街頭演説集

第104回 中高一貫教育と小中一貫教育

中高一貫教育校設置は、先行する小中一貫教育と矛盾!

Facebook 2017.8.11

 一昨日は、104回目の街頭演説。台風5号と公務出張が重なったため、水曜日での登場となりました。この日からバックテーマミュージック「炎のランナー」が復活。テーマは中高一貫教育校の設置についてです。

 さて、去る5月31日の呉市議会文教企業委員会において、中高一貫教育校設置を県に提案する旨が報告されました。正に議会にとっては寝耳に水です。議会で一切議論をせずに、唐突に提案するとは、議会軽視の何ものでもありません。
 県は、平成11年度から制度化された中高一貫教育校設置を推進しており、県内他市でも県立中高一貫教育校設置を要望している手前、呉市としてもそれに乗り遅れたくない思いが滲み出ています。
 因みに中高一貫教育校には、併設型、中等教育校、連携型の3種類がありますが、この度の提案は併設型です。具体的には呉三津田高校内に県立中学校を設置する内容となっています。何故三津田高校を選んだのかといいますと、同校が県教委から探究コアスクールの指定を受け、カリキュラム開発を行うリーディング校であること、市内随一の進学校であることです。
 質疑によると、市内の中学生の内、約4%に当たる100人弱が毎年、広島市を中心とする市外の中学校に入学しているので、その抑止策の一つにもなるというのです。もう一つは、高校入試を必要としないため、余裕を持って勉学に励めるということ、小学生卒業児童の選択肢が増えるメリットが強調されました。
 県は、平成16年度から東広島市に広島中学・高校を開設して成果を上げているといいます。また平成31年度からは、大崎上島町に、全寮制の小中一貫教育校を開設し、グローバルリーダーの育成を目指しています。私学では、尾道中学・高校、武田中学・高校、呉青山中学・高校があります。
 但し、デメリットについては、殆ど言及されませんでした。つまり、いいことづくめだというのです。
 ところでこの度、全国初の市立併設型中高一貫教育校である、岡山市立岡山後楽館中学・高校を視察して参りました。それによると、平成9年に出された中教審答申では、「中高一貫教育校設置に際しては、進学校への転身を目的としてはならない」とあり、同校は、今日までそれを忠実に遵守しているというのです。
 また、岡山市教育振興基本計画では、コミュニティスクール、即ち中学校校区を単位とした幼保、小中、地域が一体となって域内の子どもを育てる地域協働学校を標榜しており、これが将来小中一貫教育校設置を目指すことで、中高一貫教育校との整合性が図れなくなるのを危惧しているのが、現場の切実な声だったのです。
 加えて、県立高校内に中学校を新設した岡山県立津山中学・高校では、津山市外から優秀な人材が集まるため、近隣市町が逆に人材不足になっているという問題があるそうです。
これは、正に呉市が目指そうとしている手法と同じです。
 呉市において、仮に県立呉三津田中学・高校が開設された場合、高校の学区は県内全域、中学の校区は市内全域となることが予想され、各地域の中学校校区の優秀な人材が中高一貫教育校に取られることになり、既存の市立各中学校の学力低下も懸念されます。
 しかも呉市は、全国に先駆けて平成18年度から小中一貫教育を推進しており、それとの整合性が取れなくなります。例えば某中学校を卒業した生徒が、併設型中高一貫校の呉三津田高校に入学したと仮定します。中高一貫教育校では、中学生の時に高校の授業を前倒しで行うことが可能となりますので、入学時から勉学に差が出る可能性も秘めています。 或いは、小学校時代に小中一貫教育を受けた児童が卒業して、呉三津田中学へ入学すると、小中一貫教育がそこで分断されます。或いは、小中一貫教育校である中学校を卒業した生徒が呉三津田高校へ入学すると、中高一貫教育は受けれないことになります。小中一貫教育は呉市の教育、中高一貫教育は県の教育ですので、児童生徒に進学の選択肢が増えても、混乱する可能性すらあるのです。
 ということは、小中一貫教育を全市内で展開して来た呉市として、敢えて中高一貫教育校を県に設置してもらう必要性はないと考えます。県の財政への圧迫要因にもなるでしょう。
 更には、小学校卒業後の選択肢が増えるといっても、呉三津田高校近くに在住する小学卒業生にとって、通学時間の観点から有利になるのは明白です。となれば、教育の公平性も保てなくなる恐れさえ生じて来るのです。
 一方、呉市議会に報告する直前の5月22日に開催された、呉市教育委員会議の議事録を調べてみました。県提案である中高一貫教育校設置は、単なる報告事項に止まっており、これに対する議論は、予想通り全くなされていませんでした。そればかりか、それに至る過去の教育委員会議でも議論された形跡は皆無です。つまり、5月の教育委員定例会議にこれも唐突に報告されただけなのです。
 ということで、教育行政の最高議決決定機関たる教育委員会議で、全く議論がされていなかったことが判明致しました。
 では、そもそも誰がこの提案を考えたのか?以前から教育委員会内部で調査研究して来たとの議会答弁がありましたが、もしそうであれば、少なくとも教育長を除く4名の教育委員は完全に蚊帳の外に置かれていたことになります。またしても市長の思いつきのトップダウンで、教育長を通じ内定したと言われても仕方ないでしょう。教育の独立性や中立性はあったものではありません。
 結局、中教審答申を無視しての進学を目指すための中高一貫教育であり、呉市の小中一貫教育との矛盾、地域中学校の人材不足による学力低下、周辺市町への悪影響等のデメリットを考えた場合、軽々に県に提案すべきではないと考えるものです。

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