり、従業員50名の企業に対し、1名の障害者を雇用することを義務付けています。これができない企業にはペナルティとして、障害者雇用納付金が課せられることになっているのです。
 ところが、地方にはこのような規模の企業が少ないこと、企業としては知的障害の伴わない身体障害者を特に雇用する傾向にあることから、法定雇用による一般就労には限界がありました。加えて、法に基づかない雇用であって、知的が伴わない発達障害者においては、人間関係の難しさから、一般就労が続かない傾向が多々見受けられました。そして中重度障害者においては、各県と市町が協調補助を行う形で、法的根拠なき小規模作業所での軽作業が続いていたのです。
 そこで、平成18年度に施行された障害者自立支援法(平成24年度より障害者総合支援法に発展的改正)において、小規模作業所を法的に位置付けると同時に、それを取り込んだ形で、障害者就労継続支援事業所がスタートしたのです。これには、国が自立支援給付の3/4を受け持ち、県と市が1/8ずつを負担する仕組みとなっています。
 障害者就労継続支援事業所とは、既存の小規模作業所を発展させ、中重度障害者を対象とする障害福祉サービスを提供する事業所をB型、中軽度障害者を対象とする障害福祉サービスを提供する事業所をA型と呼びます。B型では福祉が中心ですが、作業の中から収益を生み出した分からは、個々の利用者に対し工賃が支払われます。但しこれは、全国平均で月額1万5千円、呉市内では1万円程度の低額に止まっています。
 これに対してA型では、利用者と雇用契約を締結するため、最低賃金法や労働基準法、労働契約法、雇用保険法、労働災害保険法が適用されることが大きな違いです。労働時間によっては、健康保険法や厚生年金保険法も適用されます。例えば社会保険の適用されない週20時間の労働時間であれば、広島県の最低賃金は現在793円ですから、月額6万円強の賃金収入となります。つまりB型の工賃と比較して、大きな開きがある訳です。
 ところが、A型、B型への公的補助、即ち自立支援給付単位は同額となっています。具体的には、利用登録定員20名以下、利用者対職員の比率が10対1、呉市の様な6級地の場合で、1日の利用者1名に対し、5,410円が交付されます。ということで工賃の極めて低いB型が乱立するも、A型は最低賃金をクリアする義務が課せられているため、なかなか増えない実情があるのです。呉市においてはB型28箇所に対し、A型はこの3年間殆ど増えることなく、僅か6箇所に止まっています。
 
 一方国は、去る2月に指定障害福祉サービス運営基準を見直し、それを受けて呉市を含む各市町は同運営基準条例を改正し、今年度から施行しました。その内容はA型事業所において、「利用者による生産活動に係る収入から経費を控除した金額以上を賃金に充てなければならない」、転じて「賃金に自立支援給付を充ててはならない」の2項が追加されたのです。
 この新基準によって多くのA型事業所において、運営継続が困難に陥ったのです。呉市は勿論のこと、近隣町においても既に7月末を持ってA型を廃止し、B型に転換する事業者が出現しました。倉敷市では、A型を含む5事業所が閉鎖に追い込まれ、その結果225名の解雇者が出ます。そのため、ハローワークの障害者担当窓口には就労相談が殺到。この状況を「A型難民」とまで囁かれています。
 実際、A型をB型に転換して、そのまま同じ事業所を継続利用する場合、失業手当は支給されますが、最長300日間で、その後は低工賃のみとなります。また他のA型に移ろうにも、その事業所そのものが少なく定員オーバーとなっていたり、しかも仕事内容がマッチしているかどうかの選択肢も非常に狭まっており、失業者になる確率が高いのです。つまり、A型の能力がありながらB型を選択せざるを得ない状況に陥ってしまうことになります。これでは何のために障害者就労継続支援A型事業所の制度を構築したのか、解りません。
 そこで私は厚労省に対し、この新基準に係る法的根拠の確認と新基準の考え方を問い合わせているところですが、まだ解答はありません。A型廃止を防止し、それを増やして行く手段として、A型において自立支援給付の一部賃金への転嫁を許容し、A型とB型における自立支援給付に差異をつけることを提案もしました。
 
 またこの度、A型からB型事業所に就労を転換する障害者に対して、新たな問題がのしかかりました。B型を利用するためには、その適正を判断するアセスメントを就労移行支援事業所等で受けなければならないというのです。この就労移行支援事業所では最長2年間訓練を受けることとなりますが、その間失業手当は一定期間保証されるも、その間は工賃は原則受け取れないことになります。
 これを直B廃止と呼んでいます。私はこれまでA型で訓練を受けていたのであるから、その者がB型へ移行する際は、アセスメントは不要ではないかと主張しました。ところが呉市は、下記理由で、頑としてそういう訳にはいかないというのです。
 つまり、平成27年度から指定障害福祉サービス運営基準が改正施行され、過去延長を重ねて来た直Bが廃止されました。即ちB型の対象者は、①就労経験があり、年齢や体力面で一般企業に雇用されることが困難になった者②50歳以上または障害基礎年金1級受給者③それ以外の者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより課題把握が行われている利用希望者-となりました。ということは、例えば特別支援学校卒業者は、すぐにB型を利用できず、一旦は必ず障害者就労移行支援事業所で適正検査と訓練を受けねばならなくなったのです。
 そこで私は厚労省に対し、A型で訓練を受けた者で、事業所の事情でやむなくB型へ移行せざるを得ない者はアセスメントは不要ではないかと訴えました。そうすると、「それでよい」との回答を得ることができたのです。それを受け、呉市を通じて広島県に対しその旨を伝え、少なくとも本県においては、アセスは不要となりました。私は、「基準そのものが不備だからこの様な事態に陥り、現場が混乱している。しかも問い合わせのあったところとそうでないところで対応が異なるのはまずい」として、厚労省に対し基準の追加改正を要請したところです。
 ということで、この度の特にA型における運営基準改正は、現場を知らず、実態に即していない施策となっています。国のいいなりの地方行政ではなく、疑問点があれば積極的に国に談判し、今後も障害者の就労先確保に向け、精魂を傾けて参る所存です。
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