街頭演説集

第169回 水道事業の県内広域化

呉市水道事業における県内広域化は慎重に!

Facebook 2018.12.14

 去る12月10日は、169回目の街頭演説。テーマは水道事業の県内広域化についてです。

 呉市の水道事業は、配管施設が耐用年数を超え、更新時期を迎えているものが多々あります。それに合わせて耐震化も行うことにしております。現段階では黒字決算を維持しておりますが、平成32年度から赤字に転落し、35年度までには4億7千万円の累積赤字になると予想されています。
 その要因は老朽化施設の更新に加え、何と言っても少子高齢化で水需要の減退が上げられます。水道事業は地方公営企業法により、独立採算が原則ですから、可能な限り税金で穴埋めをせず、料金収入で賄うことになっているからに他なりません。
 これは全国どの自治体もほぼ同様の悩みを抱えていて、国も事業の広域化を推奨しているのです。そのような中、今年度から香川県が水道事業の県内広域化を初めてスタートさせました。これは県事業と県内8市8町の水道事業を統合し、一部事務組合である広域水道企業団を設立し、経営を一本化したのです。
 我が広島県もそれに倣い、今年度から非公式の協議会を起ち上げ、それに呉市を含めた県内全市町が加盟を致しました。つまり県内広域化に向けて議論が始まった訳です。
 広域化推進の目的は、水道法による水道事業は市町村毎に行うことを原則としているため、人口減にさいなまされる市町村においては、経営が立ちゆかなくなっていることです。ですから、統合する本部機能の事務経費を、そのスケールメリットにおいて人件費等の重複を避けることで、効率的な財政運営を行うことにあります。そうすることで、安定した経営基盤を確立し、水道料金の値上げを可能な限り抑制しようとしようということです。
 但し、各市町村で経営手法の差異があり、水道料金格差やインフラ更新の進捗率に差があるのを、予め埋めていく作業が大変な訳です。
 例えば香川県では、平成20年度に非公式の協議会を起ち上げて議論をスタートしたものの、法定協議会設立までに7年、それから企業団設立までに3年を要しています。更に最終目標である水道料金の県内統一は、これから更に10年をかけて、順次格差を埋めて実現しようとしているのです。
 それまでに、管路の更新に係る経年化率や耐震化率等の足並みを揃えるために、各市町毎の会計を分離した上で、一般会計繰入を活用するとしています。それを経て10年後には水道料金を統一化するため、料金が値上げされたり、逆に下がったりする市町が出て来ることになります。
 現在黒字会計の市があったとしても、10年後には赤字経営に陥っているため、事業統合に合意したということでした。

 一方、この度の広域化はあくまで水道事業だけで、下水道事業は入っていません。
 ところが呉市の場合は、平成25年度に水道局と下水道部を経営統合した経緯があります。即ち、似たような事業を統合することで、スケールメリットを活かし、経営効率を上げた訳です。これが県内の水道事業が統合されますと、再分離されるのではないかと危惧される訳です。
 香川県の例をみますと、上下水道を先立って統合していたのは高松市だけでした。同市も今後を見据えると水道経営が厳しさを増すので、泣く泣く下水道部門を元の形に戻し再分離を認められたといいます。市内の上下水道統合によるスケールメリットよりも、中長期的には県内水道統合の方が効果が大きいと効果を算出した結果です。
 但し呉市の場合は、これに工業用水道会計が加わります。つまり、呉市においては上水道、工業用水道で人役を兼務して、決算時には各々独立会計のため人件費を案分しているのです。
 香川県では工業用水道事業を行っているのは県だけでした。従ってこの問題は余り表に出なかったようです。
 また、香川県の場合は降水量が少なく、水源も高知県にある吉野川の 早明浦(さめうら)ダムから取水した県営用水道事業が県全体水源の48%を占めていたことから、広域化を推進し易い環境にあったと言えましょう。このため浄水場も71施設から38施設に削減する計画です。
 これに対し広島県では、西部には太田川、東部に芦田川と両一級河川があり主水源が異なるので、香川県とは事情が異なると思います。更には、呉市以外にも福山市も上水道と下水道を統合していますので、これも県内広域化において足枷になって来る可能性を否定できません。

 結局、広島県が主導する水道事業の県内広域化は、まだ議論が始まったばかりで、呉市としては協議には参加しつつもも、県の意向に対しては慎重に検討を重ねる必要があると考えています。

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