街頭演説集

第193回 呉駅周辺総合開発

呉駅周辺総合開発提言には財政負担の試算が抜けていた!

Facebook 2019.6.21

 去る6月17日は、193回目の街頭演説。テーマは、呉駅周辺地域総合開発に係る提言書についてです。

 市長は、自身の選挙戦マニフェストである呉駅周辺地域総合開発を成し遂げるために、昨年度2千万円、今年度は自動運転実証実験を含め2,500万円の調査費を予算計上致しました。
 昨年度は、4名の専門家の内3名を東京から招き、呉駅周辺地域総合開発懇談会を起ち上げ、4回の会議を開催しました。その結果、去る3月27日の最終会議において、提言書の提出を受けたことが、去る6月13日の呉市議会産業建設委員会で行政報告されたのです。これらが既に新聞にすっぱ抜かれ、市民は既に計画が決まったものと錯覚していますが、これはあくまで提案であって、今年度、それを基に基本計画を策定するため、実はまだ何も決定していないのです。

 さて、提言の主な内容で先ず驚かされたのは、呉駅前広場を、そごう跡地の底地の一部を活用して拡張するだけではなく、2階部分のデッキを全面に構築した二層構造にするというものです。つまり、一層部の広場はバスやタクシーに加え一般車両の乗り入れ、2階デッキは市民の徒歩移動や憩いの空間に加え、自動運転小型バスが走り、店舗を誘致し、賑わいを創出するというのです。
 しかもそのデッキは、国道を渡って今西通りの両サイドまで続きます。これは全て市民の税金で建設することになり、そのイニシャルコストとランニングコストは膨大なものになるのは、火を見るより明らかです。
 加えて、呉駅周辺を防災の拠点に位置付けるため、その二層部分のデッキ全体が、避難スペースになるというのです。災害時には交通の拠点として駅前は重要であって、そこに避難する人々が集結すると混雑を極めるので、不適格ではないかと思えてなりません。
 おまけに、そごうの低層部分を公共施設としての災害用備蓄倉庫を配置。民間主導で、全面売却するとしていたそごう跡地の再々開発は公共主導となり、これにも新たな税金の持ち出しが生じます。公共施設等総合管理計画では、箱物は令和22年度までに総床面積を3割縮減するという目標に逆行するものです。
 では、自動運転バスはどこから2階デッキに乗り上げるのかと申しますと、以前は駅南ロータリーから橋上駅を建設し、その中を通る案が出ておりましたが、この度の提言では、呉駅西駐場を改修して導線道路を建設するとのことです。いずれにしても、大きな財政負担となります。
 しかも、広域間輸送バスの発着点にするとのことですが、赤字経営は必定で、その穴埋めは血税投入することになります。過去の呉市交通局や、それを引き継いだ広電バス、2社共同運行による呉エアポートバス全てに税金補填しているのを見ればお解りでしょう。これが毎年度半永久的に継続するのです。

 ところで、計画策定段階では、財源の裏付けは避けては通れません。いくら理想を掲げても、先立つものがなければ机上の空論でしかないからです。
 例えば平成6年に調査を開始したJR呉線複線化では、同年度末に報告書をまとめましたが、完全複線化にすると260億円かかり、部分複線化だと22億円でそれに近い効果を引き出せると、財政試算を致しました。それを受け計画策定時は後者を選択したのです。
 つまり、この度の調査費を活用した懇談会の提言には、財政試算が完全に抜け落ちていたのです。このような基本的なことが無視され、ただ希望的観測で、しかも大都会の論理を持ち出した懇談会の提言は穴だらけなのです。
 そもそも、この度の懇談会の様な市長諮問機関は市長が選任し、市長が報酬を支払うため、市長のイエスマンを委員に任命し、市長を忖度し、市長の意向に沿った形で答申や提言をまとめるのが常です。これは国政でも同様で、諮問・答申は為政者のアリバイづくりという色彩が濃いのです。
 事務局たる市職員も、財政の裏付けがない理想像を提言され困惑しているのが目に浮かびます。それでもこれをここまで引きずって来たのは、市職員も市長に従うことが出世の道であり、悲しいかな、これが公務員の性なのです。
 更には、これらの提言をイメージした巨大絵画パネル5枚を旧そごう壁面に掲示しました。議会に報告するより先にです。計画になっていない単なる提言に基づくイメージ図を公にしたことも問題ですが、その不確定内容を、予算を使って製作したことも問題です。市民は、そのように決まったのだと思ってしまい、大きな誤解を招く元となってしまいました。

 一方、計画をより実現性の高いものにするには、権利者との交渉に係っています。机上の空論で勝手にまちづくりの絵を描いたとしても、相手があることであって、そこに合意が取れなければ、計画は正に絵に描いた餅になってしまうからです。総合開発の検討に入ることを、JRや農協、そごう権利者に合意は取っていたにしても、総論賛成、各論反対になることはこの世の常です。
 過去呉中通商店街の活性化計画策定段階で、銀座デパート跡地とサン劇跡地に再開発ビルを建築することが検討されました。それには中心市街地活性化法により国や県市の公的負担が約束されるものの、地権者の自己負担の全員同意が取れず、挫折した苦い経験があるのです。
 そごう呉店でさえ、平成25年1月に閉店して以来、既に6年半が経過しましたが、9者の権利者の内、3者に集約することは決まったものの、未だ1者が判をついていない状況が続いているのです。
 今年度予算の主要事業説明書を見ますと、今年度に計画策定した後は、令和2年度から5年度にかけて4年間は事業実施に向けた関係者との調整を行うと、スケジュール表で示していました。それだけ、権利者の同意を得ることは難しいと解った上で、役人がその資料を作成したのでした。
 ところが、今年2月の予算総体質問で、市長が「令和4年度には事業着手したい」と希望的観測を勝手に答弁したものですから、担当部署は大慌てです。
 それを忖度し、この度の行政報告では、令和元年度に基本計画策定と同時に権利者調整を並行して行い、2年度から3年度にかけてに事業者を選定し、事業計画策定、基本設計、実施設計を実施し、4年度に着工するとのスケジュール表に作り直さざるを得ませんでした。
 このように無理をしたものですから、ほころびが出ます。私は、「権利者調整が1年でできることは到底あり得ない」と、マニフェストの矛盾をスケジュールの観点からも追求しました。

 結局、学者らの提言書は、財政の裏付けが全くなされてなく、しかも権利者が簡単に合意するという、非常に甘い見通しに基づいたものであることが判明致しました。
 今年度はこの提言書を基に、いよいよ基本計画を策定するということです。どのような現実に即した計画を役人が策定するのか、大いに見物です。提言書に忠実になればなるほど、非現実的な計画になり、結局は税金の無駄遣いとなることを私は危惧しているのです。

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