現場の実情を無視した障害者就労継続支援A型の国基準!
Facebook 2018.1.5
昨日1月4日は、新年を飾る平成30年における演説初めで、通算120回目を数えました。テーマは、全国各地でニュースになっている障害者就労継続支援A型事業所の在り方についてです。
昨年7月末を持って、呉市に隣接する坂町にある障害者就労継続支援A型事業所が経営困難に陥り、B型への転換を余儀なくされました。同事業所の従たる事業所に位置付けられていた呉市内の食堂も同様です。
また同日には、倉敷市内のA型事業所5箇所が同時閉鎖に追い込まれ、223名もの失業者を出しました。そして同年11月17日、福山市と府中市にあったA型事業所も破綻し、112名の失業者を出したのです。
ここで、障害者就労継続支援A型事業所の意義について、先ず説明致します。
これは平成18年度制定施行の障害者自立支援法に位置付けられたもので、既存の障害者雇用促進法による法定雇用率に基づく一般就労と、各都道府県が自主支援して来た障害者小規模作業所の谷間を埋める、障害者における就労対策のことです。これにより、例え一般就労できなくても、労働基準法や最低賃金法に守られ、障害者の就労を確保するものです。このA型は、障害者に対する生活相談や支援サービスも行ういわゆる福祉の側面を合わせ持ち、それに係る経費として、国から自立支援給付費が交付される仕組みとなっています。この給付費は障害者1名が1日就労することに対し、利用人員規模や生活圏域で若干異なりはしますが、呉市の場合5,400~5,500円程度となります。
因みに、従来からあった小規模作業所もこの新法によって、初めて障害者就労継続支援B型として法的根拠が与えられ、同じく自立支援給付費の対象となった訳です。但し、こちらは中重度障害者が主な対象ですから、就労よりも福祉サービスに重点が置かれ、労基法や最低賃金法の対象外となっており、工賃は全国平均で月額僅か1万5千円、呉市内の28事業所平均では更に低く、1万円程度となっています。
ということは、A型がB型に移行した時点で、それを継続利用する障害者は失業者とみなされます。
では何故、A型事業所の閉鎖や倒産、或いはB型への移行が相次いでいるかと申しますと、昨年2月9日に、国が指定障害福祉サービス運営基準を省令改正したことに依拠しま
す。この改正のポイント第192条で、①A型事業者は、生産活動に係る収益(事業収入から経費を控除した額)を賃金総額以上にしなければならない②賃金(A型)及び工賃(B型)には、自立支援給付費を充ててはならない-の2点です。
この法的根拠は、障害者自立支援法の後継法である障害者総合支援法の第29条第1項です。即ち、「市町村は、指定障害福祉サービス事業者からサービスを受けた障害者等に対し、厚労省令で定めるところにより、介護給付費又は訓練等給付費を支給する」旨が記述されています。
この厚労省令で定めれば、如何様にもなるというのが法のたてりなのです。しかしニュース報道されているように交付対象が指定障害福祉サービス事業所ではなく、法律条文の書き方として支給決定障害者になっているので、この省令改正は疑問点も多いと睨んでいます。厚労省としては、「元々自立支援給付を障害者の賃金に充ててはならなかったが、その趣旨を明確にするために、この度省令改正を行った」との言い分です。
しかもこの省令改正により、全国自治体が障害福祉サービス基準条例の改正を余儀なくされました。呉市でも昨年3月定例会に条例改正を行い、昨年4月1日から施行としたのです。このことにより、条例違反となった全国のA型事業所が次々と閉鎖に追い込まれたのです。
ところが厚労省は、省令違反状態のA型事業所の救済措置して、昨年3月30日に、猶予期間を与える通達を慌てて追加で出したのです。この通達そのものは、省令を逸脱しているとも言え、厚労省自体が支離滅裂に陥りました。つまり違反状態になっているA型に対し、経営改善計画を提出させ、1年間で改善が見られない事業所は自治体の指定を取り消し、1年間で改善が見られれば、これを後2年間まで更新できるようにしたのです。
私は、昨年12月定例会一般質問で、「呉市が今年度改正施行した基準条例には、猶予期間を設定する但し書き条項がない。国が昨年3月にそれを認める通達を出したのだから、呉市は少なくとも6月定例会で基準条例の再改正を行うべきではなかったのか?これからでも遅らばせながら、改正すべきではないのか?」と、当局を追求しました。つまり、市内にA型が6箇所ありますが、その内経営改善計画を提出している3事業所は、基準条例違反になると鋭く切り込んだ訳です。それに対する新市長に代わっての福祉保健部長の答弁は、「国が省令を追加改正していないので、条例改正は考えていない」と、苦しい内容だったのです。条例違反のグレーゾーンに対し、目をつむるというのです。
実はこの問題は、平成18年度以降、急速に指定箇所が増加したA型ですが、経営者が安易に私利私欲に走り、公的補助金を悪用する動きもあったため、厚労省がその動きを封じる狙いがあったようです。
例えば、高齢者や障害者等の就職困難者を雇用した事業者に対し交付される、特定求職者雇用開発助成金があります。これを毎年度新規雇用をして交付を受けるために、同じ経営者がA型利用者を説得してB型への移行をさせることが多々あるようなのです。そうすることでA型の人員枠をそのままに人件費を増やさずに、助成金の交付を受け続けることが可能となります。省令改正や呉市改正基準条例でも謳っているように、利用者の意向を無視する場合は違反となりますが、それが行政に伝わって来難い実態があります。
そこで今年度から国は、改正指定障害サービス運営基準に準拠し、一般就労を除く障害者に対してのみ、特定求職者雇用開発助成金を賃金には充ててはならないことにしました。
但し、法的根拠はありませんから、大いに問題があります。行政の立法府への侵害とも言え、三権分立はあったものではありません。
しかも、5人以上新規雇用した場合、離職率50%未満を対象にして来たのを、今年度からは25%未満と、ハードルを上げたのです。これは悪しきA型対策と言えましょう。ところが、年間5人未満の新規雇用しかないA型には効き目がありません。即ち4名A型で新規雇用し、翌年度は全員B型に移行させ、空いた穴を埋めるため、新たに4名を新規雇用しても、4名分の助成金が交付されるのです。
悪しきA型は、今後監査を厳しく行うことで排除しなければなりません。ただ、そのしわ寄せが、健全経営をしておられる他のA型に及んではならないのです。
大体、一般就労で挫折して中途退職した障害者や、発達障害等で対人関係がうまくいかない方の安定した雇用先としてA型が誕生した経緯があるのです。健常者雇用の企業でさえその収益確保で四苦八苦しているのに、障害者のみが生産に携わり、補助金なしで健全経営をせよということ自体に無理があると言えましょう。
そして、その能力を発揮できないまま、就労機会を奪うような国の施策には、到底納得できません。「国は障害者就労現場の実態が解っていない。机上の空論でしかない」というのが私の主張です。
そこで私は、昨年国に対し要望を行っています。①自立支援給付金は、一定割合の範囲内で最低賃金の確保に使用しても構わないように基準を改正する②特定求職者雇用開発助成金については、自立支援給付と重複している事業所は対象外とする-の2点です。
この内容を含め、私は呉市に対し、国に働きかける意志はないかと、先の一般質問で問い質しました。呉市としては、「これまでどおり障害者の就労確保に向け、市長会を通じて要望は続けて行く」との答弁でしたが、これでは具体性が全くありません。単なる美辞麗句に止まっていては、一歩たりとも前に進まないのです。地方分権一括法により、国と地方自治体は対等と位置付けられましたが、補助金や交付金の財布を握られている国には頭が上がらないのが、現状です。この様な忖度政治を打破するため、私は本年も市や国に対し、強くもの申して参る覚悟です。
昨年7月末を持って、呉市に隣接する坂町にある障害者就労継続支援A型事業所が経営困難に陥り、B型への転換を余儀なくされました。同事業所の従たる事業所に位置付けられていた呉市内の食堂も同様です。
また同日には、倉敷市内のA型事業所5箇所が同時閉鎖に追い込まれ、223名もの失業者を出しました。そして同年11月17日、福山市と府中市にあったA型事業所も破綻し、112名の失業者を出したのです。
ここで、障害者就労継続支援A型事業所の意義について、先ず説明致します。
これは平成18年度制定施行の障害者自立支援法に位置付けられたもので、既存の障害者雇用促進法による法定雇用率に基づく一般就労と、各都道府県が自主支援して来た障害者小規模作業所の谷間を埋める、障害者における就労対策のことです。これにより、例え一般就労できなくても、労働基準法や最低賃金法に守られ、障害者の就労を確保するものです。このA型は、障害者に対する生活相談や支援サービスも行ういわゆる福祉の側面を合わせ持ち、それに係る経費として、国から自立支援給付費が交付される仕組みとなっています。この給付費は障害者1名が1日就労することに対し、利用人員規模や生活圏域で若干異なりはしますが、呉市の場合5,400~5,500円程度となります。
因みに、従来からあった小規模作業所もこの新法によって、初めて障害者就労継続支援B型として法的根拠が与えられ、同じく自立支援給付費の対象となった訳です。但し、こちらは中重度障害者が主な対象ですから、就労よりも福祉サービスに重点が置かれ、労基法や最低賃金法の対象外となっており、工賃は全国平均で月額僅か1万5千円、呉市内の28事業所平均では更に低く、1万円程度となっています。
ということは、A型がB型に移行した時点で、それを継続利用する障害者は失業者とみなされます。
では何故、A型事業所の閉鎖や倒産、或いはB型への移行が相次いでいるかと申しますと、昨年2月9日に、国が指定障害福祉サービス運営基準を省令改正したことに依拠しま
す。この改正のポイント第192条で、①A型事業者は、生産活動に係る収益(事業収入から経費を控除した額)を賃金総額以上にしなければならない②賃金(A型)及び工賃(B型)には、自立支援給付費を充ててはならない-の2点です。
この法的根拠は、障害者自立支援法の後継法である障害者総合支援法の第29条第1項です。即ち、「市町村は、指定障害福祉サービス事業者からサービスを受けた障害者等に対し、厚労省令で定めるところにより、介護給付費又は訓練等給付費を支給する」旨が記述されています。
この厚労省令で定めれば、如何様にもなるというのが法のたてりなのです。しかしニュース報道されているように交付対象が指定障害福祉サービス事業所ではなく、法律条文の書き方として支給決定障害者になっているので、この省令改正は疑問点も多いと睨んでいます。厚労省としては、「元々自立支援給付を障害者の賃金に充ててはならなかったが、その趣旨を明確にするために、この度省令改正を行った」との言い分です。
しかもこの省令改正により、全国自治体が障害福祉サービス基準条例の改正を余儀なくされました。呉市でも昨年3月定例会に条例改正を行い、昨年4月1日から施行としたのです。このことにより、条例違反となった全国のA型事業所が次々と閉鎖に追い込まれたのです。
ところが厚労省は、省令違反状態のA型事業所の救済措置して、昨年3月30日に、猶予期間を与える通達を慌てて追加で出したのです。この通達そのものは、省令を逸脱しているとも言え、厚労省自体が支離滅裂に陥りました。つまり違反状態になっているA型に対し、経営改善計画を提出させ、1年間で改善が見られない事業所は自治体の指定を取り消し、1年間で改善が見られれば、これを後2年間まで更新できるようにしたのです。
私は、昨年12月定例会一般質問で、「呉市が今年度改正施行した基準条例には、猶予期間を設定する但し書き条項がない。国が昨年3月にそれを認める通達を出したのだから、呉市は少なくとも6月定例会で基準条例の再改正を行うべきではなかったのか?これからでも遅らばせながら、改正すべきではないのか?」と、当局を追求しました。つまり、市内にA型が6箇所ありますが、その内経営改善計画を提出している3事業所は、基準条例違反になると鋭く切り込んだ訳です。それに対する新市長に代わっての福祉保健部長の答弁は、「国が省令を追加改正していないので、条例改正は考えていない」と、苦しい内容だったのです。条例違反のグレーゾーンに対し、目をつむるというのです。
実はこの問題は、平成18年度以降、急速に指定箇所が増加したA型ですが、経営者が安易に私利私欲に走り、公的補助金を悪用する動きもあったため、厚労省がその動きを封じる狙いがあったようです。
例えば、高齢者や障害者等の就職困難者を雇用した事業者に対し交付される、特定求職者雇用開発助成金があります。これを毎年度新規雇用をして交付を受けるために、同じ経営者がA型利用者を説得してB型への移行をさせることが多々あるようなのです。そうすることでA型の人員枠をそのままに人件費を増やさずに、助成金の交付を受け続けることが可能となります。省令改正や呉市改正基準条例でも謳っているように、利用者の意向を無視する場合は違反となりますが、それが行政に伝わって来難い実態があります。
そこで今年度から国は、改正指定障害サービス運営基準に準拠し、一般就労を除く障害者に対してのみ、特定求職者雇用開発助成金を賃金には充ててはならないことにしました。
但し、法的根拠はありませんから、大いに問題があります。行政の立法府への侵害とも言え、三権分立はあったものではありません。
しかも、5人以上新規雇用した場合、離職率50%未満を対象にして来たのを、今年度からは25%未満と、ハードルを上げたのです。これは悪しきA型対策と言えましょう。ところが、年間5人未満の新規雇用しかないA型には効き目がありません。即ち4名A型で新規雇用し、翌年度は全員B型に移行させ、空いた穴を埋めるため、新たに4名を新規雇用しても、4名分の助成金が交付されるのです。
悪しきA型は、今後監査を厳しく行うことで排除しなければなりません。ただ、そのしわ寄せが、健全経営をしておられる他のA型に及んではならないのです。
大体、一般就労で挫折して中途退職した障害者や、発達障害等で対人関係がうまくいかない方の安定した雇用先としてA型が誕生した経緯があるのです。健常者雇用の企業でさえその収益確保で四苦八苦しているのに、障害者のみが生産に携わり、補助金なしで健全経営をせよということ自体に無理があると言えましょう。
そして、その能力を発揮できないまま、就労機会を奪うような国の施策には、到底納得できません。「国は障害者就労現場の実態が解っていない。机上の空論でしかない」というのが私の主張です。
そこで私は、昨年国に対し要望を行っています。①自立支援給付金は、一定割合の範囲内で最低賃金の確保に使用しても構わないように基準を改正する②特定求職者雇用開発助成金については、自立支援給付と重複している事業所は対象外とする-の2点です。
この内容を含め、私は呉市に対し、国に働きかける意志はないかと、先の一般質問で問い質しました。呉市としては、「これまでどおり障害者の就労確保に向け、市長会を通じて要望は続けて行く」との答弁でしたが、これでは具体性が全くありません。単なる美辞麗句に止まっていては、一歩たりとも前に進まないのです。地方分権一括法により、国と地方自治体は対等と位置付けられましたが、補助金や交付金の財布を握られている国には頭が上がらないのが、現状です。この様な忖度政治を打破するため、私は本年も市や国に対し、強くもの申して参る覚悟です。