街頭演説集

第70回 青山クラブの再活用策

自衛隊集会所の観光資源化は費用対効果の十分な検証を!

Facebook 2016.12.18

 去る12月12日は、70回目の街頭演説。テーマはこの度呉市が発表した、海上自衛隊集会所「青山クラブ」の活用策についてです。
 この施設は海軍時代の下士官兵集会所、即ち厚生施設として明治に建築され、昭和4年に建て替えられたもので、宿泊機能は既に停止し、現在自衛隊募集事務所と、自衛隊関係団体が入っています。丁度今ヒット中のアニメ映画「この世界の片隅に」において、主要な施設として登場します。これを昨年9月に国が売却方針を表明したことで、呉市が観光施設として活用するため、購入しようとするものです。
 問題は購入しても、耐震性能やコンクリート強度が基準値を大幅に下回り、改修は困難なため、解体して駐車場にするということです。この角が丸くなった建築物こそ、観光に活かせるのであって、私としては、解体をせずに活用できる方策を探って参りたいと考えます。
 そこで呉市は、同一敷地内にある別館「桜松(おうしょう)館」を改築して、ここに土産物販売店や喫茶店を誘致する意向を示しました。この施設も昭和4年に建て替えられたものですが、構造上、改修が可能であるとしました。
 ここは当時舞踏会や交流目的で建築されたらしいですが、現在は、海上自衛隊呉音楽隊の練習会場として使用されています。美術館通りにある玄関は、実は裏口のため閉鎖されていて、表玄関は青山クラブの内庭側にあるため、知らない市民が殆どです。実際「桜松館」でインターネット検索しても、一発では出て来ません。それだけ知名度がないということは、青山クラブを解体して駐車場にした場合、観光資源としての活用にはかなり無理があるのではと思えてなりません。
 同じ美術館通りに入り口がある、国の重要文化財である入船山記念館でさえ、大和ミュージアムと鉄のくじら館がオープンしてから入場者が激減しているからです。
 呉市としては、市外からの観光客が大和ミュージアム、鉄のくじら館を観覧した後、市内に宿泊してもらうため、両館のある宝町から入船山記念館のある幸町まで周遊するルートを開発したいと考えています。即ち昨年度末に「宝町~幸町エリヤ整備構想」策定のためのコンサル委託料500万円を、国の地方創生加速化交付金を活用して予算化したからです。
 それを受け、桜松館や入船山記念館、呉市美術館への周遊コースとして、堺川右岸にある親水遊歩道を活用し、JR線路手前で右折しつつ堺川を鉄橋を架け替えて渡って青山クラブ前に出る新ルートを開設する意向を示しました。
 但し、大和ミュージアムを訪れる観光客は観光バスかマイカーが殆どで、JR呉駅で下車、或いは四国からフェリーで呉中央桟橋で下船される徒歩の観光客はごく僅かです。この鉄道引き込み線のあった私有地を地権者から購入して、遊歩道を新設したとしても、利用者は僅かだと容易に推察されます。実際、現在の堺川親水遊歩道を歩かれる方はごく少数であることから、その投資効果に疑問符が付きます。
 私は、青山クラブを購入することは、日本遺産の認定によるヒストリーコース新設や、「この世界の片隅に」のヒットを受けて時宜を得たもので賛成ではありますが、旧鉄道引き込み線跡地を取得して遊歩道を建設するのには反対です。寧ろ、JRの線路を渡ってビューポートくれ前の歩道を歩けば、中央地区商店街へのルートも開けることになります。以前ビューポートを建設する際に、呉駅から中央地区商店街への導火線の役割を果たすと位置付けていたくらいですから、大和ミュージアムからの導火線も追加して相乗効果を狙うべきでしょう。しかも、この歩道は街路灯をわざわざ大正時代風の情緒溢れるガス灯にしており、寧ろこの既存ルートを活かすべきと考えます。
 そして出来得るならば、青山クラブを現存させ、その中庭に屋根を設置して、戦艦大和大型試験機を展示できないか、検討すべきと考えます。これは戦後広島大学工学部が所有・保管していたものを、呉市が平成23年度に3,400万円を補正予算化し、搬入したもので、現在アレイからすこじま駐車場に保管され、活用策が未だ決まってなく、いわば宝の持ち腐れになっているからです。観覧用に価値ある目玉史料を展示することで、初めて多くの観光客が訪れるようになります。
 一方、何故呉市が唐突に本構想を起ち上げ、早急に事を進めようとしているのかと申しますと、構想実現に伴う財源を、20億円の合併特例債を活用しようとしているからです。これは、合併後15年間を経た平成31年度までに事業を終えることが条件です。合併特例債とは、新庁舎建設にも活用した有利な財源で、事業費の95パーセントを起債でき、その内70%の元利償還分を国が今後10年間で交付税措置してくれる仕組みだからです。
 勿論、その範囲内で事業を完結することに異論はありません。但し、青山クラブ解体、鉄道引き込み線跡地購入と遊歩道新設については、その費用対効果を十分検証し、議会に明らかにすべきでありましょう。構想策定結果がまだ示されていない現段階において、新年度予算編成に当たって、設計費を焦って計上しているのは明らかです。この構想に関し、議会としても十分議論する必要があると思っています。
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