街頭演説集

第45回 JR呉線複線化の幻想

夢を追う「JR呉線複線化」の幻想から目を覚ませ!

Facebook 2016.6.7

 昨日は、45回目の街頭演説。テーマは、今年度中に策定予定の呉市都市計画マスタープランについてです。
 同プランは、20年後を見据えた都市機能の形成について計画を立てるものです。呉市の行政計画では最も長期的なものではありますが、平成22年度策定した10年スパンの第4次呉市長期総合計画基本構想に基づく基本計画の下位計画との位置付けです。
 ところが、策定中の都市計画マスタープラン全体構想案には、「JR呉駅周辺連続立体交差事業」と「JR呉線複線化」が記述されました。前者は長期総合計画には「検討」という表現ながらも記述されていますが、後者は全く記述がありません。つまり、上位計画との整合性がない訳です。しかもJR複線化は、来年度予算要望のための広島県への呉市提案書にも記述されました。逆に連続立体交差事業は、県提案では落とされています。この様に同じ呉市でありながら、支離滅裂状態となっているのです。
 先ず連続立体交差事業は、県と呉市、JRの協力なくして実現は不可能ですが、頼みの広島県は海田駅を中心とした東部連続立体交差事業においても、財源確保が難しいため、事業規模を縮小することに変更しました。こちらの事業完了の目処が立っていない段階で、呉市が県に提案するのは笑われてしまいます。ましてや、例え県が重い腰を上げたとしても、肝心のJRが負担を渋るのは、過去のJR駅周辺整備事業を見ましても明らかです。 従いまして呉市としては、夢を捨てず、あくまでも遠い将来を見据えた上での、マスタープランへの記述ということになりましょう。長期総合計画においても、連続立体交差事業の推進ではなく、あくまで「検討」と、かなり遠慮した表現となっているからです。
 そこで問題は、長期総合計画にも位置付けられてもいないJR複線化をマスタープランや県提案に記述したことです。特にマスタープランでは、議会の産業建設委員会においても、「絵に描いた餅にならないように」と釘を刺されているからです。
 実はJR複線化は、前市長時代に検討を行った結果、全体予算が260億円もかかり、現実的でないとして、3箇所の行き違い新駅を設置するという部分複線化事業を平成9~10年に実施することで、一件落着した経緯があります。それに基づき平成11年2月には、水尻駅、かるが浜駅、移転後の川原石駅の3駅において、ホームを跨ぐ形で、新設の行き違い線路を使っての営業開始となりました。
 これにより呉~広島駅間の所要時間が、快速を走らせることにより、最短で29分に短縮されたのです。つまり、3箇所の部分複線化により、完全複線化に近い効果を得ることができ、事業費も僅か22億円に縮小することができたのでした。
 ところが、前市長を破って初当選された現市長が、マニフェストに「JR呉線複線化」を掲げられたことで、状況は一変。具体的には複線化検討調査費を2ヶ年に亘って1千万円ずつ予算化したのです。私はこれに真っ向から反対の意を唱えました。
 当時市長の命を受けた担当部署の職員がこう不満を漏らしています。「僕らも疑問を持ちながら(業務を)やっている。」この言葉が全てを表しています。
 この調査費を活用して新たにコンサルに業務委託し、昭和63年に結成された関係市町で構成する「JR複線化期成同盟会」とは別の検討組織を起ち上げたのです。即ち関係機関の代表を一堂に会し、審議を重ねました。関係市町からは負担金をもらわず、呉市丸抱えの検討組織にほかならず、他の市町はお付き合いでお客さんの立場で参加したようなものです。
 結果は、この2千万円の血税はどぶに捨てたものと同然になりました。最初からこうなること見えていました。しかし市民の付託を受けて当選された市長ですから、公約を果たそうと、無理矢理予算化し、私の予想通り失敗に帰したのです。
 私は、この度の都市計画マスタープラン検討会議を傍聴しました。その席で市民を代表する一人の委員が、「JR複線化は実現性がないので、マスタープランから削除すべきだ」と正論を述べられました。私は心の中で拍手致しました。
 ところが学識者である座長は、他の委員に意見を求めることを全くせず、素案を作成した事務局、即ち呉市担当課に答弁を求めました。これが呉市の審議会の実態です。あくまで市長のイエスマンを委員に任命し、それと異なる意見が出たら、事務局に答弁させ、火消しにやっきになるのです。この様に審議会は、呉市におけるアリバイ作りと化しているのです。今に始まったことではありません。
 そしてこのプランは、パブリックコメント(市民意見)も公募しました。それを経てこの度案ができ上がったのです。
 実のところパブリックコメントは、市民から多数の反対意見が出そうなもの、或いは市民にとって直接痛みを伴うものに対しては行いません。過去の例で申しますと、市営バスの民営化や上下水道料の値上げ、新庁舎建設などです。
 ということで、夢物語を都市計画マスタープランで描いてしまいました。私は、このことで無駄な労力や血税を投入することになりはしないか、と懸念しています。
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