街頭演説集

第212回 老人集会所指定管理の問題点

欺瞞に満ちた老人集会所指定管理の抜本改革案を提唱!

Facebook 2019.11.25

 去る11月18日は212回目の街頭演説。テーマは老人集会所指定管理の問題点についてです。

 呉市は市内全38ヶ所ある老人集会所を、5年に一度一括で指定管理協定を締結しています。指定管理というのは、管理委託と同義で、経費節減の観点から、地域の縁故団体である各地区福祉協議会に非公募で受けてもらい、同議案の議決を得て来ました。いよいよ来年度から5カ年の指定管理を行うため、来る12月定例会に指定管理議案が一括提案される予定です。
 先ず、何故経費が節減できるかと申しますと、利用頻度や建物の古さ等に関係なく、1ヶ月一律僅か6千円、年間72,000円で済ませて来たからです。これが消費税が8%になった平成26年度から年間74,056円に、消費税が10%になった来年度からは年間75,428円になります。

 第一の問題点は、これらの指定管理料は地元の管理人にほぼ全額が支払われることです。それは部屋貸しの日程管理、鍵の受け渡し、光熱水費の支払い、清掃、洗濯、トイレットペーパー補給、小規模修繕に係る管理人報酬です。かなり身辺が拘束されますので、当然と対価と言えましょう。月額6千円余りでは寧ろ安過ぎるかも知れません。
 上記の内、光熱水費やトイレットペーパー補給、小規模修繕には人件費とは別途費用がかかります。これを捻出するためには、貸し室利用者から使用料と徴収せざるを得ません。ところが、呉市老人集会所等条例には使用料規程がなく、本来は無料で使用できることとなっています。つまり、どこの地区社会福祉協議会も使用料規程を定めて使用料と徴収しているため、条例違反を呉市は黙認して来たし、寧ろ使用料規程を作って不足分を指定管理者が補うことを指導して来た節がが覗えるのです。
 これをこれまで「損耗料」という言い回しで市当局は逃れて来たのです。しかし国税庁によりますと、例え損耗料であっても、時間貸し規程を設けて料金徴収をすればその結果経営が赤字になるならないに関係なく、収益事業の「席貸業」に該当するというのです。因みに法的根拠は、法人税法施行令第5条です。
 収益事業となれば、地区社会福祉協議会は法人税の申告義務が生じます。赤字や収支トントン、若しくは8%程度までの黒字であれば、法人税は課税されませんが、翌年度に法人市民税均等割5万円、法人県民税均等割2万円、広島県環境税千円と合計71,000円が課税されます。
 損耗料徴収は席貸業にはならないと当局は逃げて来ましたが、それは間違いなのです。また、百歩譲って赤字だから席貸業にならないと固執したとしても、指定管理受託そのものが収益事業の「請負業」に該当しますので、どのみち税務申告からは逃れようがないのです。

 第二は、呉市は利用料金は条例上徴収できないので、議案資料の収支計画書では「光熱水費使用料」と記載予定としていますが、老人集会所に稼働率に格差があり、赤字、黒字と地区社会福祉協議会によって異なるという不公平です。
 例えば合併町には、老人集会所とは別に当時の町が建設した字単位のコミュニティ施設があることや人口が少ないため、稼働率が低い訳です。呉市中央部にでも高地部は低地部に比べて稼働率が低いので、地元自治会や老人クラブが利用する場合も使用料を徴収せざるを得ません。ところが稼働率が高く、収支に余裕がある老人集会所では、地元の公共的団体が会議や総会に利用する場合は、使用料が免除されています。
 また、黒字分の一部を管理人の報酬に充てている地区もあり、同じ管理人でも年間7万5千円の人と37万5千円とでは大きな格差があるのです。
 しかも、この度の調査で判明したことは、赤字経営の集会所の場合、指定管理者の一般会計や、地元単位自治会、更には老人クラブが赤字を補填している施設が、平成29年度で17施設、30年度では16施設もありました。議案資料の各地区社会福祉協議会が提出予定の収支計画書では、他団体からの繰入金を明記させず、その他の収入の「雑入」として、その正体が分らないよう巧妙に議会を欺こうとしています。
 そもそも地区社会福祉協議会の一部では、指定管理に係る黒字を内部留保している訳で、光熱水費使用料や損耗料では到底説明がつきません。
 これらは指定管理の根底が崩れていることを意味します。即ち、指定管理業務で赤字になる場合は、その差額を税金で補填するのが当然です。例えば野呂高原ロッジでは3千万円程度、呉ポートピアパークでは6千万円余りを1年間で補填しているのです。あの年間100万人も来場する大和ミュージアムでさえ補填しており、これらの補填額のことを「指定管理料」と呼びます。つまり、この赤字補填がなければ企業は手を挙げない訳です。勿論インセンティブとして、粗利も指定管理料には追加されています。
 これを非公募で、地域の縁故団体に指定管理を極めて一律安価に請け負わせ、加えて赤字経営にそっぽを向けて来た呉市の姿勢は受け入れられません。こんなことでは、指定管理を受諾しない地区社会福祉協議会が今度出て来ないとも限りません。

 そこで私は、これらの抜本改革案を提唱しています。
 先ず第一は、老人集会所等条例を改正して、使用料規程を設定し、それを指定管理者の売り上げにできる利用料金制度を導入することです。条例上では、その際の最高額を記載しておけば、後は各指定管理者がその額の範囲内で、利用実態に合わせて設定すればよいでしょう。これなら、地区社会福祉協議会は堂々と使用料を徴収できます。
 次に、公共的団体が指定管理等で収益事業をせざるを得ない場合、法人県市民税の均等割を免除する制度を構築することです。これなら収支トントンであれば、税金はかかりません。これは市税条例と合わせ県税条例改正が必要となります。これは以前から私が訴えて来ました。
 第三として、指定管理者が赤字にならないように、稼働率の実績に合わせて指定管理料に差異をつけるのです。調査したところ、福山、下関、久留米は、施設によって指定管理料に差を付けていました。
 最後に、納税申告等の事務作業が難しいため、公共的団体に嘱託事務員を採用した際の人件費を呉市が全額補助する制度の構築です。市の退職者が就任することで、業務がはかどります。
 現在市民センターのある地区は、公共的団体、即ち地区まちづくり委員会や協議会、地区社会福祉協議会等の経理事務や資料作成や連絡調整業務を全て市職員が行っています。方や私が会長を務める第四地区を初めとする旧市内中央部の市民センターがない地区は、それらは全て市民が行っており、これだけでも大きな不公平が存在しています。これらの業務から市職員が撤退することが補助制度構築の条件です。これこそが真の地域協働と言え、これまでは見せかけだったことになります。しかも、この方が逆に予算上安価になる可能性まで秘めています。

 私は去る9月5日の一般質問でこの問題を採り上げました。その際財務部長が、指定管理者たる地区社会福祉協議会に納税義務が生じていることを、初めて公の場で認めたのです。これは歴史的意義ある瞬間となりました。
 これを受け私は、来年度からの老人集会所指定管理を既定路線の5年間ではなく、抜本改革に要する2年間の暫定期間にして、退路を断つことを市長に要請しました。残念ながら、それに対する明確な答弁は得られませんでした。市として断言できないということは、自信がないのでしょう。
 このような矛盾を多々秘めたまま、12月定例会に老人集会所における5年間の指定管理議案が提出されようとしているのです。改革の決意を表明させるべく、私が委員を務める付託予定の民生委員会において、追求して参る所存です。

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