街頭演説集

第214回 次世代モビリティ社会実験の無駄

次世代モビリティ社会実験は明らかに税金の無駄遣い!!

Facebook 2019.12.7

 去る12月3日は214回目の街頭演説。テーマは次世代モビリティ社会実験についてです。

 呉市は市長の肝入りで、今年度次世代モビリティ社会実験に1千万円、これと連動する呉駅周辺地域総合開発計画策定費として1,500万円の予算を計上しています。
 前者としては、去る11月27日に市役所で、次世代大型バス「SORA」、2人乗り自動運転カート「ニューコンセプトカート」の見学会と啓発講演会を同時開催。それを踏まえたSORAの運行社会実験を土曜日曜日の4日間に亘って実施しています。これは呉市役所前を出発し、呉駅~中央桟橋~青山クラブ~れんがどおり~呉市役所前~呉駅前と、臨時バス停を設置し、35分で周遊。1日4便あり、どのバス停からも自由に乗降できるもので、しかも無料です。

 ここで問題になるのは、社会実験の意義や必要性です。なるほど、見学会や社会実験によって、次世代モビリティがどのようなものになるのか、市民に対して啓発にはなりました。
 SORAは水素を燃料とする電気自動車で、排気ガスの代わりに水を排出し、二酸化炭素排出を大幅に抑制するもので、普及すれば地球温暖化対策に大きく貢献することになるでしょう。加えて振動音が極めて小さく、騒音問題も起こりません。定価は1億640万円です。通常の低床大型バスが3千万円程度かかりますから、運送事業者は大きな投資を余儀なくされます。但し国が推奨していますので、1台目は2/3、2代目以降は1/2が補助されます。
 では、呉市内を走らせるのであれば、一体誰が購入するというのでしょう。交通局を廃止しましたので、呉市が購入することはあり得ません。市内運行用では広島電鉄になりますが、同社へは毎年呉市が3億5千万円から5億円余りを赤字補填、バス購入費補助を3千万円別途支出しています。もし広島電鉄が購入するとなれば、結局は市民の血税で補填することになるのは必定です。従いまして、現段階ではこれはほぼあり得ないでしょう。
 百歩譲って購入したとしても、ガソリンスタンドで給油することはできず、水素ステーションで燃料補給する必要があります。このステーションは市内1ヶ所、しかも中心部を離れた阿賀マリノポリスの隣までわざわざ行く必要があるのです。全国で都会を中心に普及が進み、価格も下がった段階での購入となるのは当然で、まだ20年は早いと推察しています。
 そして、この度の社会実験のコースには、歩行者天国のれんがどおりが含まれています。もし購入してもここを通ることはありません。これは普段大型バスが通らない商店街を走行することで、注目を浴びるのが目的です。市長のパフォーマンスと言っても過言ではないでしょう。
 更に、座席が22席、車椅子席を解放しても25席しかありません。ということは、観光バスに転用した場合は、極めて乗車効率が低いことになります。因みに、通常の大型バスは補助席を含めて55席あります。
 この水素式大型バスは、現在国内でトヨタ自動車製しかなく、同社の宣伝を公費を使って行ったことになります。
 ところで、二人乗り自動運転カートは、商店街も走らせるということで、活性化に寄与すると期待されています。しかしまだ商品化されてなく、1台が1億円もするとは驚きです。自動運転ですから、運転手の人件費が削減できると言いつつ、管制塔に人を貼り付けて制御する必要があり、その整備費や人件費が別途かかるのです。これはスマホで自宅から出かける際に予約から他の交通手段への乗り換え、精算を一括行うことができるMaaS(マース)の先陣を切るものですが、高齢者はスマホ操作が苦手なので不向きですし、若者はマイカーで移動しますので、現段階でのニーズは殆どありません。
 観光地の公園内を走行するのに適しているとの触れ込みですが、これなら高齢者用カートの方がコスト的には大いに安価で済ませることができます。
 NTTドコモがヤマハの車体をベースにSONYと共同開発した試作品のようで、これも公費を駆使した宣伝に止まりました。

 市民からは、「呉市は水素バスを購入することを考えているのか?」と素朴な質問が飛び交いました。答えは「そのつもりは毛頭無い」ということになります。
 そもそも社会実験というのは、実用化が大前提でなければ意味がありません。最初から導入する気がないのに行うのであれば、市民の貴重な血税をどぶに捨てることになるからです。
 私一人がこの予算に反対しましたが、この意味のない市長の暴走を市民の手で止めて欲しいものです。
 また大型水素バスは、乗車人員が多いと、複数車両での隊列走行が可能です。先頭車両にのみ運転手が運転し、後列の車両には自動運転ができるというのです。それだけ多くの人が乗車すればの話です。呉市では、市街地を循環する「三条二河宝町線」でさえ赤字に転落し、土日祝日限定の呉探訪ループバスにも血税を投入していることを、導入を主張する学者は肝に銘じておいて欲しいのです。

 一方、3年前にオープンした新宿バスタ(複合式バスターミナル)を広域間移動高速バスの拠点として、全国を広域バスネットワークで連結する構想が提唱されています。神戸の三宮駅や札幌駅でバスタの整備計画が立てられているようで、このような広域バスの駅となるバスタを全国8ヶ所に整備する構想だということです。
 実はその8ヶ所の中に「呉駅」が入っていると、新聞報道されました。大阪市のユニバーサルスタジオジャパン行き高速バスが呉市から発着していましたが、経営難で数年前に撤退した経緯を知っておくべきでしょう。
 広島駅の整備計画が打ち出されてていますが、これにも「バスタ」としての位置付けがないのです。尤も広島市では駅とバスセンターが離れているという事情もあります。
 呉市が今年度予算化している冒頭の1,500万円がその根拠となっているようですが、まだその計画は具体化してもいないのです。そごう1階を呉駅前広場として拡張し、人の通行は駅前広場に2階デッキを前面に張り巡らせるという非現実的な案は、学者等が提唱はしましたが、これにはJRは一切資本協力することはないでしょうから、その莫大なイニシャルコストは全額市民の負担になるのは必定です。そんなことは「デッキっこない」訳です。同僚の与党系市議からも、「夢物語ではないか」と揶揄される始末です。しかも一旦ハード整備したら、未来永劫維持管理費たるランニングコストがボディブローのように効いて来て、財政を圧迫することでしょう。
 結論として、この度の社会実験には大きな税金負担があり、実験そのものに意味がないと断言できます。地方都市たる呉市での実用化が現段階では時期尚早であることは、実験以前に、誰でも容易に判るからにほかなりません。

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