街頭演説集

第62回 監査制度の在り方

消えた交通局乗車券は監査の甘さも一つの要因だった!

Facebook 2016.10.18

 昨日は62回目の街頭演説。テーマは監査制度の在り方についてです。
 私は、平成22年度に呉市監査委員を体験したことから、外部監査導入を訴えて参りました。
 と申しますのも、呉市の監査委員は現在3名おり、その代表は歴代の呉市部長級OBが就任し、天下りの一ポストになっています。後の2名は、民間公認会計士等と議会からの推薦です。更に、具体的に現場に赴いて帳簿類を調査する補佐人は、現役の呉市職員が人事されます。これらの体制を一般的に内部監査と呼び、いわゆる身内の監査ですから、第三者の視点と言い難い部分があり、どうしても甘くなりがちです。
 そこで私は丁度4年前に、当時呉市と同じ特例市だった大阪府八尾市を視察し、外部監査を導入している先進事例を勉強致しました。同市は国の補助金の枠内で監査業務を民間に委託しておりました。つまり、内部監査と外部監査の併用策です。
 内部監査故に、野放し状態になっていた実例が、旧交通局の消えた乗車券問題です。これは、平成24年度末を以て呉市交通局が民間移譲に伴い廃止されることになったため、23年度に交通局に力点をおいて監査を実施した際、発覚したものです。即ち平成24年3月末現在、回数券やバスカードにおける帳簿記載が22万6千枚となっているにも関わらず、金庫に保管されていたそれは15万6千枚しかなく、その差約7万枚、金額にして1億8,200万円にも上ったのです。
 過去に何度も交通局に対し監査を実施して来たはずなのに、何故このような大きな差になったのか?それは金庫管理職員が上司に年2度報告するというマニュアルを無視して、していなかったのです。監査補佐人も、過去金庫の中まで確認して来なかったのでした。それは補佐人と呉市交通局トップの人事格差が無言の壁になっていたのではないでしょうか?
 しかも、交通局は乗車券を棚卸し資産として、貸借対照表に計上して来なかったのです。乗車券は売れれば収入になりますので、いわば金券です。民間会社なら当然資産計上するでしょう。もししていれば、もっと早く誤差に気付いたはずです。監査補佐人も見破ることができたに違いありません。
 このことは私が当時の産業建設委員会で初めて指摘し、当局が認めたのでした。つまり議会から質問が出なければ、不利な情報を当局は説明せずに済んだことになります。この様な曖昧不明瞭な体質こそが問題で、根っこの部分と言えましょう。
 結局、交通局当局は警察にも相談し、近隣の金券ショップを当たってもらいました。その結果、犯罪性は認知できなかったということです。では乗車券は一体どこに消えたのか?そこで当時交通局が帳簿類等を徹底的に精査した結果、誤記載が積み重なったものであることが分かって来ました。その誤記載分を差し引いた結果、元帳の在庫枚数は15万5千枚にまで縮小し、実際の保管枚数との乖離が1万9千枚、金額にして4,200万円にまで縮小したのでした。
 ではこの4,200万円はどこに消えたのか?帳簿類の保管年数が5年しかなかったため、それ以前の誤記載を確認できなかった、その部分ではないかと推察されます。ということは、お金が消えたのではなく、人為的な記載ミスが継続したのであって、交通局に損害が発生したことにはなりません。市民はこの辺り、大金が消滅イコール盗まれたのではないか?と疑念を持たれたようですが、それには当たらないというのが真相のようです。
 いずれにしても、このようなずさんな経理の責任は、当時の交通局管理者にありましたし、同時に、それを見抜けなかったのは身内である内部監査故であるというのが、私の個人的見解です。

 一方呉市は、本年度から中核市に昇格致しました。これは内部監査のほかに、包括外部監査を実施することが法律で義務付けられています。従ってそれに必要な予算は今年度1,200万円を組み、既に公認会計士と年度契約を締結しています。因みにその財源は、年度末に国から交付される特別交付税で充当されます。
 実は外部監査と言っても、行政経理の全てを監査するのではなく、毎年度特定のテーマを設定し、それに沿う形で、内部監査を補うために実施されます。因みに今年度のテーマは、補助金・交付金です。議会費では交付金として、現在注目を集めている政務活動費が該当致します。
 そう言えば、過去広島市を含む他の自治体で、政務活動費の不正請求が発覚し、監査人が還付を意見したところがありました。これら不適切な支出と指摘を受けた議会は、全て包括外部監査を実施していた中核市以上の都市でした。
 呉市も今年度から中核市の仲間入りを果たした訳ですから、時宜を適した政務活動費の監査を是非とも行って頂きたいものです。その上で問題なしと、判定されるのを切に願っています。

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