乳幼児等医療費助成の拡大による功罪
Facebook 2017.4.20
一昨日は88回目の街頭演説。テーマは乳幼児等医療費助成の拡大についてです。
呉市は、議会の圧力に屈して、新年度に乳幼児等医療費助成の対象年齢を拡大する8,800万円の新規予算を計上しました。これは今年度10月から実施されるため、半年分の予算です。ということは今後毎年度1億7,600万円程度が市民の血税から投入されることになる訳です。
では、この乳幼児等医療費助成とはどのような制度でしょうか?我が国には公的医療保険制度が確立しており、70歳未満に関し、非公務員においては、中小企業が主に加入する健康保険協会健康保険(協会健保)、自営業者が主に加入する国民健康保険(国保)等、公務員においては公務員共済組合健康保険がありますが、受診した際の自己負担は原則3割(未就学児は2割)となっています。
乳幼児等が受診した際に、その2~3割負担を更に軽減する制度は国においてはないため、各都道府県が独自にその軽減制度を構築し、その傘下にある市町村がその制度を活用しているのが実情です。
具体的には広島県の場合、本人負担は、入院の場合1日の入院費が500円(食費等は全額自己負担)で月14日まで、15日目以降は無料になります。通院の場合は、1回受診が500円で月4回まで、5回目以降は無料です。3割負担額との差額は県と呉市が折半して健康保険組合等に支払う仕組みです。つまりこの部分は血税となります。
但し所得制限があり、所得に応じてその制限額は6段階に分かれています。例えば対象児童を2人育てている世帯の場合、608万円を超える世帯所得があった場合は、助成制度の対象外となります。
そこで呉市は平成18年度から、入院に限り小学6年生まで対象を拡大しました。これは県制度の枠外で呉市独自制度ですから、この自己負担額との差額は全額呉市が支払うことになります。この結果、呉市の乳幼児等医療費助成の予算は、平成28年度で2億8,600万円にまで膨れて来ました。その内県の負担は1億3,700万円、呉市負担は1億4,800万円だったのです。
ところが、子育て支援に力を入れ、転入を含めた若い世代の人口獲得競争が全国の自治体間で激化する中、呉市は議会の圧力に屈する格好で、今年10月から入院助成を中学3年生まで、通院助成を小学6年生に拡大したという訳です。
それにより必要となる追加経費が、年間1億7,600万円となる訳です。つまり呉市において、これまで税金からの負担は、年1億4,800万円だったのが、今後は3億2,400万円と倍以上となり、県負担分を加えた国保会計全体では、4億6,200万円に膨れ上がります。
しかも、一旦飴玉政策を打ち出すと、半永久的にそれを継続することになるのは火を見るよりも明らかで、敬老優待助成制度がそれを如実に物語っています。人口減に歯止めがかからない中で、税収は目減りするのは必定にも関わらず、今後制度を縮小して経費を抑制することは極めて困難で、寧ろ対象を更に拡大する圧力が強まることが容易に予想されます。
加えて、呉市の国民健康保険における国の減額調整というのがあり、独自施策によって、医療費が増えた場合、その波及分を国の呉市への負担金から控除することになっています。この制度により、呉市は毎年度32%に該当する国庫負担金が約1,500万円減額されているのです。29年度においては、この減額幅は更に膨らむのは当然です。
但し、30年度からは全国自治体の要望により、子育て支援に関わる減額調整を廃止することになりはしましたが、これとて未就学児分のみです。ということは、小学生から中学生まで対象を拡大した独自制度には好影響がないこととなります。ただ30年度からは、国保は保険者が市町村から各都道府県に移行しますから、不透明な部分が多々あります。
一方この問題は、財源確保に止まらず、実は根が深いのです。それは、医療費が安価になれば、安易に医療機関に頼ってしまい、ちょっとしたことでも子どもを医療機関に連れて行く、いわゆるコンビニ受診が増えるということです。これは医療費増にも直結するだけではなく、そのことで子どもの抵抗力を奪い、弱い体質にしてしまいかねません。
例えば、子どもが風邪を引いて熱や鼻水を出し、汗を大量にかくとします。これは自然治癒力が働いて、毒素を自らの力で体外に放出している現象です。この様な場合は、大抵自宅で安静にしていれば自然治癒します。
子どもを診療所に連れて行き、悪性のインフルエンザでないと診断されても、親は子どもを早く楽にさせて欲しいあまりに注射を所望します。実はこれが問題なのです。風邪はウイルスにより発症しますが、注射は細菌である抗生物質を打ちますので、ミスマッチとなり身体によくないとされています。これを繰り返すと、ちょっとしたことでも風邪にかかり易い体質となり、また診療所通いを繰り返すことになります。
中には、これは注射を打つ必要はないと診断して、ちょっとした薬を処方するだけの善意的な医者もおられますが、ほんの一握りでしょう。注射を打った方が早く楽になることは事実なので、ついつい親の要望に沿って注射を打つ場合が多いのです。そうしないと患者が逃げてしまうという危機感も医者について回るからです。
注射に安易に頼り、薬漬けになることがしょっちゅうあると、将来高齢者になった時、介護保険のお世話になる確率が高まるでしょう。元気な高齢者が減少するのは、食の問題に加え、このコンビニ受診に一部原因があると言っても過言ではありません。
この様に、乳幼児等医療費助成の拡大は、子育て世代を中心とした有権者には聞こえがよいため、正面切って反対する議員は皆無の状況で、予想通り私一人でした。私は、この愚策が回り回って忍耐や辛抱といった教育の根本が軽んじられ、将来高齢者になった時に顕在化する確率が高まるので、財政上は勿論のこと、健康上もよくないと考えるものです。
特に国がこの制度を構築していないのは、医療費増に拍車をかけ、これが国民負担率を上げ、自らの首を絞めることになることを知っているからだと思っています。私は、このデメリットに加え、健康にマイナスになる点を特に重視しているのです。
呉市は、議会の圧力に屈して、新年度に乳幼児等医療費助成の対象年齢を拡大する8,800万円の新規予算を計上しました。これは今年度10月から実施されるため、半年分の予算です。ということは今後毎年度1億7,600万円程度が市民の血税から投入されることになる訳です。
では、この乳幼児等医療費助成とはどのような制度でしょうか?我が国には公的医療保険制度が確立しており、70歳未満に関し、非公務員においては、中小企業が主に加入する健康保険協会健康保険(協会健保)、自営業者が主に加入する国民健康保険(国保)等、公務員においては公務員共済組合健康保険がありますが、受診した際の自己負担は原則3割(未就学児は2割)となっています。
乳幼児等が受診した際に、その2~3割負担を更に軽減する制度は国においてはないため、各都道府県が独自にその軽減制度を構築し、その傘下にある市町村がその制度を活用しているのが実情です。
具体的には広島県の場合、本人負担は、入院の場合1日の入院費が500円(食費等は全額自己負担)で月14日まで、15日目以降は無料になります。通院の場合は、1回受診が500円で月4回まで、5回目以降は無料です。3割負担額との差額は県と呉市が折半して健康保険組合等に支払う仕組みです。つまりこの部分は血税となります。
但し所得制限があり、所得に応じてその制限額は6段階に分かれています。例えば対象児童を2人育てている世帯の場合、608万円を超える世帯所得があった場合は、助成制度の対象外となります。
そこで呉市は平成18年度から、入院に限り小学6年生まで対象を拡大しました。これは県制度の枠外で呉市独自制度ですから、この自己負担額との差額は全額呉市が支払うことになります。この結果、呉市の乳幼児等医療費助成の予算は、平成28年度で2億8,600万円にまで膨れて来ました。その内県の負担は1億3,700万円、呉市負担は1億4,800万円だったのです。
ところが、子育て支援に力を入れ、転入を含めた若い世代の人口獲得競争が全国の自治体間で激化する中、呉市は議会の圧力に屈する格好で、今年10月から入院助成を中学3年生まで、通院助成を小学6年生に拡大したという訳です。
それにより必要となる追加経費が、年間1億7,600万円となる訳です。つまり呉市において、これまで税金からの負担は、年1億4,800万円だったのが、今後は3億2,400万円と倍以上となり、県負担分を加えた国保会計全体では、4億6,200万円に膨れ上がります。
しかも、一旦飴玉政策を打ち出すと、半永久的にそれを継続することになるのは火を見るよりも明らかで、敬老優待助成制度がそれを如実に物語っています。人口減に歯止めがかからない中で、税収は目減りするのは必定にも関わらず、今後制度を縮小して経費を抑制することは極めて困難で、寧ろ対象を更に拡大する圧力が強まることが容易に予想されます。
加えて、呉市の国民健康保険における国の減額調整というのがあり、独自施策によって、医療費が増えた場合、その波及分を国の呉市への負担金から控除することになっています。この制度により、呉市は毎年度32%に該当する国庫負担金が約1,500万円減額されているのです。29年度においては、この減額幅は更に膨らむのは当然です。
但し、30年度からは全国自治体の要望により、子育て支援に関わる減額調整を廃止することになりはしましたが、これとて未就学児分のみです。ということは、小学生から中学生まで対象を拡大した独自制度には好影響がないこととなります。ただ30年度からは、国保は保険者が市町村から各都道府県に移行しますから、不透明な部分が多々あります。
一方この問題は、財源確保に止まらず、実は根が深いのです。それは、医療費が安価になれば、安易に医療機関に頼ってしまい、ちょっとしたことでも子どもを医療機関に連れて行く、いわゆるコンビニ受診が増えるということです。これは医療費増にも直結するだけではなく、そのことで子どもの抵抗力を奪い、弱い体質にしてしまいかねません。
例えば、子どもが風邪を引いて熱や鼻水を出し、汗を大量にかくとします。これは自然治癒力が働いて、毒素を自らの力で体外に放出している現象です。この様な場合は、大抵自宅で安静にしていれば自然治癒します。
子どもを診療所に連れて行き、悪性のインフルエンザでないと診断されても、親は子どもを早く楽にさせて欲しいあまりに注射を所望します。実はこれが問題なのです。風邪はウイルスにより発症しますが、注射は細菌である抗生物質を打ちますので、ミスマッチとなり身体によくないとされています。これを繰り返すと、ちょっとしたことでも風邪にかかり易い体質となり、また診療所通いを繰り返すことになります。
中には、これは注射を打つ必要はないと診断して、ちょっとした薬を処方するだけの善意的な医者もおられますが、ほんの一握りでしょう。注射を打った方が早く楽になることは事実なので、ついつい親の要望に沿って注射を打つ場合が多いのです。そうしないと患者が逃げてしまうという危機感も医者について回るからです。
注射に安易に頼り、薬漬けになることがしょっちゅうあると、将来高齢者になった時、介護保険のお世話になる確率が高まるでしょう。元気な高齢者が減少するのは、食の問題に加え、このコンビニ受診に一部原因があると言っても過言ではありません。
この様に、乳幼児等医療費助成の拡大は、子育て世代を中心とした有権者には聞こえがよいため、正面切って反対する議員は皆無の状況で、予想通り私一人でした。私は、この愚策が回り回って忍耐や辛抱といった教育の根本が軽んじられ、将来高齢者になった時に顕在化する確率が高まるので、財政上は勿論のこと、健康上もよくないと考えるものです。
特に国がこの制度を構築していないのは、医療費増に拍車をかけ、これが国民負担率を上げ、自らの首を絞めることになることを知っているからだと思っています。私は、このデメリットに加え、健康にマイナスになる点を特に重視しているのです。