川尻町の河川氾濫対策は、抜本的な改修が必要!
Facebook 2018.10.19
川尻町の中心を流れる光明寺川は、この度の豪雨災害により氾濫しました。付近一帯が床上、床下浸水の被害に遭ったのです。これは安浦町の中畑川の決壊と違って、護岸が破堤したのではなく、雨水がオーバーフローしたことによるもので、要因が根本的に異なっています。
この川はすぐ上流で2本が合流したもので、昭和に鉄道が開通した際にも、掘削した線路の両端を通って、雨水が集まる構図となっています。つまり、川の終着点であり、「川尻」の語源たる所以です。この度は、並行して走る国道31号線、広島呉道路、JR呉線が大きく寸断された地区は、「水尻」でした。つまり、ここは山から流れ出た水が集まる地区というのが語源のようです。
さて、川というのは、長い時間をかけて雨水の通り道として山を削り、海へ通ずることで自然に形成されたものです。過去の洪水も受け皿として形づけられた自然の雨水道と言えましょう。ということは、余程のことがない限り、頻繁に氾濫することは考え難いのです。ところが、光明寺川は8年前にも氾濫しており、100年に一度というペースでは到底ありません。何らかの要因で流域容量が狭まったのではないかと推察されます。
そこで、先般現地を視察して、やはりと頷かされました。睨んだ通り、人工的に流域容量が狭められていたのです。それは、全て呉市へ編入合併する前の川尻町時代のことで、3つの要因があります。
第一は、河川表面が半分ほど狭められており、その部分が隣接道路の拡幅として活用されていました。川尻町の中心部であるにも関わらず、幅員が狭いため、救急車等が侵入し辛く、それを解消するため、当時の地元要望もあって、道路の拡幅を実施したのです。その結果、川の表面に支柱を横向きに差し込み、その上に路盤を構築していました。これは流量面積がかなり狭まります。この様な箇所は、川尻町に限ったことではなく、旧呉市内にも多々見受けられます。
昭和39年に施行された河川法では、河川の表面は原則開渠になっており、それを閉鎖して暗渠にするには、河川管理者の許可を必要とします。よく呉市中心部の堺川の表面に蓋をして、その上に駐車場を整備すればよいとの声を市民から聞きますが、2級河川管理者である広島県が許可をしません。そうすれば、河川を流れる雨水が逃げ場を失い、構造物にあつれきを加え、却って被害が大きくなることを恐れてのことです。
ところが、光明寺川は普通河川であって、当時は町が管理者だったため、河川表面を一部塞ぐことの許可をしたものと推察されます。或いは法が施行される以前に道路を拡幅した可能性もあります。
第二は、河川の底張りをコンクリートにしていましたが、地元の高齢者によると、昔は70cmほど川底が低かったというのです。つまり、自然にできた川底を舗装する際、溜まっていた砂利を浚渫して、更に深堀りをしてコンクリートを流し込むべきを、土砂が堆積した状況で、その上にコンクリートを流し込んだ形跡が伺えます。これは工費を安価にするためにしたとしか思えません。どの様な設計図になっていたのか、今となっては知るよしもありません。つまり手抜き工事だったのか、設計図がそのようになっていたのか、完了監査が甘かったのか、定かではないのです。いずれにしても、このことで、かなり河川断面が狭まったのは間違いないでしょう。
第三は、過去の水害によって石垣護岸が崩落したため、それを防ぐために、石垣のコンクリート化では予算が嵩むため、石垣法面の下の部分にコンクリート支え施設を連続設置してありました。これが、河川断面を狭める結果となっています。
ところが呉市は、災害復旧事業として、河床の一部分のみの掘り下げと、護岸のガードレールに合わせた防水壁を設置する簡易な措置で、切り抜けようとしていました。これでは、氾濫を防げないと、地元住民も納得がいっておられない状況です。
私は、小手先の対症療法ではなく、原因を明確化した上で、抜本的な対策を講じる必要性を呉市に対し、訴えました。
例えば、浸水対策で言えば、現在広地区の免田(めんでん)川改修を複数年次で施工しています。ここは地域の雨水排水を内水対策として免田川そのものを雨水幹線と都市計画で位置付けることにより、国土交通省都市局から交付される補助金を活用しています。しかも河口には雨水を海に強制排出するポンプ場が溜め池にあり、その機械の排水能力も高めるため新たに製造しているのです。
そこで光明寺川においても、川底を全体的に掘り下げ、護岸断面の障害物を取り除き、護岸を強固にする抜本対策、即ち河川改修が必要だと痛切に感じました。ただし、これには相当の財源が必要で、国や県からの公的補助がないと、かなり困難です。
ところが光明寺川の場合は、山から直接流れて来る雨水ですので、外水となり、雨水幹線と位置付けることができません。しかもこの度の豪雨で、河川施設そのものが破壊された訳ではないため、国の災害復旧事業にも当てはまらないということです。加えて市管理の普通河川のため、河川改修に対し、国や県の補助メニューがないことが判りました。ということは、現段階では全額市費で改修を行わざるをえないということです。
但し、普通河川から準用河川に指定変更すれば、国庫補助メニューがあるということです。そうなれば、二級河川と同様の扱いを受けることができます。私は、これが先ず可能かどうか、呉市として国と調整するよう促したところです。
尚防水壁設置は、河川改修とは直接施工形態が重複しないため、こちらのみは予定通り施工することとなりました。