不公平な提案型公募!高機能消防指令センター整備
Facebook 2018.9.28
これは去る呉市議会9月定例会で提案された議案で、新築予定の消防局新庁舎内に設置する、高機能消防指令センターのシステム整備に係る契約です。119番通報を初めとした様々な情報を一元管理し、消防車や救急車とシステムを通じて通信連結して、指令を無線でスムーズに行うもので、通信の司令塔の役割を果たします。高齢者等に配布する受信機に係る災害時要援護者緊急通報システムも含まれます。
因みに現在の通信指令センターは、呉市消防局庁舎内の講堂から、敷地内に新たに建物を建築した上で移転を図り、平成19年度に供用開始されました。この緊急通信指令システムは、メーカーの部品保守管理期間が10年程度となっており、その都度ハードウェアを更新する必要があります。ということで、平成32年度から消防局新庁舎建設に合わせ、稼働することになります。
ところが電波法の改正により、これまでの通信システムがアナログ波からデジタル波対応にすることが義務付けられ、平成24年度から27年度までかけて、送受信装置を全て改修しました。ということは、室内の指令系装置は、この度の発注後の平成32年度からの供用開始ですから、その後まだ5年間度使えることになります。その際、サーバー及び消防車や救急車約70台に積載しているパソコン等コンピュータ系装置も全て改修した訳ですが、これらの耐用年数は5年ですから、この度全て付け替えることになります。
つまり、指令系では既存装置を後5年間活用することができ、車両積載のコンピュータ系装置は新たに製造することが必要となります。
一方、現在のシステムは、この度の契約の相手方である㈱富士通ゼネラルです。既存装置を活用できるならば、特定随意契約を当初から締結するのが筋でしょう。地方自治法施行令第167条の2第6号の「同一請負人に施行させることが有利であると認められる場合」に該当するからです。民間だったら、誰でもそうするでしょう。
ところがこの度の発注方法は、公募型プロポーザルによる随意契約でした。これは諸事情で、既存装置を活用できる富士通ゼネラルが応募しなかった場合は、新たに指令系装置を製造する必要があり、既存装置のリユースができないことを意味し、その分価格が高くなる訳です。
実際、この度は日本電気㈱が手を挙げましたが、最初から有利だった富士通ゼネラルが総合得点で上回りました。しかも、予定価格4億5,200万円に対して格安となる3億4千万円を提案していました。25%も下がったのは、既存装置をリユースするから当然です。
では、全体の評価結果はどうだったか調べて見ますと、300点満点において、富士通ゼネラルの244.60点に対し、日本電気は222.08点だったことが判明しました。スタート時点から既存装置をリユースできる富士通ゼネラルが有利ですので、価格の評価項目90点満点を控除した上で、点数を比較してみました。
すると、富士通ゼネラルの156.60点に対し、日本電気は159.70点となり、日本電気が3.10点勝っていました。即ち履行能力、システム構成、システム機能の3項目において、大きくリードしていたのです。日本電気は価格競争において、最初から不利と知りつつも、余程自社が開発したシステムに自信があったのでしょう。
となりますと、諸般の事情で富士通ゼネラルが応募しなかったと仮定しますと、予定価格にかなり近い価格での契約となったことは明白です。実際、価格の評価点数では、富士通ゼネラルによる90点満点に近い88.00点に対し、日本電気は62.38点だったのです。
そもそも一般競争入札やプロポーザルの様に競争原理が作用する契約は、スタートラインで公平でなければなりません。発注者が公共団体であればなおさらです。この度の公募型プロポーザルにおける随意契約は、陸上100走に例えるなら、富士通ゼネラルが10mもスタートラインからフライングしていた訳で、このような不公平な手法は最初から避けるべきでした。他の応募者に対し失礼と言えましょう。しかも、富士通ゼネラルが応募せず、既存装置の有効活用さえできないリスクがあったことは否めません。
第二の問題点は、議案を審査するに当たっては、プロポーザルの結果情報が必要不可欠であるにも関わらず、それがが示されていないことです。
議案資料を見ますと、何社が応募したのか、誰が審査したのか、どの様な採点基準で、各応募者が各評価項目で何点を獲得したのか、全く不明です。これでは審査する議員において、判断するすべがありません。
過去本市においては、プロポーザルの場合、これらの情報開示の有無が、担当部署においてまちまちでした。随意契約は契約課に報告するのみですので、そのやり方については各部署に任されており、統一マニュアルがないのがその理由です。ましてや、この度は議案ですので、なおさら評価点数結果等の資料を添付するべきです。
ところで、消防局がこの度提案した消防局・西消防署庁舎建設に係る契約は、総合評価入札議案における初の成功例となりました。これも採点結果等の資料が、審査をする立場では絶対必要です。価格のみではなく、総合評価で契約の相手方が決まる場合は、それだけ決定過程や理由を明示し、透明化を図ることが当局の責務でありましょう。
ところが、これも議案資料に記述が皆無であったため、議会側から資料の追加要求があったことを受け、初めて議会に提示されたのです。
私は以前から、総合評価入札やプロポーザルの場合は、評価点数結果を公表するべく、統一マニュアル作成を契約課に進言して来ました。これを機に、着実な実行を迫りました。
結論として、この度の高機能通信指令センター整備においては、特定一者における随意契約でコンピュータ系装置のみを製造し、供用開始後5年後にシステムを再構築する際に初めて、公募型プロポーザルを実施すべきだったと考えます。その時になれば、指令系装置とコンピュータ系装置の更新時期が合致しているからにほかなりません。
市当局は、公平な競争、決定過程の透明化を徹底すべきです。