街頭演説集

第229回 呉駅周辺地域総合開発基本計画

呉駅前広場拡張とそごう再開発で公共施設を増やすな!

Facebook 2020.3.26

 去る3月23日は229回目の街頭演説。いよいよコート着用が不要となりました。テーマは呉駅周辺地域総合開発基本計画についてです。
 呉市はこの3月10日に、呉駅周辺地域総合開発基本計画の骨子案を発表しました。これは、今年度予算に計上されていた基本計画策定費1,500万円を活用したものです。
 この度は、その令和5年度までの第1期開発を主にまとめています。

 そこで、その概要のポイントを説明申し上げます。
 第一に、呉駅前広場を、そごう跡の東側敷地の一部を活用し、拡張するというものです。そごう跡敷地の約8割は呉市所有ですが、地上権は19%しかないため、それは一旦プロポーザル後の開発会社に全て売却するものの、その後一部を買い戻す必要があり、税金の投下が予想されます。
 駅前広場の2階部分にはデッキ広場を建設します。ところが通常の大都市における駅前デッキ広場は、周辺の商業施設に直接入れるため、人通りが多いのですが、そごう跡に建てる再開発ビルに直結はするものの、阪急ホテルには直結できませんから、費用対効果が望めません。
 しかも、将来の呉駅舎を建て替えた際の連結も設計しなければならず、駅舎建て替えにJR西日本が一切負担することなく、それを全額呉市が負担することが、過去の経緯から容易に予想されることから、今後更なる税金投下に結びつく内容です。
 また、駅前広場の呉市有地部分は国道31号線に組み入れ、国直轄事業で整備するため、呉市負担はなく、県が1/3を負担するとの説明でした。但し国道認定するからといって、国が呉市から土地を購入してくれる訳ではありません。
 しかも直轄事業とはいっても、例えば阿賀マリノ大橋がそうでしたが、130億円の総事業費に対し、呉市が58億円もの負担を強いられ、完成後は呉市に所有権が帰属したので、その後の維持管理は呉市負担となりました。ですから、呉市負担がゼロで、維持管理も国土交通省が行うというのは、にわかに信じ難い訳です。このことを私が先の予算委員会で追及したところ、当局はデッキ広場について呉市負担の可能性を臭わせました。
 そのデッキ広場には店舗を誘致するということですが、呉市規模の都市でデッキ広場上に店舗を構えて経営が成り立つかははなはだ疑問です。赤字が予想されれば、民間事業者は手を挙げないでしょう。ましてや日鉄日新製鋼が3年半後に完全撤退するというのですから、経済が萎縮し、人口減は火を見るより明らかで、なおさらです。
 また、駅前広場の一部の土地はJR西日本が所有しており、この部分はどうなるのか、JRが資金を投じることは先ずありませんから、不明瞭なままです。
 実は国直轄事業で進めている背景には、国がバスターミナルと駅を一体化させ広域交通・商業拠点にするバスタ計画に呉市が手を挙げるということなのです。その全国の中心拠点が、平成28年にオープンした「新宿バスタ」です。そこから広域バスを呉バスタに連絡させる構想がいかに無謀かは、別の機会に解説致します。

 第二は、市民の最も感心が高いそごう跡地はどうなるのかということです。
 これは商業施設を中心とした複合建物を、プロポーザル選定した開発業者に建ててもらうということです。これには事業者提案により、商業施設以外にホテルやマンションが想定されています。
 前市長時代も、旧そごうを解体したら2億円の補助、建て替えたら5億円の補助を交付するという案が出ていたのです。これは引き合い業者との水面下折衝における、強い要望でした。ということは、ようやく㈱そごう・西武、日本通運㈱、呉市の3者に権利集約を完了はしましたが、呉市が持ち分を売却しても、事業者への巨額の補助金交付という大幅な血税投資は避けられないでしょう。
 しかも、2階部分辺りには、公共施設としてアーバンデザインセンターを設置するといいます。これは諮問機関である呉駅周辺地域総合開発に係る懇談会の提言にはなかったものです。提言に記載されていた防災拠点としての災害備蓄倉庫設置はさすがに見送り、その代替施設として急遽浮上したものと思われます。
 アーバンデザインセンターとは、公民学が連携してまちづくりの課題解決に取り組み組織ということです。各種団体代表が委員になられるとは思いますが、常駐する事務所を持てば、人件費を全額呉市が負担することとなりますし、その必要はさらさらありません。組織が会議する際は、新庁舎の会議室で十分です。その公共スペースを呉市が購入するか借上げるかは未定としつつも、どちらにしても余計な血税を投入することに変わりはありません。
 新たな公共施設をそごう跡地に設置することは、令和22年度にハコ物の総床面積を3割縮減するという公共施設等総合管理計画にも反することになります。勿論その地上権を新たに呉市が取得し、人件費や維持管理費が半永久的に伴って来ることは明かで、とんでもない愚策です。
 更に、この複合建物への再開発は、JA呉店とも一体的に整備するということです。ではJAの移転補償費は呉市がみるのかと私が訪ねますと、再開発事業の中で捻出するので、呉市負担は生じない旨の答弁でした。そうなりますと、JAが総論賛成でも、各論反対に回ることは十分考えられます。過去のれんがどおりのサン劇と銀座デパート跡地開発が失敗に帰した苦い経験があるのです。
 近々に基本計画を正式決定した後、令和2年度の上半期の早い段階で、プロポーザルを実施して開発事業者を公募し、同年度末に事業計画を策定する方向です。その上で令和3年度に基本・実施設計を発注し、4年度から6年度にかけて施工するとしています。
 第2期開発は令和6~15年度と位置付け、呉駅の橋上化や、呉駅西駐車場の活用策が中心となります。令和16年度以降を第3期開発として位置付け、呉駅南から中央線橋までの再整備を検討するとの構想が示されました。

 一方、この度の基本計画では、事業規模、呉市の財政負担が一切示されておりません。これは新年度に事業計画策定費2千万円を議会が認めてくれれば、新年度末に策定する事業計画で初めて明示するというのです。
 呉市は、新年度から5ヶ年で41億円の財政収支不足が生じると試算されています。ところがこれは、呉駅周辺総合開発や青山クラブ耐震老朽改修に係る費用やその維持管理費は、算定に含まれていないのです。このような状況下で財政負担が示されないのを尻目に、議会に事業策定予算を認めて欲しいというのは、とりもなおさず議会を愚弄することになります。つまり、独善的な市長マニフェストの実現ありきで、無理矢理市職員が翻弄されていると言っても過言ではないでしょう。
 前々市長時代の平成6年度に、JR複線化を検討する諮問機関を起ち上げたことがあります。その際も答申段階で、事業規模が示されたのです。完全複線化で260億円、部分複線化で同様の効果を引き出し、快速電車を走らせるようにするのに22億円で済むとの内容でした。それを受け、後者の手法での事業計画を策定した経緯があるのです。
 少なくとも呉市の財政負担において、イニシャルコストとランニングコストがどうなるのか、その試算を明示しない基本計画を議会が認め、事業計画が策定された段階で、即ち後出しじゃんけんで、「実はこれだけ財政負担がかかります」では、許されない訳です。
 前市長の時も、青山クラブを大規模改修したらそれだけで30億円、維持管理費として年平均9千万円がかかる試算を発表しているのです。
 基本計画骨子案策定に当たっては、市民アンケートを700件取ってニーズ調査をし、それを反映したということです。但し、呉市の財政収支不足や、この事業でどれだけ呉市に負担がのしかかるのか、これらのマイナス要素に一切言及しない不公正な手法は情報不足の市民対し、大型開発ありきという結論に誘導する内容になっているのです。しかもその前段として、旧そごう仮囲いに、今年度の予算を使って、決まってもいないイメージ図を製作・展示したことも大問題でした。マニフェストに沿った世論形成に一役買うとの姿勢が見え見えで、それこそ税金の無駄使いです。
 私はこれらの内容を予算総体質問や予算委員会で質疑し、本会議場でも正々堂々と討論を行った上で、本予算に反対票を投じました。

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