街頭演説集

第269回 新広駅周辺整備ストップは温水プール移転が背景に!

Facebook 2020.12.29

 昨日12月28日は仕事納めの日。今年最後の街頭演説は269回目を数えました。テーマは、新広駅周辺整備についてです。

 前呉市長は、市内のJR駅を順に整備する方針の下、広駅、吉浦駅、阿賀駅の次に新広駅前を再整備することにし、平成26年度に新広駅周辺整備を目的とした500万円の調査費を計上しました。
 この背景には、新広駅はJRが建設を拒否したため、「請願駅」という珍しい手法で呉市が税金で整備し、平成14年3月に供用開始となったことがあります。その後平成19年には隣接の広市民センターの建て替えに伴って、路線バスや生活バスの駅前広場への乗り入れがあり、20年度には事実上広古新開区画整理事業が終了したことによる地区人口増、同地区内にある広島国際大学や線路の反対側にある国立労災病院があることから、JR利用客が増加したことで、駅前広場が手狭で安全性を担保し難い状況になったことが挙げられます。
 実際新広駅開業当時に比べ、平成26年度当初にはJR利用客が5割増となっていたのです。
 実はこの駅舎はJR西日本の所有ではなく、呉市所有なのです。当時は福祉保健部所管の社会福祉建物という普通財産でした。呉市が丸ごと税金で建設した駅舎には呉ポートピア駅がありますが、その時と違い、JRが駅舎建設後の寄附を受けなかったからです。受ければその維持管理費がかかるためJRが拒否したのです。
 従いまして、開業当初から無人駅となっており、切符販売業務を精神障害者通所施設にJRが委託し、駅舎の2階をその活動拠点として呉市が同団体に無償貸ししていました。そして1階は、別の知的障害者通所施設の工房で調理したクッキー等の販売店舗にしたことで、社会福祉建物と位置付けたのです。
 つまりJR西日本は、自らの財布を使わず、建設から維持管理を全て呉市任せにしていたのです。しかも、切符販売ではその委託費を控除した残りがJRの収益になるという、いいとこ取りでした。
 但し、無人駅にしたことにより、無銭乗車、いわゆるキセル行為が横行していました。これを防ぐためには駅員配置が必要ですが、それに係る人件費よりも、キセル行為による損失の方が少ないことにより、駅員配置を見送ったのです。
 ところが、利用客の5割増をみてJR側は、ようやく有人駅への転換を呑みました。それに併せて新広駅周辺整備を前市長が推し進め、これは選挙公約でもあったのです。

 これらを経て当時の呉市長は呉市議会に対し、平成26年11月にコンサルによる調査結果を踏まえた方針を発表しようとしました。その際一部会派に事前説明した資料には、広場内にある東消防署は昭和60年建設なので、新耐震基準を満たしているも、市営温水プールは昭和55年建設で新耐震を満たしていないため、新広駅周辺整備において、移転が望ましいが、「広地区管内には適地はない」としていました。これは暗に市内中央地域にある市営プール(二河プール)を温水プールに建て替えることに繋げようとしていたのです。即ち、広温水プールと二河プールの統合です。
 ところがこれが議会の反発を受けたため、その後の委員会配布資料には、温水プール移転部分を削除し、委員の質問にも正面から答えず曖昧にしたのです。その後地元広地区住民から温水プールを建て替えるのであれば、「広地区管内にすべし」との一大署名運動が巻き起こったのでした。当時の市長は広高校出身者であったこともあって、地元が反対すれば、3年後の選挙で戦えないと踏み、急遽市営温水プールの移転先は決まっていないとの答弁に終始しするよう官僚に指示したのです。
 このため、新広駅周辺整備の実施設計費を翌平成27年度に計上してはましたが、それを執行することは温水プールを解体することが明白になるため、同年度末の3月定例会おいて、全額減額補正を行い、整備事業は頓挫しました。
 私がこのことを、平成30年12月定例会での一般質問で質した際、平成31年度4月末から温水化により二河地区で再開した新市営プールがあるにも関わらず、広の温水プールは、「今後の利用状況を見ながら、その在り方を検討する」と、曖昧な答弁をしたのです。
 その際、広温水プールの年間利用者は約5万人、既存の二河プールのそれは約3万5千人、建て替え温水化後の二河プールの利用者は約5万人と推計していると答弁しました。
 これが後の市職員の答弁で、実は9万人に設定していたことを漏らし、私がその後「これは2つのプールの統合を意味している」と追求する材料になるのです。
 結局新広駅周辺整備は、温水プール移転が鍵を握っていることになります。これを移転しなければ、逆に駅周辺整備は進まないこととなります。当局は、一度も議会に方針転換したとは説明しませんでした。

 一方、新広駅前周辺整備が頓挫しても、JR西日本との有人駅化の約束は果たさねばならず、呉市は平成28年度に駅舎のみに限定した改修実施設計・施工に係る予算を1億7,400万円計上しました。
 この内訳は、自動改札機設置に9,100万円かけ、残りは駅舎1階に駅員駐在室を整備するというものです。今度こそ「建物の寄附受領を条件とすべきだった」と私が追求しましたが、当局そこまで話を詰めておらず、JR駅機能に係るイニシャルコストを全て市民の血税で賄うという予算です。
 加えて、当該年度を最後に、JRの退職者を障害者作業所を運営する社会福祉法人に雇用してもらっての、長距離区間の切符販売業務委託における赤字分95万円を呉市が補填するというものでした。ICOCAの普及により、業務収入が減じていることがその理由です。正にJRの言いなりです。勿論本予算案に私は反対理由を述べて討論しました。
 逆にJR側の負担は、プラットホームの一部拡幅とホーム屋根の延長設置ということになります。拡幅用地は隣接する呉市有地を提供し、JR所有地と等価交換を検討しているとの説明がありましたが、翌29年度の決算委員会での私の質問に対し、未確定との答弁がありました。
 結局温水プールをそのまま残し、新広駅周辺整備はJRの意向を酌み、駅舎再整備に留まったことになります。

 この様な中、本年令和2年6月に呉市公共施設等総合管理計画に基づく個別施設計画素案が提示されました。
 それによると、新広駅前の市営温水プールは築後50年を経過した翌年の令和13年度に廃止するとしているではありませんか!結局、二河プールを温水化し建て替えた32億円の投資意義が薄れ、議会を騙した結果になったのです。
 但し、これとて広地区住民の同意は、地元説明会で全く得られなかったということです。私は去る令和2年9月定例会で、新広駅周辺整備との関係を質しました。今度は、「建物の安全性を見ながら、市営温水プールの在り方を検討する」とのごまかし答弁に終始したのです。
 新耐震基準に適合していないから安全ではないとして、当初移転の方向性を示し、二河プールの温水化と建て替えに向け合意を得ようとしていたはずが、それとの矛盾を露呈したことになりました。つまり、安全な建物ではないのです。
 裏を返せば令和13年度廃止を計画に盛り込んだことで、それまで耐震改修はしないと同義です。これではもし巨大地震で被害者が出た場合の責任は誰が取るのでしょうか?
 実は、個別施設計画素案はこの12月から来年1月にかけてパブリックコメントを公募する予定でした。特に温水プール廃止案に対し、地元の強固な反発があったことで、この時期を大幅に遅らせる可能性があると、私は見ています。本来ならこの計画は令和3年度から22年度までのものですので、今年度末に策定する必要がありますが、暗雲が立ち込めて来ました。私がそのように見る理由は、翌令和3年11月に市長選挙があるからです。
 前市長も4年前の選挙への悪影響を防ぐために、温水プール問題をごまかしましたが、現市長も、想定外の地元住民の反発に遭遇し、選挙の悪影響を一番に気にし、対応に苦慮していると推察しています。
 私は、市政とは常に情報を公開し、市民にその全体像を真摯に説明するべきと考えています。

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