街頭演説集

第103回 学校校庭芝生化の総括

教育理念なき校庭芝生化は市長トップダウンの失政!

Facebook 2017.8.3

 去る7月31日は103回目の街頭演説。猛暑故、前回に続いてのクールビズ・ノー上着での出で立ちとなりました。テーマとして、学校校庭芝生化の総括を試みてみたいと思います。
 
 この施策は、市長が2期目を目指した選挙マニフェストにも掲げられていたもので、その直前の平成21年度からスタートしました。
 具体的には、先ずモデル校として警固屋小学校が選定されたのです。県内先進事例では、地元スポーツ団体から強い要望があって、「維持管理を自分達で請け負う」との理由で、正にキーワードは「地域協働」でした。呉市も場合も地域協働で行うと名言したものの、初日に野芝を植える時だけ、地元PTAや自治会が参加したのみで、その後は一切関わっていません。何故なら地元団体からの要望ではなく、市長の思いつきで、選挙対策の一環として行われたからです。
 教育委員会議でも、この是非について議論は殆どなく、市長が当時の教育長に指示して進めたことは想像に難くありません。つまり、教育の独立性は損なわれていたのです。
 しかも、野芝の苗代購入費に加えグラウンド造成費が合わせて260万円もかかり、その後維持管理費としての水道代が毎年100万円も余計に支出され続けているのです。因みに、文科省としての芝生化補助金制度はありますが、呉市の場合、校庭面積基準に届かないため、全て市民の血税が充てられました。
 結局散水等の芝生維持管理は、業務主事が行うこととなり、新たな業務が加わったのです。当時の同校業務主事は、通常の嘱託員ではなく正規職員であったため、勤務時間が週29時間ではなく、40時間だったこともあって、これも対応が可能でした。よって、同職員は市長から表彰されています。当時当局は「教諭や生徒もそれに関わる」と美辞麗句を並べていましたが、現実はそんな甘いものではありませんでした。
 これに懲りて芝生化を断念するものと思いきや、それを継続しつつ、2年後の平成23年度にはモデル校第2弾として、両城小学校で開始したのには驚きました。実際、23年度からスタートした第4次長期総合基本計画の前期計画には、校庭芝生化が記述されたのです。
 そこで当初計画を策定した企画部に、その理由を問い糺したところ、「教育委員会から、地域協働の一環であるから重要で、是非計画に記述して欲しいとの要請があった」との回答がありました。実際、平成20年度からの財政集中改革では、地域協働プログラムが3本柱の一つとして盛り込まれていたので、この「地域協働」が落とし文句となった訳です。 ところが、当時地元の自治会連合会に、教育委員会から、「維持管理に地元PTAや自治会等には手を煩わせないから、是非やらせて欲しい」と依頼したというのです。一部自治会長はこれに反対したものの、教育委員会の意向ということで、結局押し切られた格好です。つまり、モデル第2号も市長のトップダウンだった訳です。
 警固屋小学校の野芝で一時枯らしたため、今度は造成費のかからないティフトン芝にして、井戸水対応が可能な両城小学校を選定したのです。初期投資は180万円、水道代は年間10万円に抑えました。
 予想通り、初日の植え込みのみ、地元団体が協力しました。つまり地域協働は最初のセレモニーのみ、事実上は行政主導だったのです。しかも同校も、翌年芝を枯らしています。
 私は平成25年3月の予算総体質問で、これらの取り組みについて、失政を素直に認めて廃止すべきだと訴えました。
 ところが教育委員会の答弁は、成果と課題が出て来たとした上で、逃げの答弁に終始したのです。
 先ず成果としては、「児童が積極的に休憩時間に校庭に出て遊ぶようになった。これは体力を増進する教育的視点に合致ている」と強弁。課題としては、地域協働団体が育っていないので、今後維持管理の手法について、「地元と協議を重ねて行く」としました。実際はそのような協議を行った形跡は、今日まで一切ありません。
 また、芝生化することで、体育授業でのソフトボールやドッジボール等で白線を引くことが困難になっている実情もあります。却って授業に支障を来している傾向さえあるのです。
 そこで私は、芝生維持管理にコストもかかることから、「失敗を認めて今後の全校展開を断念すると共に、両校の芝生を廃止すべきではないか」と糺しました。これに対しては、今後地元団体から要請があることもあり得るので、その際には対応していきたい。既に実施した2校については継続していきたい」と、あくまで失政を認めませんでした。
 その後2校以外に芝生化された学校は皆無です。つまり、同じ呉市立小学校で、不平等が継続していることを、先ず重く受け止めねばなりません。教育は公平でなければならないはずです。モデル事業や社会実験というのは、その結果を踏まえ、よい施策と判断すれば全域展開し、愚策と判断すれば廃止するのが本来の手法です。もしマニフェストに従い、残り全小学校校庭を芝生化した場合、イニシャルコストが6千万円余り、ランニングコストが、単純計算で毎年3,400万円も余計にかかって来るのです。
 にも関わらず、市長マニフェストを失敗と認めなくないため、行政職員が市長に対し、忖度して来たと言われても仕方ないでしょう。
 実際、3期目の平成25年市長選では、マニフェストから「校庭芝生化」の文字が綺麗に消えてしまったのです。勿論この度4期目へのマニフェストにも記述はありません。つまり、過去のマニフェストに対する総括が、市民に対してきちっとなされていないのです。
 しかも、成果として胸を張っている、「児童が積極的に校庭で遊ぶようになった」というのは、詭弁でしかありません。何故なら、「環境を整えないと校庭で遊ばないような教育しかできていなかった」とのそっくり裏返しでもあるからです。子どもは、土のグラウンドでどろんこになって遊べばよいのです。それこそ根性や体力が育ちます。坊ちゃん・嬢ちゃん教育、即ち過保護教育であっては決してなりません。教育理念との整合性すら疑ってしまいます。
 マニフェストは、市民や保護者受けするような思いつきの軽々しいものであってはいけません。現実に根を下ろして、財源に裏打ちされた実効性のある政策でなくてはならないのです。有権者は心してかかるべきでしょう。
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