街頭演説集

第171回 水道事業の指定管理

呉市水道施設の指定管理を経営権譲渡には繋げない!

Facebook 2018.12.30

 去る12月25日は、今年最後となる通算171回目の街頭演説。凍てつくような冷たさの中、マイクを持つ手が堪えました。テーマは、呉市水道施設の指定管理についてです。

 水道法により、水道事業は厚労大臣の認可を得て原則市町村が経営することになっています。平成13年の同法改正により、水道管理に係る技術上の業務を第三者へ委託することが可能となりました。加えて15年の地方自治法改正では、公の施設を第三者に指定管理者として管理させることが可能となりました。
 呉市上下水道局では、経営を安定させるため、アウトソーシング(民間委託等)を推進して来ました。検診・収納等を第一環境㈱に委託し、27年度からは、宮原浄水場の夜間管理業務を㈱水みらい広島に委託して今日に至っています。
 これらは全て業務委託です。これを更に民間企業の裁量が大きい指定管理にする議案を、去る12月定例会で可決しました。即ち、宮原浄水場の水道・工業用施設、本庄水源地、二河水源地(工業用水)、鍋崎配水池(工業用水)の5施設です。尚、宮原浄水場内にある広島県企業局の水道施設も、昭和49年度以降県から委託を受けているため、含まれています。
 この指定管理は、水道・工業用水道料金が指定管理者ではなく、呉市上下水道局に収受される使用料制であるため、去る12月6日に水道法の一部改正が成立したことによる水道事業民営化とは趣旨が異なります。これは、水道料金も管理会社に収受され、施設の所有と認可は市町村に与えたまま、経営権を金銭譲渡するコンセッション方式と呼ばれ、これとは違う訳です。先ず、この点を抑えておく必要があります。
 実際、施設の維持管理は、130万円超の費用がかかる場合は上下水道局が行いますし、指定管理外である、他の配水池や配水管の維持管理や更新、建設は全て上下水道局がこれまで通り担うことになるのです。

 では、指定管理者は誰になるのかと申しますと、夜間管理業務を委託していた㈱水みらい広島です。これは非公募により選定しました。
 この会社は資本金6千万円で、広島県企業局が35%、水・環境の総合事業会社水ing(スイング)㈱が65%出資して設立した第三セクターです。29年度末の従業員数は 147名、その内県からの職員派遣が21名、県・市OBが11名、115名がプロパー職員で構成されています。つまり、公共団体による水道事業経営ノウハウを民間企業にスムーズに継承させることが第三セクターの強みであって、非公募たる所以なのです。
 呉市も来年度から4名の上下水道局職員を退職派遣し、任務を全うした段階で、再度公務員として復帰することを想定しています。この公務員派遣には、法に基づき派遣先に際しては呉市上下水道局も出資する必要があり、現在の3%の株式を取得するため、313万円の補正予算も可決したところです。
 もう一つの強みは、去る7月の広域的で大規模災害が起こった場合の応援態勢が採り易いことが挙げられます。実際水みらい広島は、県内に6箇所の事業所を持っていますし、
水ingとしては、全国300箇所の事業拠点を有しており、いざとなったら応援へ駆け付けることが可能なのです。

 ところで、何故アウトソーシングを推進するのかといいますと、これまで水道事業は年間黒字を計上して来ましたが、少子高齢化による水需要の低迷、配水管を含めた施設の老朽化を迎え、管路の更新には耐震化も併せて実施する必要があり、資本的収支の悪化を余儀なくされます。このまま進むと収益的収支は、32年度に赤字に転落し、35年度には4億7千万円の累積赤字になると予想されます。
 これを回避するためには、料金値上げは避けて通れませんが、それをできるだけ抑制するために、アウトソーシングの推進が必要となります。
 例えば、来年度から水みらい広島へ退職派遣される上下水道局職員は、現在の給与を補償されますので、賞与を含め年平均830万円になります。方や水みらいのプロパー職員の平均給与は550万円となり、大きな格差があることが判明しました。交通局民間移譲の際は給与格差が4割ありましたので、やはりという感じです。
 また、上下水道局職員の今年度当初の職員数は186名で、来年度176名と10名削減となります。この内下水道事業会計職員が1名ですので、水道事業、工業用水道事業会計では9名の削減となる訳です。ところが、指定管理の人役は19名です。この内、これまで宮原浄水場夜間業務に携わっていた人役が7名ですので、これを控除しますと12名となります。つまり、職員9名を削減して、新たに指定管理する人役が12名に振り替わることになり、これが可能なのも人件費の格差があると睨みました。

 一方、指定管理者を非公募で決定するデメリットもない訳ではありません。広島企業局も先立って同社に指定管理を行わせていますが、収支計画策定においては、その手法がそのまま採用されるため、競争原理が働かない点です。
 例えば、呉市の観光施設の指定管理の場合は、収支計画は収支トントンとして策定し、その上で呉市が支払う指定管理料を決定しています。応募企業にとってうまみがあまりない訳です。ところが、この度の収支計画を見ますと、年間約450万円の収益を最初から計上することが許されました。これは既存の指定管理と大きな違いです。
 更に、大和ミュージアムの様に、経営努力の結果収支計画以上に黒字が出ますと、その半額を指定管理者納付金として呉市に納付する協定を締結していますが、今回の指定管理協定では、儲けた分は全額会社に留保される仕組みとなっています。これが公募であれば、自由な提案が応募の際にできますので、採点結果に反映されることとなります。
 呉市としては、県が設立した第三セクターであれば、県自体が1/3の出資率を超えているため、経営に意見が言えることを重視しています。つまり、企業の信頼性、公共の関わりの大きさを考慮した上で、非公募選定を選択したことになります。

 今後、更にアウトソーシングを推進して行くことが予想されますが、これ即ち指定管理の対象施設範囲が拡大して行くと同義です。最終的には、今問題視されている官民連携方式の終結点である、コンセッション方式の可能性が出て来る懸念があります。
 実は水道施設の指定管理は、これまで岐阜県高山市と広島県のみでした。これに呉市が市町村としては全国2番目の指定管理導入となるのです。高山市は、施設の改修や管路の建設を除き、全て指定管理に移行しました。コンセッション方式は今後の課題としておられます。
 フランスのパリでは、いち早く水道事業を民営化しましたが、料金が285%まで高騰したため、再公営化されました。イギリスでの民営化では、水質検査合格率が85%に低下したと言います。企業参入すると儲け主義に走り、老朽施設更新を怠ったり、生活インフラが脅かされたりする可能性を捨て切れません。
 ところが、本日12月30日に発効するTPPでは、一旦水道事業を民営化すると公営化に戻すことはできない条項が盛り込まれているとか・・・?このことはマスコミで報道されていないと思いますし、企業が国家を訴えることを容易にしたISDS条項と併せ、国民には知らされていません。
 この度の水道法一部改正は、あくまで事業認可された市町村の経営における選択肢を拡げる趣旨であって、市町村裁量に委ねられています。但し、経営難から安易にその選択に走ると取り返しのつかないことになりかねません。TPPにしても、この度の水道事業の規制緩和にしても、多国籍企業による世界支配の意図が透けて見える訳です。という意味から私は、この度の水道法改正には反対です。
 同法改正を踏まえ私は、「指定管理導入により、将来経営権譲渡の可能性があるのか?」と当局を質しました。これについては、「一切考えていない」との答弁を引き出したことで、平成32度に予想されている水道料金値上げを抑制する意味もあり、本議案に賛成したところです。

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