街頭演説集

第118回 青山クラブ等の活用方針案

青山クラブ活用策には目玉展示が必要不可欠!!

Facebook 2017.12.20

 去る12月18日は、118回目の街頭演説。テーマは、12月15日に呉市議会総務委員会で公表された、青山クラブ等の活用方針案についてです。

 呉市は、今月国から、海上自衛隊集会所「青山クラブ」とその別館である「桜松館」を敷地を含めて一括購入する方針を昨年12月に発表しておりました。ただ、その活用方針において、桜松館を観光施設に改修し、青山クラブは解体して駐車場に転用する内容だったため、議会や市民から疑問の声が出たことで、保留となっておりました。そのため、国からの公共優先購入は、来年度当初に延期される見通しです。
 青山クラブと桜松館は、戦時中、下士官兵集会所とその家族の厚生施設として存在価値を有し、昭和4年に現在の鉄筋コンクリート造に建て替えられています。大ヒットしたアニメ映画「この世界の片隅に」にも、メインに描かれており、これを訪ねて来る観光客もおられます。
 新市長も、「できれば全部保存したいが、投資効果も含めて再検討する」との答弁が、先の12月定例会でありました。
さて、これらの動向を受けて、この度市は活用案4案を提示致しました。
 その4案全てに共通するのは、桜松館の整備です。これは耐震改修を施工した上で、音楽演奏機能を備えたレストラン・カフェと土産物売り場を設置する観光拠点施設となります。この改修・整備だけで数億円かかるようですが、数字は未公表です。これを仮に6億円としておきましょう。そして建物を含めた土地全体を購入するのに、今年度予算として3億3,600万円が組まれていますので、これだけで9億円強が必要となります。
 市が示した4案は、この9億円強とは別途係る費用を概算提示しております。
 第1案は、前市長が当初提案した内容で、青山クラブを解体し、200台の駐車場を整備するというもので、解体・整備費に5億円がかかります。委員会ではその内数は示されませんでしたが、解体費に3億円、駐車場整備に2億円程度かかるようです。
 第2案は、青山クラブ外壁の一部をモニュメント式に残すもので、その耐震改修を含め、駐車場を150台分整備することで、6億円が必要となります。
 第3案は、青山クラブ建物の一部1/3程度を残し、観光施設に衣替えするもので、その耐震診断・改修を含め、駐車場を100台分整備することで、15億円が必要となります。加えて建物の維持管理費が毎年4千万円かかります。
 第4案は、青山クラブ全てを保存し、観光施設に衣替えします。これは、この度NPO2団体から提案された内容に合致するものです。 但し、設計費や耐震に係る診断と改修費を合わせると30億円もかかってしまいます。加えて、その建物を維持管理するのに、毎年9千万円が必要となります。

 次に財源問題ですが、有利な起債である合併特例債の活用の可否が鍵を握っています。これは、対象総事業費の95%が借金の対象で、その内7割が利子を含め、10年間で交付税措置、即ち国の負担となるものです。これは広域合併の翌年度から15年間が事業期間とされており、呉市の場合平成31年度までに、事業を完了できないと合併特例債の対象となりません。
 ということで、第1案と第2案は31年度までに工事を完了できるため、その全額が合併特例債の対象となります。第3案は合併特例債の対象外、第4案は駐車場整備部分の1億円のみがその対象となります。つまり、建物の保存と耐震改修は32年度以降に工事がまたがって来るため、合併特例債の対象となりません。
 但し、現在政府が合併特例債の対象期間を5年間延長することを検討しており、これが実現しますと、第3、4案とも全てが合併特例債の対象となる訳です。
 因みに、呉市の合併特例債の発行限度額は540億円で、残りの債権発行枠は20億円ありますので、全てが嵌まりそうです。
 ところで、もし民間提案の様に第4案を採用した場合、青山クラブの保存、活用策が問題となります。提案ではゲストハウス、映画館、まちづくり拠点施設とあります。
 ゲストハウスは、観光客が連泊可能な安価な宿泊施設のことで、トイレや浴室を共有して、宿泊客同士が交流できるシェアハウス的要素があります。しかし、「この世界の片隅に」の余韻効果が、いつまでも続く訳がありません。ニーズは少ないと思います。かと言ってビジネスホテルや旅館のような宿泊施設では民業を圧迫してしまいかねません。
 そもそも、誰がその宿泊施設を経営するというのでしょう。民間事業者を誘致する場合には、採算が合わねば事業化をすることはありません。以前呉市は、音戸ロッジ跡地の活用策として、100室以上の宿泊施設誘致をプロポーザルで募集しましたが、提案事業者は皆無だった経験があります。また、公設民営にしようものなら、指定管理事業者が赤字に陥らないようにするため、収支不足分を呉市が税金で補填し続けねばなりません。
 映画館にしても全く同様です。加えて通常の映画館とは異なり、過去呉市を舞台にした懐かしの映画を上映するという構想も、インターネットやビデオが当たり前の現在、ニーズがあるとはとても思えません。
 それからまちづくり拠点施設ということですが、現在くれ協働センターが新庁舎内に、ひろ協働センターが広市民センター内にあり、重複してしまいます。また新たな運営に係る委託人件費が発生することが予想され、維持管理費9千万円を超過してしまいます。
 宿泊施設や映画館は収益事業ですので、ポートピアランドの失敗で明かな様に、行政が手を出すものでは決してありません。まちづくり拠点や観光拠点は収益を生み出さないため、新たな委託に係る費用が発生するのです。
 呉市の提案にも、第3案と第4案において、保存活用する際は宿泊施設等を検討するとしており、全くの愚策と考えます。私は委員会でも、この点を強調しました。
 この様に精査してみますと、私は第2案と3案の中間、即ち第2.5案を提唱致します。即ち第2案の外壁保存は、建物の特徴的な左端部分、丸みを帯びた箇所のみとなっており、外壁全体の1/5程度です。それをそこを含めて、正面全体の外壁を残すというのが私の提案です。これだと外壁全体の1/3程度となります。
 建物を保存しないので、改修費や維持管理費は軽微なものとなり、しかも「この世界の片隅に」に描かれている建物全体のイメージを保つことができるのです。
 ところで同映画には、その建物の前の番兵棟の中に番兵が立っている場面が登場します。この番兵棟の現物は、現在入船山記念館内にあり、これを移設すべきです。そして当時、下士官兵集会所に行くには、直前の「めがね橋」を渡る必要がありました。これは歴史的価値ある建築物らしく、現在はアスファルト道路の地下に隠れて見えなくなっています。これを模型展示して、披露するのです。これらの2案も当局に要望したところです。
 そして最大の提案は、今年3月の予算総体質問で私がぶつけた、戦艦大和大型試験機の中庭への設置です。これは長さ28m、高さ5mもあり、さしずめ大和ミュージアムの目玉である戦艦大和1/10模型に匹敵するもので、歴史的にも価値ある財産です。これを平成23年度に広島大学から無償貸与を受けたのですが、展示計画のなきまま、6年間もアレイからす小島駐車場の奥に、シートを被せたまま放置し続けて来たのは、正に行政の無策、宝の持ち腐れと言っても過言ではありません。
 目玉商品がなければ、知名度のない桜松館では、観光客は多く来ないでしょう。呉市の4案は、全て桜松館がメインの観光施設となっており、これでは魅力が不足致します。ここは発想の転換を行い、「この世界の片隅に」で一躍脚光を浴び、知名度のある青山クラブの外観を残した上で、その中庭に戦艦大和大型試験機を観光の目玉として据えるのです。そして、附属的休憩施設として物販や飲食を伴う桜松館を位置付けるのです。
 実は、この度の第1・2案には、今後第2段階として、大和ミュージアム関連施設の整備を敷地内にて検討するとしています。これには、私が提唱した戦艦大和大型試験機展示が選択肢として入ることになるでしょう。またそういう意図が込められているとも言えます。
 では何故二段階整備なのかと、当局を質したところ、大和ミュージアム関連資料20万点の中から選択しつつ、第2大和ミュージアムとしての展示計画を立案するのに、設計と合わせ時間がかかるということでした。
 とんでもありません。第2大和ミュージアムなど必要ありません。大和ミュージアムとてつのくじら館がオープンして以降、入船山記念館の来場者数が激減した過去の苦い体験があるのです。即ち二兎を追っては駄目なのです。建設費や維持管理費でまた大きな税金を投入することにもなるでしょう。おまけに、駐車場を整備するのに2億円近くかかりますから、整備費そのものが投資損となる理屈です。
 しかも、桜松館オープン時には、そのような目玉がないので、スタートラッシュも到底見込めません。新しい観光施設は、かつての大和ミュージアムがそうだったように、スタートが肝心なのです。
 よって私は、第2大和ミュージアムの整備は不要で、単純に戦艦大和大型試験機を展示するだけのハコ物を整備するべきと主張しました。それに若干の資料を添えればよい訳です。つまり、桜松館の改修と試験機展示館を当時に設計・建設し、平成32年度のオープンに間に合わせるべきです。
 大体、桜松館をメインに、200台もの駐車スペースが必要な訳がありません。大和ミュージアムでも設計段階で、年間40万人の集客を見込み、その受け皿として40台分の駐車場しか当初整備しなかったのですから・・・。果たしてどれだけの集客を見込んでいるのか、これから当局を追求していこうと思っています。

 では、青山クラブの現在の中庭に大型試験機展示館を建設するとなると、来場者用駐車場はどこに整備すればよいのかという疑問が生じましょう。
 それは、予算総体質問で既に提案したように、道路を隔てた反対側にある入船山西駐車場を充てればよい訳です。ここは現在、大和ミュージアムに来場した観光客を降ろした観光バスが一時的に待機する場所となっています。従って、大型試験機展示館ができた後は、大型バス用スペースは必要数のみ確保しつつ、残りの部分を自家用車用駐車スペースとして確保するのです。それで不足する分は、隣接する26台分のスペースがある市有地を、普通財産から行政財産に目的替えした上で活用すればよいとの案も最近提示致しました。
 そして、大和ミュージアムを訪れた観光バスの待機場は、アレイからすこじま駐車場を利用すればよいことも、予算総体質問で既に提案したところです。
 この様な計画になるよう、私は今後も訴えて参る所存です。呉市の命運がかかっていることは疑う余地がありません。今回の成功が、新市長が掲げる「いきいき、わくわくするまちづくり」、即ち「くれワンダーランド構想」に繋がるものと確信する次第です。

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