街頭演説集

第133回 農薬空中散布

柑橘の害虫駆除、農薬空中散布は健康被害をもたらす!

Facebook 2018.4.2

 去る4月2日は、133回目の街頭演説。テーマは農薬空中散布についてです。
 呉市は新市長体制になり、特色ある新規予算を組みましたが、その一つが農業振興に資するための柑橘防除実証実験事業140万円です。これは、だんだん畑の柑橘類に付く害虫を駆除するため、ホースを使い人力での殺虫剤散布を、ドローンによる空中散布実験をモデル的に実施するものです。これにより労働力の節減になり、コスト減等の効果を見極めた上で、柑橘栽培農家に拡げようとするものです。
 ここで、何故樹木に害虫が付くかという根本的問題があります。これは柑橘に限らず、無機物で命のない化学肥料を、これも労働力を軽減するために導入したことで、土中の微生物が死滅し、十分な栄養補給が樹木に行き渡らず弱体化したため、害虫にやられることを知らねばなりません。その害虫を防除するために、更に有毒物質を含む農薬を撒いて来た経緯があります。
 化学肥料は土中に必要な成分を含んでいるため、経済面から得策と考えた政府の愚策が、このような悪循環を生み、却って農家を苦しめている訳です。その安価な残留農薬作物を摂取しているのが我々消費者であり、これが病気の要因にもなり、医療漬けとなって薬剤を体内に投入して自己治癒力を減じ、医療費が増大しているのが現実の社会です。
 農水省は減農薬を推奨してはいますが、その人体に悪影響を及ぼすしきい値は、科学的に実証されておらず、放射能と同様「ただちに人体に影響を及ぼすものではない」として、農薬を黙認して来ました。
 但し近年は、有機JAS制度を構築して、これに認証を与え、市場に出回る有機作物にお墨付きを与えるようになりました。因みにこれは、最低2年間に亘って化学肥料を使用しなかった土壌において、遺伝子組み換えの種子は使わない、農薬は一切撒かないことが条件となっています。しかしながら、認証農家は全国の僅か0.2%に止まっており、価格が高いため、消費者も手が出し難く、需要が伸びないので価格も下がらないという悪循環に陥っているのです。
 
 その人体に有害な農薬を更に空中散布することは、問題をもっと大きくするものです。何故なら大気中に農薬が拡散されますと、風に乗って近隣住民にまで直接悪影響をもたらすからです。
 実は林業振興施策の一つに、松枯れ対策に係る松食い虫防除として、以前小型ヘリコプターによる農薬の空中散布事業がありました。これは各県が助成制度を構築し、その財源を原資として各市町が実施していたのです。広島県においては、平成15年度から18年度まで4年間予算化しました。この間呉市も予算を組み、実施していたのです。ところが、これが人体に悪影響を及ぼすことで、一部地域では住民の反対運動により、空中散布できませんでした。
 世論の高まりに押され、広島県は助成制度を廃止し、これに併せて呉市も18年度末をもってこの事業を廃止したのです。19年度からは、伐倒駆除や樹木への農薬直接注入に切り替え現在に至っています。
 長野県では現在もこの助成制度が存続しており、上田市では住民による反対運動が高まり、ネオニコチノイド系農薬の人体中毒を訴え県の助成制度から脱却し、平成22年度末を以て同市における農薬空中散布を廃止に追い込みました。
 この様に、この度の柑橘への農薬空中散布は、過去の教訓が全く活かされておりません。空中散布は山林の土壌の微生物や昆虫を死滅させ、植物の実に悪影響を及ぼし、その結果、餌がなくなったイノシシが人里に出現するようになったのです。自然を破壊した人間の自業自得であることを悟らねばなりません。
 自然共生と無縁な施策を公金を使って支援することなど、到底許されるはずがありません。加えて健康被害をもたらし、医療費増に繋がるのです。高齢化のみならず、健康を害することで、農業人口減にも却って拍車をかけるものです。新市長にとって、末代にまで禍根を残すであろう愚策となるのは明白です。
 しかも農業者の立場で言えば、モデル事業の時のドローンに係る経費は呉市が負担するも、独自で実践しようとすれば、複数の農家が連携してドローン散布の委託契約を業者と結ぶ必要があります。そのことで、本当にコストを軽減できるか甚だ疑問だということです。
 農業の機械化、AI化が叫ばれてはいますが、それが自然破壊をもたらすようなことは決してあってはならないのです。
 呉市は郷原に農業振興センターを有しており、有機栽培実験もある程度行っています。この際、無化学肥料無農薬実験を更に進め、害虫の付かない作物や果樹栽培の成功例を確立し、農家を支援する施策に方向転換すべきでしょう。私は以前から一般質問でも、このことを提唱して参りましたが、前市長は見向きもいしなかった経緯があります。新市長に期待すべく、今後も自然農法の推進を促して参る覚悟です。
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