街頭演説集

第126回 豊島小学校跡地活用計画

豊島小学校跡地活用策は現実を無視した愚策だった!

Facebook 2018.2.14

 昨日は126回目の街頭演説。今回は、豊島小学校跡地活用計画について、その経緯と顛末を総括してみたいと思います。
先ず事の発端は、国が地方創生先行型交付金を予算化し、各市町に配分しようとしたことに遡ります。国は地方創生と銘打ち、この種のばらまきを繰り返して来ました。これを受け呉市は、平成26年度末に補正予算を編成し、これをそっくり27年度に繰り越しました。
 国が用意したメニューの一つに「廃校を活用した定住促進事業」がありました。そこで、25年度末をもって廃校となった豊島小学校を活用することで、既存の新規就魚者支援事業を一層推進することを思い立った訳です。
 即ち、過疎化した豊浜町を活性化する起爆剤として、他都市から新たに漁業を生業とする意欲をお持ちの方を研修の上で同町に受け入れる際のアパートにし、併せて地元住民との交流広場を造ろうとしたのです。確かに同校校舎は、平成4年度に築造され、2階に教室、1階に職員室や講堂があって、しかも吹き抜け構造になっているため、適してはいたと思います。
 国の交付金は全額補助されるという魅力もあって、使わねば損という考え方も手伝い、この調査費として300万円を予算計上したのです。
 この予算に反対したのは、またもや私1人でした。
 その第一の理由は、アパートは、民間の空き家が沢山あるため、公が整備する必要はないということです。予算委員会での答弁では、同町には不動産業者もなく、物件も皆無との理由を挙げられました。
 私の反論はこうです。過疎地の島に移住する人がいれば、空き家を物件化するでしょう。物件化するには改修費用が必要となりますので、投資回収リスクが高ければ、物件化する住民がいないのは当然です。ところが、島に移住し、特定の空き家に居住するとの担保があれば、投資するのです。実際、28年度から地域おこし協力隊員を1名受け入れましたが、物件は見つかっています。これは27年度中に募集し、特定の空き家に移住が内定したからにほかなりません。
 しかも、不動産業者がなくても、呉市には空き家バンク制度があるのです。同じ補正予算案にも、やはり地方創生交付金を財源として、島嶼部の空き家調査費が1,500万円計上されした。それを待てば、少し改修すれば入居可能な空き家が見つかるはずです。これでは1,500万円の調査費も意義が薄れようというものです。
 第二は、交流施設を新たに整備する必要は一切ないということです。同町には離れ小島の斎島を除いて7つのコミュニティ施設があり、しかも、まちづくりセンターが2箇所もあるのです。高齢化した過疎の町でハコ物が多過ぎ、稼働率も極めて低く、もてあまして来たのです。いくらでも地元住民との交流スペースはあります。
 しかも、第3次公共施設再配置計画では、これらコミュニティ施設をどうするのか29年度までに結論を出すとしているのです。更に翌27年度末に策定された公共施設等総合管理計画では、できるだけハコ物は整備しないとの大方針を打ち出しました。
 第三の理由として、呉市は平成19年度に策定された「学校統廃合後の跡地活用策について」では、「原則更地売却」を基本方針に謳っており、これとも大きく矛盾するのです。この狙いは、役割を終えた学校施設や敷地を売却することで、財源を確保し、財政健全化をなそうとするものです。
 第四は、基本計画策定のための調査費を国費で賄ったとしても、その後設計費や大規模改修費に加え、維持管理が半永久的に財政を圧迫するであろうということです。ましてや、アパートを経営するということは、家賃で投資分を回収するのが常道ですが、低額家賃にしなければ入居が困難であることから、結局は血税で補填することになるのは目に見えています。
 このことに対して当局は、「地元の住民団体等に経営を任せることを検討している」と、答弁しました。つまりその団体が家賃を収受して、その収入分を維持管理に回すという、指定管理を前提とした公設民営を想定していたようです。
 そうであれば、益々地元は受け入れないだろうと予言しました。何故なら、以前吾妻小学校が廃校になった際、その一部校舎を残して地元が利用したい旨の要望がありました。ところが、利用料収入をもって地元が維持管理しなければならないことが住民に解ったとたん、一気に頓挫した苦い経験が呉市にはあるのです。ましてや、吾妻小学校があった旧呉市中央部と違って、豊浜町を初めとする合併町は、行政に殆ど頼って来た歴史がありますから、そのような手法が受け入れられるとは到底考えられなかったのです。
 結局この予算は通り、27年度は、復建調査設計㈱に322万円でコンサル委託した上で、基本計画を策定へと動きました。それと並行して、折角の機会だから地元を盛り上げようと、豊浜町まちづくり協議会の下に豊浜小学校跡地活用プロジェクトチームを、行政から地元に働きかけて組織化したのでした。ここで出された意見を反映して基本計画をまとめようとしたのです。いわゆる官製地域協働と言われ、自発的、主体的に地元から起動したものとは異なります。しかも、その事務は全て市民センター職員と農林水産課職員が行っているのです。
 更にプロジェクトチームは三次市、世羅町、神石高原町の先進事例を視察して来られましたが、その旅費は、同じく地方創生交付金を原資とした補正予算を繰り越したシルバー漁師研修費300万円から捻出していたのです。つまり、豊島小学校跡地活用事業は、ハードである調査費とソフトである新規漁業者研修費とを合わせた600万円とみた方がよく、国へも、これらを一括した事業として交付金申請していたことが判明致しました。
 因み基本計画を見てみますと、当初の構想から膨らんでおり、『小学校を有効活用して「稼ぐまちづくり」』をスローガンに掲げ、新たな機能として、サイクリストへの対応や、ショートステイ(ゲストハウス)、体験学習、特産品販売が付加されました。
 問題はこの次の、運営に係る資金計画です。収入として、定住者の家賃が1室2万円の4室で年間96万円。ショートステイ1泊が3千円で、年間18万円。体験学習宿1泊が3千円で年間30万円。体験学習に係る収益で年間15万円。カフェやオフィステナント2室の使用料で年間48万円。特産品販売手数料で年間5千円。加えて寄付金を5千円としています。つまり合計208万円です。
 対して支出は、電気・水道・ガス代で100万円、消耗品・通信費で30万円、人件費等で78万円としており、合計やはり208万円です。
 ということは、空き室やテナントが埋まらないと赤字になるという訳です。しかもこれを地元住民団体に請け負ってもらおうという訳ですから、地元が一斉に引かれるのは、目に見えています。赤字になったら、行政が血税を使って補填するのは火を見るより明かです。
 実際27年度では、基本計画を策定したものの、肝心の引き受け手が定まらず、これらの予算は無駄になってしまいました。私の予言が見事的中したのです。
 前市長の思いつきの施策は、暗礁に乗り上げたのです。農林水産課は市長命令だから疑問を感じつつ事業を推進、資産経営課を初めとする他部署はおかしいと思いつつも、市長を忖度せざるを得ない裏事情だったことは容易に図り知れます。だからこそ、議会がその愚策を追求すべきだったのです。議会は市民の代表であり、執行部に血税を無駄に使わせてはならないからです。執行部の暴走を抑止する役割を担っているのが議会です。
 おまけに、プロジェクトに参画させられて振り回された地元住民も被害者と言えなくもありません。当初は島の活性化を目指し沸き立ったことでしょうが、現実は厳しかったのです。

 ところが、これで終わりかと思いきや、前市長は諦めませんでした。28年度予算に、再度豊島小学校活用に係る基本調査費200万円を計上したのです。勿論これに真っ向から反対したのは私1人でした。
 27年度繰り越し予算として調査費300万円を既に支出しているのに、何故再度調査費が必要なのか?もし順調に進んでいるなら、次は基本設計費のはずです。対する答弁は、運営主体をお願いしようとしている地元住民団体を説得することと併せ、それが無理だった場合、どのような運営方法が考えられるか、再度調査する必要があるとのことでした。
もし調査するにしても、私からすれば、予算を組む必要はさらさら無いと考える訳です。
 結局、この予算は、地元が運営主体となることを拒否したため、執行されなかったことが、この度ようやく判明しました。と申しますのも、昨年9月に開催された決算特別委員会で、私がこの点を追及したのですが、その時は未執行だったことの答弁を避けたのでした。執行部に不利なことは聴かれたことだけ答えるが、逆に有利なことや実績を誇示できる場合は、聴かれなかったことも答えるというのが、執行部の姿勢なのです。
 更に29年度予算には、ついにこの関連予算計上が見送られました。「この施策は失敗でした」とは誰も言いません。これが行政の態度です。失敗したことは隠し通して自然消滅を狙うのが行政と言われても仕方ないでしょう。
 結論として、この政策は完全に失敗し、なくなりました。私は一貫してこの愚策に反対を表明して参りましたが、私の言った通りになったというのが顛末なのです。管理職は市長の指示にイエスマンであるよりも、堂々と意見を言えるようにすべきです。前市長を含め、大いに反省してもらいたいものです。

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