街頭演説集

第125回 「呉市版生涯活躍のまち」構想

「呉市版生涯活躍のまち」が予想通り構想倒れに!

Facebook 2018.2.7

 一昨日は125回目の街頭演説。テーマは「呉市版生涯活躍のまち」構想です。
 これは「CCRC」と呼ばれ、アメリカ発祥の高齢者共同コミュニティのことです。安倍政権が、地方創生の一環として、有識者等による検討会議を設置したのは平成27年度。同年6月に日本創成会議が、首都圏の高齢者を地方都市に移住させる提言「東京圏高齢化危機回避戦略」を受けてのものでした。即ち、平成30年代後半に団塊の世代が後期高齢者になると、介護施設が首都圏で不足することを予想発表したことがきっかけです。
 前呉市長は、高齢化率日本一の呉市を長寿健康都市として位置付けていたことから、このCCRCに軽々に飛びつき、いち早く平成28年度予算に、500万円の調査費を計上したのです。この予算案に反対を表明したのは、呉市議会では私1人でした。反対理由いくつかあります。
 先ず高齢者を地方都市に移住させることは、介護施設への入居が前提であるし、住所地特例を活用し、その介護費負担は、首都圏自治体がみるにしても、移住された自治体の税収が増えることはなく、せいぜい介護や医療現場で雇用が増えることくらいでしょう。ましてや医師や看護師、介護福祉士等の人材不足を補えるとは限らない訳です。
 住所地特例が半永久的に続く保証はなく、いずれ移住先の介護費用を負担するようになる可能性があります。ましてや医療費は地元の後期高齢者医療保険の財政圧迫要因になるのではないかとの懸念も拭えません。
 次にコミュニティの場所が問題です。調査報告書では、「まちなか型」と「郊外型」とで2種類あることを提案しており、前者の活動拠点は、既存のサービス付き高齢者向け住宅が特に該当します。しかし、都会から移住して来られるのは在宅介護よりも寧ろ施設介護が中心となりましょうから、そもそも介護施設不足だから地方都市へ移住するのと、在宅介護の高齢者が殆どのサービス付き高齢者向け住宅とでは、その利用ニーズが異なります。28年度予算審議においても私は、「首都圏からの移住者のみではなく、元々呉市在住だった高齢者も含まざるを得ない」との答弁を引き出しました。
 また郊外型では、どこが拠点施設になるのか、噂ではグリーンピアせとうちが例示されたとの話がありますが、定かではありません。
 これらどちらをとっても、コミュニティー拠点への移住を誘導するためには、何らかの支援策が必要です。それには必ず財源が必要となるのは明白です。高齢者をサポートするコンシェルジュ派遣にも人件費が相当かかります。これをサービス付き高齢者向け住宅経営者が捻出できるはずもなく、結局は国税であろうと市税であろうと、血税が投入されるのは目に見えています。
 第三は、「生涯活躍のまち」と謳うからには、医療や介護漬けになってしまっては無意味になるということです。構想策定の前段で呉市がイメージを示したのは、それら高齢者が生涯学習のためまちづくりセンター等に出掛けたり、自治会活動に講じたり、ボランティア活動を行ったりすることで、元気を持続できるというのです。首都圏から移住して来る高齢者は介護施設入居対象者であったはずが、異郷の地でボランティアや自治会活動に携わるはずがありません。現実とかけ離れています。
 これらの理由から私は、「思いつきで不要な税金を投じるべきではない。構想倒れになることは最初から見えている」と強く批判したのです。
 このような経緯があって、昨年9月に平成28年度決算審査が行われました。そこで私は、呉市版生涯活躍のまち構想策定費がどのように使われたのか糺しました。結果的に予算500万円の内148万円の支出に止まった理由として、国庫補助を得るには地域再生法に基づく地域再生計画を策定しなければならないようになったということです。つまり、基本計画を策定するまでには行かず、頓挫したことが判明致しました。「そんなことは、最初から分かっていたことではないか」と私は追求しました。
 では、実績のあるNPOに随意発注したその成果を「何故議会に報告しないのか」と糺すと、「とても公表できるような熟度のある内容ではない」との答弁が返って来ました。結局構想倒れとなり、市民の血税を踏み直したことになります。当局としては議会に報告することなく、何もなかったように自動消滅させる算段だっと言われても仕方ないでしょう。しかも前市長肝いりの施策だったのが、先般の市長選ではマニフェストから外されていました。つまり、実現性に乏しいことを認めた格好です。
 そこで私は、構想をまとめた文書の公開を請求し、先日入手するに至ったのです。それを見て驚きました。肝心の構想部分が全て黒く塗り潰されていたのです。つまり非公開と同義です。公開された部分は高齢化社会の背景を記述した部分だけです。新市長は「隠し立てをしないこと」を基本方針の一つに挙げておられますが、就任当初から口先だけと言われても反論できないのではないでしょうか?公開することで、議会や市民にも考察する余地を与え、議論が深まる訳です。
 いずれにしても、本構想が基本計画策定を含め、その先に進むとは到底考えられません。官僚が前市長による有権者受けのいい思いつきに振り回された感は否めません。私は今後も本構想の動向を注視して参ります。
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