街頭演説集

第220回 イノシシ対策

イノシシ対策はオオカミの森復活を真剣に検討すべき!

Facebook 2020.1.27

 去る1月24日は220回目の街頭演説。テーマはイノシシ対策についてです。出張が重なり、原則月曜日の予定が金曜日にずれ込んだのは初の出来事となりました。

 イノシシによる農作物被害は、全国農業者の悩みの種と言ってもよいでしょう。近年離島にも海を渡ったイノシシが繁殖するという現象が起き、行政として有効な手立てがないのが現状です。
 呉市においては、農地をイノシシから守る手段として、防護柵等資材購入助成事業があります。これは耕作農地を囲う防護柵設置に対し、1件6万円を限度に1/3を補助するものです。また、複数農家が所有する30a以上の農地で且つ周囲が200m以上であれば、防護柵を呉市が貸与する制度が後から追加されました。これは防護柵貸与事業といいます。
 また、市が提供する箱罠を設置する際は、猟友会の協力を得て、イノシシの通り道に設定しますが、土地を提供する人に加え、餌やりや捕獲する狩猟免許を取得する必要があります。この研修費の補助を数年前に導入しました。狩猟免許取得助成です。
 因みにこの箱罠で捕獲した場合、呉市に証拠のしっぽを提出することで、捕獲報奨金4千円と埋設報奨金5千円がセットで支給されます。合併前は捕獲報奨金のみでしたが、倉橋町が1万円、安浦町が1万5千円だったことから、合併直後から埋設報奨金を追加の上で制度を統合した経緯があります。
 この箱罠は、有害鳥獣対策としての位置付けで、狩猟期間以外の期間のみに呉市が毎年許可をしていましたが、農家の要望を受け平成24年度から、県知事の許可を受けた場合に箱罠貸与を解禁しました。但しこの場合は有害鳥獣対策ではなく、狩猟のための県知事許可であるため、申請時毎に2万円の負担が生じます。よって、そこまでして年中箱罠を設置する方は限られているのです。実際呉市では、有害鳥獣捕獲の方が狩猟捕獲よりも頭数が多いそうです。具体的には平成30年度実績に於いて、前者の2,367頭に対し、後者は784頭しか捕獲てきておりません。
 因みに広島県内では、狩猟期間においても有害鳥獣捕獲を許可しているのは江田島市のみです。これなら許可に係る負担は生じません。但し、どちらにしても狩猟期間にまで箱罠を仕掛けると、猟犬が誤って罠に掛かる危険性があるため、その場合の損害補償のため、予め保険に加入することが適切です。
 呉市では、狩猟期間に有害鳥獣捕獲を未だ許可しない理由は、このリスク回避にあるのです。江田島市で、猟犬が罠に掛かったという話は過去聞いたことがないので、この方式、即ち狩猟期間における有害鳥獣捕獲を呉市が許可をすることも一考に値すると考えます。

 一方、狩猟期間はどうなっているのでしょうか?鳥獣保護管理法によると、施行規則には11月15日から翌年2月15日までの3ヶ月間と定められています。但し、同法により、第二種特定鳥獣管理計画を定め、その目標を達成するために必要であれば、都道府県知事は、法に定める狩猟期間の範囲内で期間延長が可能とされています。
 そこで、イノシシ、ニホンジカに限り、岡山、愛媛、香川県では3月15日まで1ヶ月の延長、徳島、高知県では3月31日までと1ヶ月半延長しています。山口、佐賀、大分、熊本、宮崎県では11月1日から3月31日まで2ヶ月延長し、5ヶ月間としています。
 これに対し我が広島県では、令和3年度までの第二種特定鳥獣管理計画において、2月末日までと、半月の延長に止めています。本計画を策定するに当たっては、平成27年3月に開催された「イノシシ・ニホンジカ保護管理対策協議会」に対し、ゆたか農協から期間延長に係る要望書が県知事を通じて提出されました。この諮問機関は、広島県猟友会と市町担当者で構成されており、被害を受ける側の県農協は入っていませんでした。双方の意見を聴取する上で、県農協代表者にも委員に入って頂く方がよいと考えます。
 私は昨年12月定例会での一般質問で、狩猟期間延長の可否について質しました。それによると、広島県は過去に始期を11月1日に定めたこともあったものの、この時期は松茸狩りと重なり、危険が伴うことで、11月中旬に戻した経緯があるそうです。また、3月に入って取れたイノシシの肉は質が悪いので狩猟者が捕獲しなくなったとの理由から、現在の2月末までにしているのだそうです。
 尤もこれらは表向き答弁であって、猟友会からすれば、鉄砲狩猟の資格を持っていない者が狩猟期間に箱罠を仕掛けることで、収獲が減るから困るとの思惑も見て取れました。
 ところで、狩猟捕獲には報奨金は支給されませんが、狩猟期間による箱罠捕獲には、呉市として捕獲報奨金のみを支給しています。この報奨金が少ないことも、この期間による箱罠設置が少ない要因でしょう。埋設報奨金をも支給する方が、結果的に箱罠捕獲が増えるのでよいと考えています。
 逆に箱罠免許を取得した農民にとっては、埋設報奨金を支給されない狩猟期間が増えても困るということなのでしょう。

 では、この様にイノシシが繁殖した理由は一体どこにあるのでしょうか?
 各都道府県が松食い虫を駆除するために、ヘリコプターで農薬を散布していた時代がありました。これが人体に甚大な被害を及ぼすとの懸念が増大したことで、広島県では平成19年度をもってこの政策補助を4年間で打ち切ったため、呉市はその後、地上散布や伐倒駆除に切り替えました。
 この農薬空中散布により、餌になる山林の土中の昆虫等が激減したのではないかと、睨んでいます。これが人里への出現率拡大の要因の一つではないでしょうか?
  加えて、相続者が農業を継承せず、耕作放棄地が増加したことも、イノシシが人里に出没するようになったとも考えられます。
 そして人工林を管理する林業が細って来たことで、間伐が滞った結果、イノシシの餌になるべく自然植物の成長が進捗しないといった理由もあるかも知れません。
 また明治政府は、アメリカの開拓期に模倣して、家畜を襲うとの理由からオオカミを毒殺し、絶滅させました。これは生物多様性に係る食物連鎖における山林でのトップに君臨する者が不在になったことを意味します。それがイノシシが繁殖したもう一つの要因だと考えています。オオカミは滅多なことでは人里に出現せず、人も襲いません。家畜を襲ったのは、当時北海道入植者がエゾジカを乱獲し、餌が乏しくなったことが要因だったようです。オオカミは本来、生存するためにイノシシやニホンジカを狩り、種の均衡は保たれていたはずなのです。
 北海道にオオカミを輸入しオオカミの棲む森に暮らしておられる桑原康生氏によると、森林に外来種が増えたことも要因であるとのこと。常緑針葉樹や実のなる広葉樹のある針広混交林がオオカミの生息に適しているのだそうです。
 ということは、イノシシ対策の根本はオオカミの棲む自然の森を回復して、海外からオオオカミの種を輸入することを政府として検討をする必要あるのではないでしょうか?私には、現在のイノシシ対策は単なる対症療法にしか過ぎないと映っていて、抜本対策が必要だと考えています。

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