街頭演説集

第168回 障害者優先調達の拡大策

障害者優先調達における官民格差是正で工賃向上を!

Facebook 2018.12.8

 去る12月5日は168回目の街頭演説。テーマは障害者優先調達への取り組みについてです。

 平成25年度から施行された障害者優先調達推進法では、国や地方公共団体等に対して、障害者就労施設等に物品を発注したり役務の提供を受けたり、優先調達の努力義務を課しています。
 法第9条による方針策定や調達目標に関し、我が呉市では各部署からの積み上げ方式となっている感が否めません。例えば本年度の目標額が1,700万円に止まっていて、法施行年次から大きく実績は変わっておりません。因みに人口16万人の宇部市では5,700万円となっています
 洗い出せば、まだまだ障害者就労施設等への調達分野が開発できると思います。年度毎の目標値設定ではなく、中長期の目標値を掲げ、その達成に向けて努力するべく、担当部署が先頭を切って、他部署や企業会計に対しても要請するべきと訴えて参ります。

 ところで、優先発注には受注共同窓口の役割が大変重要になって参ります。幸いにも呉市では、知的障害福祉のNPOを窓口に設定して、各部署からそこに発注しています。
 ただ、法第2条に規定する障害者就労施設全てに対し発注情報が流されているかと申しますと、必ずしもそうではありません。そこで、受注機会を公平に与える観点から、全施設を対象登録してもらって、登録団体に公平情報を提供するシステムを呉市が支援して確立するべきと考えます。
 次に呉市では、共同窓口たるNPOに発注した際、受注に意欲を示した施設から、過去の実績等を踏まえ調整した上でNPOが受注者を決めています。その際の価格は、あくまでも市の担当部署が設計した予定価格から手数料が控除されたものです。
 ところが宇部市では、共同窓口を通じて各施設から見積もり書を提出させ、最低価格提示施設が受注できるシステムを採用しています。これなら公平性が担保できるという訳です。そこで、同方式を検討する価値は大いにあると考えます。

 一方同法は、民間企業に対しては優先調達の対象外としています。しかしながら実際は、部品の組み立てや分解等、製造業関係の民間受注があるのも事実です。
 ところが発注者の言い値になっており、例えば一部品を組み立てたら1円未満の何銭という様に、時間給換算すると200円程度になるのはざらです。ということは大中企業の下請け会社が、孫請けに障害者就労継続支援B型事業所に使うことで、中間マージンをかなり搾取している構図が見えて参りました。
 呉市発注の場合は、最低賃金で設計単価を割り出していますが、民間企業は最低賃金法とは無縁のB型事業所を狙って発注しており、受注額の官民格差が著しいのです。しかも余りに低い単価のため、受注を断りますと、他の事業所へ仕事を取られてしまうため、相手の言い値になっており、公正な取引関係とは到底言えません。
 そこで、この格差を是正するためには、個々の施設が民間受注するのではなく、NPOに共同窓口を一本化することで、官発注と同等の設計価格に誘導すべきです。
 さて、官民格差が是正されますと、企業にとってはうまみがなくなり、却って障害者就労施設に受注機会が減る可能性は十分に予想されます。
 そこで呉市として、商工会議所や商工会と十分な意思疎通を図り、優先調達に関して協力頂いたり、宇部市のように、啓発セミナーを企業に対して行うなど、行政としての役割を果たすべきでしょう。
 就労移行支援や就労継続支援B型とA型を同じ土俵の上で見積もりを出させるとなりますと、A型事業所は最低賃金を確保する必要性から、最低賃金で設計した予定単価では手数料が控除されますので、実質的に受注機会を失うことになり兼ねません。
 そこで、受注共同窓口の手数料を最低賃金に上乗せした形で設計単価を出す必要があります。それは民間企業発注も同様です。
 こうすることで、B型もA型も自由競争ができますし、結果的にB型の受注機会が増えれば、それだけ平均工賃の向上が見込める訳です。
 B型事業所における全国平均工賃は月額1万6千円程度ですが、呉市は1万円そこそこで、かなり低いレベルです。官民からの受注機会を最低賃金設計単価で増やすことで、かなりの工賃向上に繋がると考えるものです。

 実は呉市においても、国の基準変更に伴って元々少なかったA型が5事業所に減りました。近隣市町のA型へ通所していた市内障害者も失業し、その後市内のB型への移行を余儀なくされています。
 優先調達推進法の目的は、第1条で、障害者の自立を促進することにあると明記されているのですから、行政がリーダーシップを発揮して就労施設の受注機会を適正価格で増やすことで、工賃向上に繋がる訳です。そのような意味から、目標値設定において、単に発注額に止まらず、平均工賃向上をも指標に掲げ、呉市が一層責務を果たすことを期待するものです。

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