街頭演説集

第312回 広島県ジーンバンク廃止後も農業者への種子無償提供を!

2023.2.2

 去る1月30日は312回目の街頭演説。テーマは広島県農業ジーンバンクの廃止についてです。

20230202広島県農業ジーンバンクの廃止について

 広島県は昨年12月6日の農林水産委員会に対し、令和5年3月31日を以て、県ジーンバンクを廃止する旨を発表しました。合わせて約1万8千ある特定品種を整理するとしています。

 ジーンバンクとは、主要農作物種子法(種子法)により、優良な種子の生産・普及を目的に、各都道府県にその責務を課したことの一環で、複数の都道府県が独自に奨励品種等を冷凍保存する所です。その中でも特に規模が大きいのが北海道と広島県です。
 種子法における特定品種とは、稲、麦類、大豆の主要作物を保護、維持するとしており、各都道府県は農業試験場を整備して、原々種を保護し、原種を育成してそれに当たって来ました。
 ところが、同法が平成30年3月31日を以て廃止されたことに伴い、広島県はそれに変わる種子要綱を翌4月1日付けでいち早く制定し、これまで通り農業試験場たる農業技術センターは継続し、奨励品種を普及し、安定した供給体制を維持するとしていました。
 但し要綱では、行政がいつでも改廃ができるため、それを担保するべく、令和2年7月に広島県主要農作物等種子条例制定が実現したのです。これには、私が知人の県議会議員を通じて議員提案に漕ぎ着け、加えて呉市議会でも、県への意見書を全会一致で採択させた経緯があります。
 因みにこの種子(しゅし)条例の趣旨(しゅし)は、主要農作物に限らず、広島県の特産になり得る野菜等の種子も保護し、普及するというものでした。

20230202広島県農業ジーンバンクの廃止について

 先ず抑えておかねばならないことは、この度のジーンバンク廃止により、種子条例との整合性は取れているということです。
 具体的には、これまで通り生産と普及が必要な奨励22品種は、県農業技術センターで保存します。この内17品種が水稲であって、「あきたこまち」「ひとめぼれ」「コシヒカリ」「あきたろまん」等があります。
 また、維持を必要とする品種の内、県が開発・育成し且つ生産振興に有用な135品種系統はジーンバンクから県農業技術センターに移管するため、影響は全くありません。「ひろひかり」「ひろほなみ」「めぐりあい」等134品種系統が水稲です。それ以外の県在来の646品種系統、合計6千品種のみを茨城県つくば市にある国立研究開発法人/農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)に移管するのです。
 因みに、その品種を希望する農家には無償提供していましたが、その数は僅か20戸にしか過ぎません。それも今後希望すれば、向こう5年間は農研機構から無償で提供を受けることができます。

20230202広島県農業ジーンバンクの廃止について

 一方、ジーンバンクは県農業技術センターの一室を無償で借りており、運営母体は、県が全額出捐した一般財団法人/広島県森林整備・農業振興財団です。これの運営には、県の一般財源は注ぎ込んで来なかったため、ジーンバンクを存続させれば累積赤字に歯止めがかからなくなります。
 しかも、種子を冷凍保存するための冷凍庫も老朽化し、買い換えますと多大な費用がかかります。県農業技術者OBの育成も進んでいません。このような事情から、効率性を求めて特定品種を整理統合し、農研機構との重複した種子は廃棄することになりました。

20230202広島県農業ジーンバンクの廃止について
20230202広島県農業ジーンバンクの廃止について
20230202広島県農業ジーンバンクの廃止について

 よって今後は、

  1. 農研機構が国の基礎的食糧を守るための存在意義を担保するため、新種子法の立法化を目指す
  2. 特定の種子を希望する農家には、農研機構から無償提供を継続させる

が重要な課題となって参ります。運動をこちらの方向に転換を図るべきだと考えています。
 改正種苗法により開発種子の登録制に変わり、高額な登録料と引き替えに種を買い続けると農家が潰れ、食糧難や食糧危機が訪れます。外資から、国づくりの基本である農業や種子を守ることこそ、国家安全保障に繋がるのです。

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