街頭演説集

第187回 JR呉線複線化の検証

挫折した市長マニフェスト「JR呉線複線化」

Facebook 2019.5.10

 去る5月7日は史上初となる10連休ゴールデンウィークの明け初日。クールビズ・ノーネクタイも相まって、通算187回目を数えました。

 さて、テーマはJR呉線複線化です。前市長が初当選時から選挙マニフェストの中心に掲げていたこの施策。最近殆ど聞くことはありませんが、一体どうなったのでしょうか?
 元々この路線は旧海軍が複線化を計画し、その用地は既に買収していました。戦後国鉄がそれを引き継いだ訳です。つまり、JR西日本がその気とお金さえあれば、土地は確保されているのですから、理論上いつでも着手が可能なのです。
 そこで前々市長の時、平成6年度にJR複線化の調査費を予算計上。同年9月から調査を開始し、翌年2月に報告書をまとめました。それによると、広島駅から呉駅までの間を完全複線化すると総事業費が260億円もかかると試算されたのです。しかもJRは資金を一切出さないため、国庫補助も見込みがありません。以前ポートピア駅を新設する際は、呉市が全額予算化し、これをJR西日本に寄付したいきさつがあるのです。
 ということは、複線化に係る事業費を沿線都市、即ち呉市のほかに広島市、海田町、坂町が案分拠出することになり、到底費用対効果が見込めないとして、代案が提出されました。それが部分複線化計画です。即ち水尻駅、かるが浜駅、川原石駅3駅のホーム両サイドに限って複線化するというものです。これを行き違い新駅と呼びます。こうすれば、鈍行たる普通列車がそれらの駅に待機停車している間、後から発車した急行や快速列車が別の線路を通って追い越す仕組みです。これにより完全複線化に近い効果を出せることで、その案が採用されました。
 これにより、総事業費は22億円で済ませることができました。主に呉市が拠出し、効果は快速列車が走り、広島~呉駅間をこれまでの55分から最速30分で運行することが可能となったのです。但し、川原石駅だけは複線化用地を確保するため、西へ500m程度移転しました。この事業が完成したのは平成10年度です。事業着手から5年近くもかかりました。

 ところが、その後平成17年度に市長選があり、これに初当選された前市長がJR呉線複線化をマニフェストの中心に据えたものですから、完全複線化構想が復活したのです。彼は、運輸省鉄道局に勤務した経験から、この問題のプロとも言え、当時の現職市長に対するアンチテーゼを明確にする必要性もあって、この施策を訴えたものと推察されます。
 そのため、当選して翌年度と翌々年度に調査費を各々1千万円ずつ組んだのです。既に前政権の時にこの問題は類似効果を出す部分複線化で終止符を打ったはずだったにも関わらず、時計の針を逆戻ししたのです。これに対して疑問点を公式にぶつけたのは私1人でした。諮問機関には沿線市町の代表者やJRを初めとする関係機関の代表が委員に就任されましたが、調査費や会議費は他の市町が拠出することはなく、全て呉市丸抱えだったのです。つまり他の市町としては、実現に疑問を感じながらも、経費を支出しなくていいのなら、お付き合いとしてお客さんで参加されていた節が窺えます。
 結局、この構想は完全に座礁に乗り上げ、2回目の当選を目指す選挙から市長は、マニフェストからいつの間にか削除されたのです。即ち、2千万円の血税はどぶに捨てた格好となり、私の指摘が的中したのです。
 当然議会からも、市長マニフェスト検証の必要性から「JR複線化はどうなったのか」との質問が出されました。これに対し市長は、「初出馬前では、余りにも情報が不足していたので、致し方なかった」と正直に吐露されました。即ち本会議場で公式に失敗を認めたのです。結局市長選挙でのアンチテーゼを無理に掲げてしまい当選すると、後に引けなくなるのです。
 ところが、平成29年度に策定された、向こう20年間を見据えた呉市都市計画マスタープランには、JR複線化が記述されてしまったのです。市民を代表する委員からは、「実現性の見込めない事業は削除するべきではないか?」との意見が出されました。しかし当時の座長は、事務局、いわゆる呉市執行部の顔色を窺い、この問題について委員間討議を促すことなく、事務局に言い訳の説明をさせたまま、貴重な意見を握り潰してしまったのです。事務局は市長の指示で担当部署としての役割を与えられていますので、市長の顔に泥を塗ることができない事情あり、結局市長を忖度したものと推察されます。

 これと同様のことが一昨年の市長選挙でも見受けられました。呉駅周辺地域総合開発をマニフェストの中心に据えた候補が現職を破って当選を果たされたことで、昨年度300万円に続き、今年度1,500万円の調査費を予算計上したのです。
 今年度は、呉駅周辺地域総合開発懇談会の意見を踏まえ計画づくりに着手しますが、机上の空論が多く、結局は計画倒れ、破綻するのではないかとみています。しかも市長は去る3月定例会の予算総体質問に対し、「平成34年度に事業着手したい」との見通しを答弁し、議会に配布された参考資料にもその旨が記載されておらず、担当部署を慌てさせました。
 後に引けなくなった事業が暴走するのを食い止めるのが、市民の付託を受けた議員の責務であると痛切に感じている次第です。

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