街頭演説集

第176回 安芸灘大橋早期無料化の実現性

安芸灘大橋の早期無料化は受益者負担と公平性を無視!

Facebook 2019.1.30

 去る1月28日は176回目の街頭演説。テーマは、安芸灘大橋早期無料化の実現性についてです。

 安芸灘大橋は、広島県が全額出捐する広島県道路公社が建設した県道橋です。安芸灘島民の方々にとっては生活道路とも言え、早期無料化が叫ばれています。実際、一昨年11月の呉市長選挙におきましても、4名中3名の候補者が同橋の早期無料化をマニフェストに掲げました。当選された現在の呉市長もその1人で、その後1年2ヶ月経った現在、どのような進捗状況になっているのでしょうか?
 県の担当者と話し合いの場を2回程度持ったことは聞いておりますが、その後全く進展はないように感じています。
 それもそのはず、この橋は、当時の下蒲刈町長のたっての要望もあって、早期開通を目指すために、道路公社で一気に建設した経緯があるのです。つまり、借金を財源に建設した訳です。それを最初から無料にすることは第2音戸大橋の様に可能ではありますが、それでは呉市との合併前の平成12年1月開通には至らず、大幅に遅れていたことは明白です。
 この橋の建設費は110億円で、県直轄事業であれば、県民の血税を使って予算化しますが、道路公社事業のため、借金をして一気に建設したのです。これらを30年で償還するため、後11年経てば無料化されます。償還財源は車両の通行料金という訳です。これは税金で返済するのではなく、その橋を享受される方々に負担をしてもらおうという受益者負担原則に基づいています。平成29年度末での残債は37億8千万円となっています。
 ということは、これを全て償還すれば無料になる理屈で、30年償還するために、逆算して通行料金を設定しているのです。

 とは言え、本当に11年後に無料になるのか、予想に比べ通行料金収入が落ち込んだらどうなるのかという疑問もあるでしょう。
 それは通行料金収入から人件費等通行料金徴収事務や利息を控除し、残りを償還準備金として当てると同時に、損失が出た場合の穴埋め用として損失補填引当金があるのです。これは最終年度の全額償還の際、不足分を補うための財源です。またそれまでの補修費にもこのお金が使われます。ということは、償還後に余剰が出れば出資元の県に返済し、その後の維持管理費は県が直接実施することになる訳です。
 これらの仕組みでお解りになったように、もし早期無料化しようとするなら、損失補填引当金の一部を償還財源に回すことが考えられます。ところが、これは既に実施しております。
 と申しますのも、県は平成24年1月から26年3月末まで、社会実験として、100回分の回数券割引率をこれまでの30%から57.1%に引き上げたのです。これにより通行車両が増えることに期待しましたが、100回分の回数券を利用する方は、島民が殆どですから、特に増えることがありませんでした。更に26年度からは、この優遇割引率を継続実施することに政策決定して今日に至っています。つまりこの財源は、損失補填引当金を2年間で22億円も注ぎ込んだことで成り立っているのです。
 通常は毎年4億円余りの通行料金収入があったのを、社会実験以降は3億円程度に落ち込んでいます。それでも後11年後に債務償還できるのは、この損失補填引当金のお陰でもあります。
 となれば、これ以上この引当金を注ぎ込むとなりますと、台風や地震対策での修繕費が賄えないことに成りかねません。

 結論を申しましょう。県民の血税を財源に一気に予算化して償還すれば、無料になるということです。
 実は、昭和36年に開通した音戸大橋は、やはり30年償還でしたが、僅か13年後に無料化されました。私はこれまで、予想以上の通行量だったため早く償還できたと思っておりましたが、そうではないことがこの度判明致しました。当時県が政策的に一気に公社の償還分を肩代わりしたというのです。政治的判断が働いたのは容易に予想されますが、当時は当時は広島県道路公社ではなく日本道路公団が建設したもので、他に例がありませんでした。だからこの様なウルトラCができたのでしょう。
 ところが、今回は話が違います。同様に県公社が建設した橋や道路には、尾道大橋と広島熊野道路がありますが、これらは各々30年償還を地道に行った結果、前者は平成24年度に完済し無料化、後者は後1年後に完済予定となり、無料化されるのです。ですから、安芸灘大橋のみにウルトラCを適用すると、甚だ不公平になり、尾道大橋や広島熊野道路を常時通行された方や県民が黙ってはいないでしょう。橋と無関係の県民の血税が使われるからに他なりません。
 しかも尾道大橋や広島熊野道路の回数券割引率は20%です。それに対して安芸灘大橋は30%と当初から優遇されていました。その上で呉市が更に独自の上乗せ割引をしていたのです。それが平成24年1月以降は57.1%に恒常的に引き上げられたのですから、県や市としても、かなり島民に寄り添った優遇施策を展開して来たと言えましょう。

 一方110億円の債務の内、50%の55億円が国からの無利子融資、15%の16億5千万円が地方公共団体金融機構からの低利融資、35%の38億5千万円が県の出資金です。これらをトータルで30年償還ということですが、実は、国と金融機構の融資の償還期間は20年だったことがこの度判明致しました。つまり、機構の利子を含めて来年1月で完済することになります。
 ということは、残り10年で広島県の出資金を返済することになるというのです。つまり、これを県が棒引きにすれば、理論上は新元号2年1月から無料化することは可能となります。但し、県は到底その考えはないようですし、それを政治的圧力に屈して断行すれば、受益者負担原則を無視し、他の有料道路と著しく公平性を欠く愚策と言えましょう。
 政治は公平性が原則です。それを市長が、マニフェスト通り選挙目的のために早期無料化を実現しようとすれば、県の橋に対し、市民の血税を注ぎ込めば理論上は可能です。しかし呉市は5年間で100億円の収支不足が予想され、おまけに西日本災害復旧で320億円以上の巨額な費用が必要となっており、その2/3を国が支出するにしても、財政は火の車です。ましてや、県公社の借金を呉市民の血税で返済するとはもってのほかです。勿論あってはならないことです。
 来たる4月に挙行される県市議選でも、安芸灘大橋早期無料化という安易なマニフェストが散見される中、県市民の皆様におかれましては、冷静にご判断頂きますようお願い申し上げます。政治は正直でなければならず、有権者を愚弄しては決してならないのです。

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