街頭演説集

第200回 交通局民営化と優待運賃制

交通局民営化の経緯を踏まえた優待運賃制度改革を!

Facebook 2019.9.1

 去る8月26日は、記念すべき200回目の街頭演説。お揃いのイメージカラーで8名のバックサポートがつきました。テーマは交通局民営化と優待運賃制度についてです。

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 私は、この6月に議員在職20年表彰を全国市議会議長会から受賞しました。一度落選していますので、初当選は24年前の平成7年です。議員になって初の一般質問テーマがその年9月定例会での、呉市交通局民営化でした。当時は誰も相手にしようとしませんでしたが、その後16年後の平成24年度に民営化が成就したのです。この間、交通局民営化を正面切って訴える呉市議会議員は私だけでした。

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 交通局は昭和28年度に公営企業体になって以降、20年間連続赤字でした。このため昭和48年度から法再建団体になり、自治省の管轄化に下りました。即ち、15年間で健全経営に戻す交通事業再建計画の策定を余儀なくされたのです。これは民事再生、倒産と同義です。
 当時の累積欠損金13億1,700万円を解消するために、翌昭和49年度から呉市が導入したのが、優待運賃制度だったのです。これは68歳以上の高齢者及び、中重度の心身障害者手帳所持者は運賃を免除する内容でした。その分を市民の血税で補填することで、交通局再建に寄与させようとしたのです。ということは、交通局再建という名の、高齢者等優遇施策であって、市長の選挙対策でもありました。当時公営バスを運行していた他都市も、同種の施策を導入しつつありましたから、この優遇策を交通局再建に利用したという訳です。
 計画通り一旦再建できた理由は、優待運賃制度による穴埋め分より大きな金額を血税で毎年度補填し続けたことにあります。そのキーワードは「どんぶり勘定」でした。高齢者がどの程度の割合で乗車しているか、アルバイトを路線毎に乗車させ、そのサンプルを使って高齢者乗車率を予想します。一旦乗車率を割り出したら、それを適用し続けたのです。当時の高齢化率は18%でしたから、毎年度進捗する高齢化率を適度に上乗せして、血税投入の根拠としました。
 ということは、実際と乖離している乗車率の下に算出したより、高額な優待制度負担金を補填し続けることで再建を果たしたのです。

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 交通局は経営再建のため再建債を発行し、昭和62年に完済しましたが、平成3年度から再び単年度赤字に転落しました。その最たる理由は人件費です。民間経営のバス運転士に比べ、交通局バス運転士の給与が4割高かったことによります。加えて人口減少とモータリゼーションの波に押され、運賃収入が毎年度減り続けたことも大きな要因でした。
 私は交通事業に係る委員会等で、人件費格差に加え、「血税による優待負担金が本来の負担額以上に投入されている疑いがある」と何度も指摘しました。しかしながら当局は、「そのようなことはない」との虚偽的答弁を繰り返して来たのです。
 ところが、いよいよ民営化が実現する段になって、この答弁の矛盾が露呈される結果となったのです。民間事業者に経営権を移譲することが固まると、大きな問題点が浮上しました。それは、優待負担金を民間事業者に交付することになることです。これまでは呉市が呉市交通局に交付していたため、公共団体の会計システム内の問題で片付けられたのが、今度ばかりはそうはいきません。優待負担金を正確に算出する必要が急遽出て来ました。
 そこで、当時民営化を前提にスタートしたICカード「PASPY」で、高齢者が乗車した区間をコンピュータが記録し、正確な差額計算ができるようになったことで、民営化1年前の平成23年度から交通局への優待負担額の算出方法を変更したのです。

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 因みに優待制度は、平成8年度から適用年齢を69歳から70歳以上に変更し、近隣町と合併した平成17年度からは無料ではなく、100円負担のワンコイン制度となっていました。それでも高齢化率の上昇と、倉橋町のような遠方からの利用も優待制度の適用区間に拡大されたことで、当時、心身障害者優待も含め毎年度約7億円の血税補填を余儀なくされていたのです。
 それが平成23年度からは、年間約3億5千万円と半減したのです。このことで、私が過去指摘し続けて来た根拠なき血税負担の誤りが実証されたのです。

 一方、優待制度の副産物として、公共施設の無料化がありました。当時優待乗車証を提示すれば、美術館、入船山記念館、温泉プール等の入館料を無料にしたのです。高齢者のバス運賃は、平成17年度からワンコインにしたのですから、その副産物としての公共施設入館料も合わせてワンコインにするのが理屈です。しかし、同じ年度にオープンした大和ミュージアムまで優待者無料にしてしまいました。
 因みに大和ミュージアム入館者は年間100万人と言われていますが、呉市内学校に在籍する児童生徒の無料化も合わせ、約4割近くが無料入館となっています。
 この優待制度は大きな矛盾をはらんでいることを、ご理解頂きたいと思います。

 そこで私は、優待制度改革の方向性として、私案を提唱しています。
 高齢者の乗車運賃を本来運賃の半額、即ち子ども料金とするのです。現在広電バスで呉市内での適用は倉橋の桂浜から呉駅まで乗車すれば900円程度、蒲刈の大浦からでは千円程度かかっています。これが悉く100円で済むのが現在の「いきいきポス」ですから、差額は、血税で呉市が広電に負担金支出しているのです。
 これが半額になれば、450円とか500円の自己負担となりますので、その分、税金からの持ち出しが減じることとなります。つまり受益者負担原則に少しでも近づくことになります。
 しかも子ども料金であれば、コンピュータシステムの抜本改定は不要です。加えて最低運賃は160円ですので、その場合は半額の80円ではなく、最低負担の100円とするのです。
 こうしておいてから、公共施設入館料も子ども料金に合わせます。高齢者の自己負担を少しでも増やすことは、有権者の反発を招くことは必定ですので、政治家は自身の選挙を考え、沈黙したままです。しかし、結局はその穴埋めは有権者の血税で行うことになり、自分達に跳ね返って来ていることを有権者は知らねばなりません。
 以前調査した際、高齢者の平均乗車運賃は、230円ということでしたから、半額負担となりますと、単純に1人平均120円程度のご負担となりましょう。つまり、100円から20円の増額負担をお願いすることになります。
 もう一つのメリットは、自己負担額が増すことで、短区間は徒歩に変更するケースも出て来て、結果筋力向上、健康増進に寄与することです。筋力向上は認知症予防にもなり、高齢化率は上昇の一途を辿り、現在34%ですから、医療費や介護サービス費の抑制に少しでも繋がるものとみています。
 但し、そのことで高齢者の乗車率が減り、優待負担を含めた乗車運賃収入が広電にとって減ずれば、結局は赤字補填分の経営支援補助金を増額することになる可能性もあります。これまで年額3億5千万円程度、血税から広電に支出して来た経緯があるのです。
 しかしながら、受益者負担原則を貫き、高齢者の健康増進も考えると、総合的に優待制度改革は避けて通れないというのが私の譲れない考えなのです。市民の皆様も是非このような諸事情を拝察の上、ご理解を賜りますよう衷心よりお願い申し上げる次第です。

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