街頭演説集

第213回 広島呉道路4車線化の功罪

広島呉道路4車線化で高額通行料金が半永久継続の矛盾!

Facebook 2019.11.28

 去る11月25日は213回目の街頭演説。テーマは広島呉道路「クレアライン」4車線化の功罪についてです。

 呉市長は、国土交通省による暫定2車線高速道路を国土強靱化に向け4車線化する事業に、昨年末いち早く手を挙げました。それにより今年3月29日に事業認可されたところです。
 実は本高速道路は、旧日本道路公団が財政投融資で建設し、30年の債務償還期間が来年11月28日で終了し債務を完済するため、翌29日から無料化されることになっていました。それがこの度の4車線化で、やはり財政投融資制度を活用する事業となり、民営化後の西日本高速道路㈱が事業主体となるため、無料化はなくなる訳です。
 そこで議会からは、「それならせめて通行料金を現在より安価にして欲しい」との要望があり、市長は努力する旨を答弁しておられます。
 「クレアラインの料金は高い」と、通行者から苦情が当初から絶えませんでした。それもそのはず、「全国路線網」に組み入れられた高速道路、例えば山陽自動車道や中国自動車道では料金単価が一律となっており、24.6円/kmです。それに対し広島呉道路は当時全国路線網に繋がっていない「一の路線」即ちローカル線だったため、呉~仁保間が42.7円/kmと1.73倍になっていたのです。
 一の路線はその道路のみに限定して30年間で債務償還をするため、通行車両が少なければ、それだけ料金単価を高く設定せざるを得ない訳です。これを「区間料金制」と言います。これに対し全国路線網は、採算路線の通行料収入で不採算路線の償還財源を穴埋めするため、全国一律単価なのです。これを「全国料金プール制」と呼びます。
 ということは、道路建設が完了し供用開始後から30年償還ですので、クレアラインは有料化がそのまま継続されるなら、期間が30年を遥かに超過することになり、その分料金単価が下がるはずと私はみていました。しかも暫定2車線のみが現在供用されていますが、実際は都市計画により4車線分の土地は事業段階から買収済みなのです。ならばこの度の4車線化では土地の買収費が含まれないため、単価が更に安価に設定できる理屈です。

 ところが、国土交通省は去る6月30日に広島呉道路を「全国路線網」に組み入れると一方的に発表しました。この意味するところは、全国路線網では、高速道路会社と日本高速道路保有・債務返済機構との協定で償還期限を区間毎に45年としており、既に償還期間を過ぎている路線でも、令和42年1月3日から無料化されることになります。しかし、費用対効果の低い地域に、政治圧力で今後新たな道路建設が追加されるのは火を見るよりも明らかで、且つ既存の利用率が高い高速道路、例えば東明や阪神高速道路の車線増幅案も飛び出しています。ということは、財源が半永久的に必要であって、過去10度も協定を改定して期限を延長して来たのです。ですからこの度の広島呉道路は半永久的に有料化されることとなります。
 それをもし受け入れたとして、全国料金プール制になるなら、24.6円/kmと通行料金が格段に安価になると思いきや、現状の42.7円/kmが継続されるというではありませんか!この理由を呉市が答弁できないので、この度国土交通省道路局高速道路課に糺しました。
 それによると、「全国料金プール制といっても、全国統一単価になるとは限らない。区間料金制を採用している路線もある」というのです。これでは話が全く違います。当初は一の路線で建設し区間料金制を採用して高額単価となっていたにも関わらず、その後全国路線に繋がって全国路線網に組み入れた路線で統一料金になったところもあれば、そうならなかったところもあるという、不公平な実態があるのです。
 当初の全国路線網に組み入れていた際は、統一料金にしていましたが、その後遅れて全国路線網に組み入れたところは、既存の高額料金単価を継承するようにしたため、このような不公平が生じたものと推察されます。この不公平の理由と、高額単価を継承する場合と統一単価にする場合の線引き基準について、国の担当官を問い詰めたところ、納得できる回答は皆無でした。
 同省からみれば、全国路線網に迎え入れて、高額単価の区間料金制を継続させれば、その分全体の収入増に貢献できるので、増収分を他の不採算路線の債務返済や、新規事業の財源に回せるという魂胆なのです。
 ということは、来年11月29日から広島呉道路利用者が支払った通行料金の一部が、同区間の債務返済以外に、他地域の不採算路線等の財源に回されることを意味します。このことを指摘した際も、担当官は否定できませんした。
 災害復旧・復興に伴う「4車線化」というニンジンをぶら下げて、それに食いついたところ、後出しじゃんけんで呉市に不利になるよう国にしむけられたと言われても仕方ないでしょう。市長も議会や市民の意見を聞くことなく、軽はずみに要望したものです。その功罪は大きいと言えましょう。先ず3月29日に事業認可をして喜ばせておいてから、6月30日に全国路線網化を発表し、料金体系を確認したところ、安価な統一料金ではなく高価な区間料金が継続されるという、これが「後出しじゃんけん」の意味です。それも有無を言わさずということです。
 そもそも、呉市も情報を十分開示し、4車線化が果たして必要なのかどうか、討議材料を十分市民に与えるべきだったのです。何故なら来年11月29日から無料化されることを市民は殆ど知らされていませんでした。いきなりの市長発表となり、スタンドプレーが目にあまります。4車線化したら有料化が高額単価で半永久的に継続するという情報が全くなければ、4車線化が歓迎されるに決まっているからです。

 一方、有料化が継続するのはやむなしという世論も一部であるのも事実です。何故なら民主党政権時代に無料化社会実験を行った際、呉ICから乗り入れる時、大渋滞を巻き起こした経緯があるからです。
 ということは、来年11月から無料化されれば、この悪夢の繰り返しが予想され、しかも国道31号線沿いのルート31等の出店やコンビニの収益はがた落ちします。これに対して、呉市は出入り口付近の市道拡幅等の必要事業に全く手をつけておりませんでした。このまま無料化になっても、対策が間に合わない状況だったのです。
 となれば、4車線化せず無料化を選択した場合、別の渋滞問題が発生することとなり、4車線化はしたらしたりで、高額料金単価が半永久的に継続するというのでは、どちらを選択しても難しい訳です。
 であるならば、4車線化を要望する条件として、区間料金制で一の路線を維持して30年償還にするとか、全国路線網に組み入れるなら、安価な統一料金にするとかを国に突きつけた上で、条件的に事業化を進めることが賢い選択だったと考えます。

 ところで、4車線化を急ぐ理由の基本は、災害対策にあります。但し、残り2車線の用地買収は終わっており、都市計画では、既存2車線と平行してくっついているのです。離れているセパレーツコースではないのです。ということは、昨年規模の大災害が発生した場合、2車線でも4車線でも崩落したら同じではないか、却って復旧費用が嵩む可能性も多々あります。この点の国も担当官に問い質しました。
 それには、「これまでより強固な擁壁を構築することは考えられる」との答弁です。そうなりますとますます事業費は膨らむ一方で、後から後から別の話が出て来ては困る訳です。既に概算事業費730億円と発表されている訳ですから・・・つまり、都市計画に則った4車線化は国土交通省の悲願であって、全国的に暫定2車線供用が多いのは、財務省が不採算路線を安易に造らせないため、財政投融資枠の手綱を引き締めて来たのです。
 事業執行部署と財布を司る部署のせめぎ合いが水面下で常にある訳です。それを国土交通省が昨年の豪雨災害等を理由に国土強靱化を掲げ、1兆円の融資枠確保を財政当局から勝ち取りました。であれば、大被害を被った広島呉道路の当事者たる呉市がその財政投融資枠に対し、積極的に手を挙げてもらわないと困るのが国土交通省の立場なのです。
 既にさいころは振られてしまい、4車線化事業は動き出しました。この針を逆に回すことは現段階において、余程の市民世論が巻き起こらねば無理でしょう。当然市当局も、これら4車線化において不利な情報は、積極的に開示しようとしないでしょう。そうすることで、万一市長が方針転換に追い込まれたら、これまでの拙速をさらけ出してしまうからです。
 この度の問題点は、去る7月4日の呉市議会・総合交通対策特別委員会で私が追及して初めて当局が明らかにした訳で、質問がなければ曖昧にされたままだったのです。

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