街頭演説集

第71回 大和ミュージアムの指定管理

大和ミュージアムの管理運営を教訓に、指定管理者制度の改革を!

Facebook 2016.12.23

 去る12月19日は、71回目の街頭演説。テーマは、呉海事歴史科学館こと「大和ミュージアム」の管理運営についてです。
 大和ミュージアムは平成17年度に開館し、初年度は、予想を遙かに上回る年間110万人の集客を数え、以後12年近く、順調に来館数を維持して来ました。正に観光立市呉市の目玉と言っても過言ではありません。その間平成20年度に直営から民間委託、即ち指定管理者制度を導入し、23年度までの4年間、24年度から今年度までの5年間と、同じ大和ミュージアム運営グループが管理を担って来ました。
 来年度からの5ヶ年は、初めて大和ミュージアムと国の重要文化財である入船山記念館とをセットで指定管理者を公募し、1者しか応募がない中、既存管理者である大和ミュージアム・入船山記念館運営グループと5ヶ年契約することが、先日議決されました。
 大和ミュージアム運営グループは、指定管理者モニタリングで連続でダブルAランクの高評価を得ており、特に平成27年度は、70万人の来館予想に対し、100万人を超えることで、計画より1億5,400万円の増益となり、その内半額の7,700万円を指定管理者納付金として、呉市に納めています。これは同グループと呉市海事歴史科学館学芸課の努力の賜と言えましょう。
 では、もう半分の7,700万円はどこに行ったのかと申しますと、これはグループを構成する4者、即ち凸版印刷、トータルメディア開発研究所、日本旅行、ビルックス各本社に案分して上納されることが判りました。当局の説明では、この内、予定外の維持管理費として使われたということでしたが、この地元還元率は示すことができませんでした。何故ならば、この支出金額は決算には現れないからです。
 問題は、その他の支出1億5,100万円の中身です。額が大きいので、その他の支出としての一括提示では納得がいきません。その他の支出の内、本社上納金7,700万円が入っており、それを控除した7,400万円の内数として、大和ミュージアム駐車場借上料が4,600万円含まれているということが委員会質疑の中で、判って来ました。では、残りの2,800万円は何かというと、この点が最も委員会が紛糾し、一時中断しました。それは、本社にまつわる必要経費である一般管理費だということを、委員会再開後にようやく当局が明らかにしたのです。
 更にその内訳は、本社採用非常勤職員労務費、出張交通費、諸経費、間接経費ということですが、その内数を当局は最後まで委員会に提示しませんでした。しかも非常勤職員は現場採用が本筋であって、企画に絡む人件費は本社の正社員が担当するでしょうから、本社採用の非常勤職員の人件費を一般管理費に計上することは理解できません。加えて、諸経費と間接経費の中身やその違いについても、当局は全く説明できなかったのです。つまり、解っていなかったことになります。
 一般的に間接経費とは、一セクションに止まらない必要経費のことで、諸経費に対してみなし算出を行うものですが、そのみなし率も不透明なままです。
 加えて、来年度からの収支計画を見ますと、大和ミュージアムと入船山記念館を合算した予算しか示されず、その内訳が不明瞭となっています。ただその大半が大和ミュージアム関係と考え、その他の支出の単年度平均額を精査してみました。すると、当然指定管理料を高く設定するため、入場者見込み数を年平均80万6千人に設定しており、指定管理者納付金は計上されていません。但し、企業リスクを軽減するため、この点は理解できます。
 ただ、その他の支出は1億700万円となっていますから、これから固定費である駐車場借上料4,600万円を控除した6,100万が一般管理費となる計算です。ということは、平成27年度決算額と比べ、3,300万円が上乗せされているではありませんか。何故そんなに増額になるのか、その内訳はどうなっているのか、私は議案付託された委員会の委員ではなかったため、この大切な点を突っ込むことができませんでした。
 ただでさえ、不明瞭な本社にまつわる一般管理費が、新計画では倍増以上になっていることは大問題です。この度の応募者は1者のみだったため、提案者の言い値になった感は否めません。
 
 一方、複数の企業が共同で応募する場合、各企業が出資した特別目的会社を設立する場合があります。グリーンピアせとうちや、呉市斎場がそれに該当致します。この場合、収益が上がった場合の法人市民税は、呉市の歳入となります。ところが、運営グループ、即ちジョイントベンチャーという手法では、収益が各構成団体の本社に分配上納され、それが呉市外だと、法人市民税は呉市には僅かしか入って来ません。しかもその上納金は、本社の全体収益に吸収され、均等割は本社所在地の自治体へ、法人税割は従業員数に応じた案分となります。理論的には、本社で収益率の悪い足を引っ張る部門がありますと、呉市で上げた上納収益は相殺されてしまうのです。
 そこで、各社のグループにおける大和ミュージアムの職員数に関して質疑がありました。それによると、代表者である凸版印刷5名、トータルメディア1名、日本旅行3名、ビルックス1名で、後は非正規雇用を含め、全体で24名ということでした。ということは、少なくとも東京に本社がある3社は従業員規模が大きいので、法人住民税の法人税割の殆どと均等割全額が東京に納税されることになるのです。実際、指定管理者納付金が発生した年度が多く、これまでの実績を勘案すれば、今後の5年間で2億円程度が本社に上納される可能性があります。つまり、企業リスクを抑制するために、計画段階で利用料収入を低く設定すれば、指定管理料をアップさせ、且つ計画を超えた収益が、東京にある本社に上納されることになる仕組みなのです。即ち、地元貢献という部分が希薄な訳です。
 ところが、それらを評価採点する指定管理者指定における基準はありませんし、この度の募集要項を見ましても、それらを採点する項目はありませんでした。つまり、職員の地元採用や物品調達を地元企業にするとか、地元貢献に係る評価項目が欠落しているのです。
 建設業における総合評価方式や、通常の委託等に係るプロポーザルでは、地元貢献の評価項目がありますが、指定管理ではこの部分がなかったことが判りました。私は、今後指定管理全体において、この部分を評価基準に加えることを要望致しました。
 いずれに致しましても、既存運営の評価が高い指定管理者の場合、契約期間終了間際の再公募において、競争相手が出現し難い現状があります。この度の教訓で、指定管理者指定において、様々な課題や問題点が浮かび上がって来ました。私は、これを機に指定管理の在り方を再検討する時が来ていると訴え、当局に改革を要請致しました。
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