野呂高原ロッジの職員退職手当が市民の血税から支出!
Facebook 2018.12.19
呉市は来年度から5年間に亘って、野呂高原ロッジをこれまでと同様、一般財団法人・野呂山観光開発公社に指定管理を依頼することになります。近隣に立地する野呂山ビジターセンター、野呂山レストハウス、川尻筆づくり資料館、野呂山セントラルロッジの4施設もセットです。予想通り公募の結果は、同法人1者の応募となりました。
その理由は、野呂山観光開発公社が最初から優位に立っていることが挙げられます。同公社は、瀬戸内海国立公園の野呂山一帯を一体的に管理し、便益施設である野呂高原ロッジを中心に川尻町における観光による活性化を目的に設立されたもので、呉市が全額出捐しています。このため、法人登記の所在地が野呂高原ロッジとなっていて、本社経費たる一般管理費が不要ということなのです。大和ミュージアムの指定管理を例に取りますと、本社採用非常勤職員労務費、出張交通費、諸経費、間接経費がそれに該当し、年間2,800万円としています。
ということは、他法人と比べ、それだけ経費的に有利となるのは明かです。しかも代表者がボランティア勤務ということにおいても、これに輪をかけています。
第二に退職手当引当金の問題があります。これは川尻町が呉市と合併する前は、公社職員の退職手当の引当は行っておらず、退職時に一般会計から一括して支給しておりました。これは本来理屈に合わない訳です。
そこで、合併後新たに採用した職員については、公社で引き当てておりますが、合併前に採用した2名の職員が合併後に退職した際、補助金という解り難い費目で合計587万円が一般会計から支出されました。即ち市民の血税です。同公社は、これまで旧川尻町や新呉市になって、継続的に野呂山関連施設の管理を受託しており、内部留保は合計約4千万円、直近の指定管理期間である平成26年度から4ヶ年においても720万円の留保があることが、この度私の質疑で判明しました。
であるなら、退職手当はそれを使うべきでしょう。5年前の指定管理提案時に、私がこのことを本会議場で追求した際当局は、「応募者が複数あった場合は、選定委員にその不公平を十分説明した上で、公平な審査を行ってもらう」と答弁しておられます。つまり、「不公平」な現実を公式に認められた訳です。その上で、「合併前から雇用している職員1名については、既存扱いとするのか、これまでの分を含めて指定管理料に含めるのか、今後検討する」と答弁されています。
あれから丁度契約期間の5年が満了に近づき、新たに指定管理を公募することになった訳ですが、この問題を殆ど検討して来なかったと言われても仕方がありません。合併前採用職員に係る引当金を過去の採用時にまで遡って経費に計上することは、公社の財務体質からも困難であるなら、せめて最後の1名の退職手当だけは、5年前の指摘を受けて、そこから遅らばせながらでも、他のプロパー職員同様、公社として引当をするべきだったのです。
この度、「引き当てる場合はその分経費が増えて赤字増額となるので、それを指定管理料に積まねばならなくなり、結果的に呉市の負担は変わらない」との答弁がありました。それは呉市側からの視点であって、応募する他の会社から見れば、大きな不利材料になる訳です。即ち、公募は公平性が原則なのです。ということは、100m走に例えるならば、スタートラインから公社が5mほどフライングしているのと同じ理屈です。しかも内部留保がある訳ですからなおさらです。
このように、指定管理を公募しておいて、特定の応募者のみ、一部の退職手当を税金から支払うのは、自作自演と言っても過言ではありません。不公平を可能な限り解消した上で公募に臨まねば、いつまで経っても応募者が1者しかない現状が続くことは目に見えています。
もう一つは、利用料金制度に係る指定管理公募の限界です。赤字経営施設であれば、その赤字分を補填する分しか指定管理料は支払われません。これでは応募者にとって全くうまみがない訳です。
例えば広島電鉄へバス事業を民間移譲した際は、赤字路線の穴埋めは2%利潤を付け、更には黒字路線では儲けを全て留保できる取り決めに致しました。大和ミュージアムは黒字経営ではありますが、それでも計画で計上した以上の収益を上げた場合、その半分は留保できるようにしています。つまり、インセンティブを付与したのです。
そこで、この度の指定管理公募要領作成に当たって、応募者に魅力を感じさせるようなインセンティブを付与する考え方はなかったのかということです。収支計画では損益ゼロとしても、「経営努力によって収益が出た分がそのままインセンティブになる」との答弁ですが、この度同時期に水道事業の一部施設の指定管理においては、指定管理候補企業は年間450万円程度の収益を計画に計上しているので、方針がばらばらなのです。
一方、野呂山頂には、県営の野呂山オートキャンプ場があり、市有である野呂山セントラルロッジに隣接しています。県として単独で指定管理者を公募してして来ましたが、いつも1者しが応募がなく、いずれも野呂山観光開発公社と指定管理協定を締結しています。
呉市が野呂山頂5施設を一括指定管理しているのは、何と言っても職員が兼務できるスケールメリットがあるからにほかなりません。つまり、主要施設の野呂高原ロッジに関わる職員が他施設も管理運営に関わっている訳です。となりますと必然的に、オートキャンプ場の指定管理者は呉市有施設の指定管理者が行うこととなるのは目に見えています。
以前は、野呂山頂にある県有施設の指定管理期間は5年間、市有施設のそれは4年間で、ちぐはぐとなっていました。それを私が指摘し、同じ5年間に合わせ、且つ開始年度と終了年度も一致させた訳です。
ということは、県営オートキャンプ場の指定管理の事務を呉市が県から受託し、市有5施設と一括して指定管理協定を締結するのが本筋なのですが、それも進捗が見えませんでした。同じ様なケースでは、県民の浜周辺施設があり、宿泊施設である輝きの館やテニスコートは県有施設、温泉施設であるやすらぎの館やコテージ等は市有施設です。これを今年度から、私の指摘により呉市が一括指定管理するようになったのです。
だいたいオートキャンプ場には管理棟がないため、それを隣接するセントラルロッジを県が利用しているのです。
ところで、野呂山観光開発公社の正規職員は19名で、これを呉市指定管理においては、会計を分離する際、人役を案分して人件費を計上しています。具体的には、高原ロッジが85%、セントラルロッジが10%、ビジターセンターとレストハウスが各2%、筆づくり資料館が1%です。セントラルロッジの案分比率が意外にも高いのは、県営オートキャンプ場の業務を兼務しているからと疑いたくもなります。
しかも結果的に、県営施設における指定管理業務も野呂山観光開発公社が担っているということは、その職員の退職手当の一部を呉市が負担していることになり、大問題です。
これらの不公平と、市民の血税が公社の退職手当や県肩代わり負担に繋がっている点を改めるべきです。その上で、県有施設をも呉市が一括指定管理することで、企業も応募し易くなるし、県有施設と市有施設の一体的活用が計画段階から可能になることで、応募者の創意工夫も期待され、以て競争原理が働き、利用者にとってサービス向上にも繋がることになると考えます。