街頭演説集

第162回 農地の流動化促進

農地の流動化規制を撤廃し、遊休農地活用を!

Facebook 2018.10.29

 去る10月23日は、162回目の街頭演説。テーマは農地の流動化促進についてです。

 少子高齢化や若者のふるさと離れに伴い、農業の担い手不足が顕著になっています。呉市においても、農業振興地域では、農業に従事しているのは80代高齢者が目につくようになりました。このまま行けば10年後はどうなるのか、思いやられます。
 そして同時に進行しているのが、耕作放棄による遊休農地です。実際、我が家で耕作する人材が不在になったことで、知人に農地を貸し出し、そこから穫れた作物を年貢として納めてもらう光景が多々見られます。
 ところがこれには、農地法第3条に基づく農業委員会の許可が必要ですが、無許可案件が多いのが現実です。農業委員会が許可する場合の条件として、農地を購入したり、借り受けたりする側が、耕作地の下限面積をクリアする必要があります。この下限面積は、同法第3条第2項第5号で北海道が2ha、その他の都道府県が50aを原則としていますが、各都道府県が地域毎に別段面積を定めれば、それが下限面積となります。これは国の許可を必要としていました。
 これら農地の流動化規制は、農地面積が狭いと生業として成り立たないこと、既存農業者の生計圧迫を避ける意味で、農地法の根幹として長らく立ちはだかって来たのです。
 具体的には呉市の場合、安浦、豊浜、豊町(御手洗を除く)で30a、旧昭和村、旧郷原村、旧御手洗町では20a、その他旧市内等では10aと定められています。因みに合併前の安浦町や豊町では、法の原則通り50aでした。
 ということは、サラリーマンを定年退職して、遊休農地を借り受け、初めて耕作を行おうとする場合、旧市内であっても最低10aの農地でないと、許可されないということなのです。これは農業を生業としなくても、家庭的菜園で自給自足を行う場合でも同様です。
 つまり、現実は闇の貸し借りがかなりあるということになります。例えば田舎暮らしで自然教育を我が子に施したい若夫婦が、呉市にIターンして農地を借り受け、自然農法を営みつつ、収穫作物をインターネット販売しようとしても、下限面積をクリアできなければ、望みを叶えることが現実できないのです。

 一方、平成21年12月に農地法が改正施行され、それを受け農地法施行規則第17条が改正されて、各農業委員会が別段面積を自由に設定することが可能となりました。但し、同条第1項第2号において、別段面積単位をアール以上とすることとします。加えて第3号において、別段面積未満の耕作農業者数が農業者総数の4割以上とするという条件が付されています。これではやはりハードルが高いと言えましょう。
 ところが更に特例があって、政策的に必要とすると農業委員会が認めた場合は、この限りではないのです。これが合わせて新設された施行規則第17条第2項です。つまり特特例とも言えるこの条項を適用できれば、事実上、農地の流動化規制を撤廃することが可能となります。
 例えば、呉市は定住対策の一環として、平成28年度から移住希望者住宅取得支援事業を行っており、中古住宅を購入してUIJターンする場合の住宅取得費を1/2、50万円まで助成しています。これに中学生以下の子どもがいる場合は30万円加算、親世帯との近居であれば更に10万円加算、島嶼部への移住であれば更に10万円加算というように、手厚い制度を予算化しています。
 しかしながら、田舎暮らし促進のため農地付きという制度はありません。宅地に農地を付けて耕作することを条件に設定して、農業委員会が許可すれば、下限面積をクリアしない特例として登録することができます。私は、先ずはこの特例制度を活用した定住促進策を展開すべきだと考えています。
 また、総務省の制度である地域おこし協力隊は全額地方交付税に参入され、呉市も平成27年度から受け入れており、3年間は呉市の嘱託雇用として生活が保障されますが、4年目は独立して生計を立てなければなりません。全国的にも隊員の定住率は5割程度しかなく、定着してもらえなければ、「若者、よそ者、馬鹿者」に頼る地域おこしも一時力に終わってしまいます。
 そこで、隊員が簡単に農地を借り受けて少なくとも自給自足し、将来は生業に進めるような施策として、この別段面積特例制度の導入を検討すべきでしょう。
 実際、今月から広島県安芸太田町では、空き家バンク登録物件に付く農地に限り、別段面積を1aに緩和しました。同様に今月から広島県北広島町では、圃場整備された農地を除き、別段面積を僅か0.01aに設定したのです。つまり1㎡ですから、規制がないのと同義です。これは、特定の農地付き宅地という移住促進策を更に極限にまで進めて、農地の貸し借り、売買が農業委員会の許可を受けて、公式に堂々とできるということです。思い切った政策に打って出たものと、大いに感心させられました。
 昔と違って、耕作を放棄した遊休農地が増え続け、過疎化が一層進展する中、農地法の流動化規制は、過疎地の再生にとっては、却って足枷になっていることを知らねばなりません。そして商店街と同様、農協や市場を通じた流通から、インターネットによる無農薬作物の直販に変わりつつある現在、それを積極的に採用できる体制づくりが、地方創生の鍵を握っており、発想の大転換を推し進めるべきではないでしょうか。

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