街頭演説集

第107回 特定保育事業における税制優遇措置

企業主導型保育への税制優遇は認可保育所の経営を圧迫!

Facebook 2017.9.4

 去る9月4日は107回目の街頭演説。テーマは、本定例会に提出されている、特定保育事業における税制優遇措置についてです。
 即ち市税条例と都市計画税条例の改正ですが、これは平成32年度までに待機児童ゼロを目指す安倍政権による保育施設確保策の一貫としての市民税、都市計画税へのわがまち特例の適用です。
 これには大きく二つあり、その第1は、地方税法で既に課税標準の特例割合が1/2に優遇されている子ども子育て支援法による地域型保育の内、家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育各事業です。もう一つは、この度の地方税法改正の附則により暫定的に追加された企業主導型保育事業です。
 つまり、これらはわがまち特例の適用として、国の基準1/2を参酌して、自治体の実情に合わせ、特例割合を1/3~2/3の範囲内で条例で定めることになりました。
 そこで、この範囲で最も企業に対しての優遇措置である、1/3に改正しようとする案です。
 さて、企業主導型保育事業という名称は、この度内閣府による実施要綱で初めて登場しました。つまり、児童福祉法や、子ども子育て支援法を読んでも、そのような単語は出て来ません。しかも、改正地方税法附則第15条第44項には、児童福祉法が引用されており、それも企業主導型保育事業ではなく、「特定事業所内保育施設」と定義しているのみです。
 方や地域型保育事業3類型は、子ども子育て支援法に位置付けられていますし、改正地方税法第349条の3第28項~30項においても、その根拠条項を児童福祉法から引用しています。
 この内事業所内保育については、改正前の地方税法において、利用定員6人以上は、家屋や設備への固定資産税と都市計画税は非課税となっていました。この度の改正におけるわがまち特例の適用は、利用定員5人以下としています。勿論、事業所従業員の子女以外をも利用を可能にすることが条件で、呉市ではまだ登場していません。
 結局、事業所内保育は市町が認可する施設、企業主導型は認可外施設であることが判りました。つまり、政府が特に大都市圏における待機児童をゼロにするため、例え認可外であっても、企業がこの2年間で新設すれば、施設整備や利用者保育に対して補助金を出すということです。その際の条件は国が実施要綱で、利用定員6名以上、当該企業の従業員以外、即ち地域枠が1/2以下に定められています。
 これは待機児童が多く存在する大都市圏での誘導策と考えられ、国が直接補助を決定しますので、呉市の様な待機児童ゼロの都市においては、却って保育の提供過剰を招く恐れがあると推量されます。
 企業の事情で休日出勤や夜勤、週限定日出勤と、様々な保育ニーズに対応するために、認可保育所より規制が緩やかな企業主導型保育は地方においても存在意義があるということで、内閣府も私の質問に対し、本市と同様に回答しています。
 ところが本市には、新たな保育料負担が生じる多様な保育ニーズは僅かしかありません。
しかも、従業員以外の利用定員が5割以下ということですので、経営を安定させるためには、企業も目一杯従業員以外の子どもを定員に含めることが考えられます。
 地域枠においては、施設基準が同等である小規模保育を初めとする地域型保育で十分穴埋めが可能ですし、現実的に既存保育事業者の経営圧迫を招く恐れがあるのです。
 認可外施設である企業主導型保育への国の補助は、本来の目的に照らした場合、待機児童の有無で線引きをするべきだったでしょう。
 そこで、地域型保育へのわがまち特例が改正前の特例割合1/2よりも、2/3と逆に課税標準が大きくなる逆転現象の余地を残している矛盾について、総務省に聴きました。すると、予想通り「地域の実情に合わせるため、裁量範囲を増やした」との回答がありました。
 一方、わがまち特例における交付税措置について考察してみましょう。
 地域型保育の3類型において、固定資産税と都市計画税は、地方税法改正前既に例外規定で課税標準が1/2に定められていました。その際は、固定資産税のみの減額分について交付税措置される仕組みとなっていました。
 その上で、条例改正後の地域型保育3類型や企業主導型保育において、課税標準の特例割合を参酌基準の1/2にした場合やそうでない場合に設定したと仮定すると、交付税措置は全てその減額分が対象になるのではなく、あくまで特例割合1/2による減額分しか措置されないことが、私の質疑で判明致しました。
 結局特例割合を最小の1/3に設定しても、1/2までしが減額分の交付税措置が認められない、つまりうまみがあまりないということなのです。
 企業主導型保育への国庫補助や税制の優遇策は、大都市における待機児童ゼロを解消するために、政府が捻り出した施策です。具体的には、今年度と来年度に新設されたことで国庫補助の対象となり、固定資産税と都市計画税のわがまち特例も5年間の暫定措置でしかありません。呉市においては、本来必要性が極めて低いものと言えましょう。
 ならば、待機児童ゼロの本市の実情を鑑みて、企業主導型保育においては、課税標準の特定割合について国の基準1/2を参酌するのではなく、緩和幅を最小限に抑制する2/3を適用すべきと考えます。本市が大都市基準に合わせる必要はさらさらない訳で、寧ろ既存の認可保育所の経営圧迫をできるだけ回避するのが、改正法下で呉市が果たすベターの手段なのです。
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