街頭演説集

第164回 災害義援金と罹災証明の在り方

災害義援金の公平な分配は、罹災証明の在り方が鍵!

Facebook 2018.11.11

 去る11月5日は、164回目の街頭演説。テーマは災害義援金と罹災証明の在り方についてです。

 この度の西日本豪雨災害では、県を超え広域に亘って大きな被害が出ました。このため、被災者に届けられる災害義援金は、県単位で募ることとなりました。同じ県内で、市町毎に被災世帯当たりの義援金額に差が出ると不公平になるためです。即ち、各市町に集められた義援金は、一旦日本赤十字社各県支部に集約され、各市町の罹災証明に基づく被災状況を精査した上で、同支部と当該県で組織する配分委員会で、市町毎の配分金を決定するものです。
 因みに、赤十字社へ集約された義援金においては、手数料はゼロとなっており、全額が被災者に届けられる仕組みとなっています。
 この結果、被災状況が甚大だった広島県全体では約75億9千万円、岡山県では約96億7千万円集まりましたが、山口県では約3億3千万円、島根県では1億4千万円に止まりました。このため死者・行方不明者に対し、広島県の180万円に比べ、岡山県は100万円、山口県では38万円弱と、先ずここで不公平が生じました。ただし、これは今後の大きな課題であって、これを公平にするのは、義援金そのものに税金を投じていない関係上、難しいと思います。
 さて広島県では、10月12日に第2次配分額を決定しました。それによると、我が呉市が最も多い約17億9千万円が配分。8月に発表された第1次配分では、被災状況に関わらず、床上浸水世帯以上に一律5万円の配分でした。第2次配分は、この5万円を含んだ合計額となっています。
 広島県の算定基準では、1次、2次配分合計で、死者・行方不明者に対し180万円、重傷者に対し90万円です。住家被害においては、全壊180万円、大規模損壊・半壊90万円、一部損壊36万円、床上浸水18万円となりました。
 ここで問題が生じました。呉市や江田島市では、床上浸水の罹災証明はなく、全て一部損壊に含めました。床上浸水で罹災証明を発行した自治体では18万円しかもらえなくて、呉市や江田島市では同じ床上浸水状況であっても36万円もらえることとなります。逆に竹原市では、一部損壊であっても床上浸水で県に情報提供したため、36万円のところ、18万円しかもらえないという、不公平が生じました。但しこれは事務的ミスにしても、県基準では一部損壊と床上浸水を分けているのに対し、一部自治体では床上浸水がなく、全て一部損壊にしているのは、市町毎の配分額にも不公平が生じてしまうこととなります。

 そこで罹災証明の在り方を調べてみました。根拠法は災害対策基本法第90条の2で、各市町が罹災証明書をすみやかに発行するよう義務づけています。ということは、市町に裁量権があることになり、国が基準を定める法的根拠がないことが判明しました。
 とはいえ統一基準がなければ、災害義援金や被災者生活再建支援金は、罹災証明書の被災判定が支払い根拠になりますので、不公平が生じます。そこで国は昭和43年から、「災害の被害認定基準」や「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を定めて来ました。そして、内閣府等が平成25年に出した通達には、罹災証明に当たっては、「全壊、大規模半壊、半壊、半壊に至らないもの」の4段階に分けて行うとして、国がその基準を示していました。
 これでは、半壊までは統一基準であっても、半壊に至らないものは市町で格差が生じてしまう可能性が出て参ります。それが、この度の床上浸水を認定している自治体と、呉市の様に一部損壊に格上げして含めている自治体とが出現し、その結果、義援金額に市町で格差が生じてしまったのです。これが自治体単独で集めた、局所災害であればこれでもよいでしょうが、広域災害故に、このような矛盾が生じたのでした。
 つまり、災害対策基本法第90条の2を「政令で定めるところにより市町村が罹災証明を発行する」と改正し、その上で国が、半壊に至らないものの細分まで基準を定める施行規則を制定すれば、この様な不公平はなくなると、私が内閣府に訴えたところです。
 また、内閣府の被害認定基準では、半壊と全壊の間に大規模半壊があり、罹災証明で明確に分けるようにしています。ところが、広島県の義援金配分では、そもそも大規模半壊の枠がないのです。ということは、大規模半壊の認定を受けても半壊である90万円しか貰えません。
 これを広島県に問い合わせますと、消防庁の災害報告取扱要領に基づいており、問題ないと言います。これでは内閣府が何の為に大規模半壊の認定基準を作っているのか、整合性が取れていないことになります。つまり、床上浸水の分配枠を設定しているのも、この要領が基になっている訳です。これも内閣府と消防庁の上位組織である総務省が連携を図るべきでしょう。

 一方、今年3月の内閣府通達によれば、罹災証明を迅速に発行するために、簡易な調査方法を促しています。通常は、被災家屋の中を一軒一軒丁寧に検分するため、証明が降りるまでかなり時間を要していました。それでは、義援金の他に罹災証明が基となっている被災者生活再建支援金(国と県が折半支出)の交付にも影響が出て来るため、外観目視での1次判定で一旦証明書を交付することにしたのです。例えば床上浸水30cm以上だと、一部損壊とみなす訳です。
 ただこの問題点は、アバウト判定のため、被災者が不服申請をしなければ、これがそのまま最終証明になるということです。住民から見れば、先ず不服申請することはありませんから、申請したが故に、建築技師が現場に入って丁寧に調査した結果、被災状況が大きくなるケースは当然出て参ります。そうすると、不服申請をした方が有利になることが多々出て来るのです。
 また、被災件数の少ない自治体では、最初から建築技師による詳細な調査をするところもあり、これは自治体間で差があります。詳細調査をする自治体の方が、被災状況が大きくなる確率が高いので、ここでも罹災証明の判定結果において、自治体が違えば、判定に不公平が生じることになりかねません。
 加えて国の基準では、住家のみならず、自動車や家財等の動産や不動産の罹災証明を発行することを妨げてはいないので、これも自治体間で差ができます。因みに呉市はここまで行っておらず、損害保険の場合は、罹災証明がなくても、適用できるので問題はないとしています。
 そしてこの度は、庄原市と江田島市で、独自の義援金加算をしていました。義援金はあくまで寄付であって、税金を使いませんので、広島県義援金と市義援金と2種類を募っていたことになり、これは自治体間で不公平となりました。少なくて県内全自治体が、集まった義援金全てを日本赤十字広島県支部に上納すべきです。

 いずれに致しましても、呉市が多大な被災を受けたことで、罹災証明に基づく義援金の様々な仕組みと課題が見えて参りました。私は、呉市として、義援金配分の不公平の温床となっている災害対策基本法の改正を、P国に訴えるよう要請したところです。

タイトルとURLをコピーしました