街頭演説集

第238回 種苗法改正案

種苗法改正は農民の自家採種権を奪い、食料安保は崩壊!

Facebook 2020.5.26

 昨日5月25日は238回目の街頭演説。テーマは今国会に提出されている種苗法改正案です。一市議会議員の分際でありながら、純粋に国政に踏み込むのは、先の新型コロナ対策における現金給付に続き、2度目のこととなりました。

 さて、女優の柴咲コウさんのツイッター書き込みもあって、去る5月20日、与党は種苗法改正案の今国会成立を見送りました。同法案は、平成29年8月1日施行の農業競争力強化支援法、平成30年4月1日施行の種子法廃止と合わせた、3点セットの完結法なのです。
 農業競争力強化支援法とは、公共団体等が研究開発して来た優良品種の知見を積極的に民間に開放しようとするものです。そして都道府県が品種改良を行い、安価に種子を農民に提供して来たことに関する国の責任を放棄するのが種子法廃止でした。今度は種子開発の知的財産権、即ち育成者権を完全保護するのが種苗法改正案なのです。

 現行の種苗法では、品種登録して育成者権を獲得すると、品種にもよりますが25年間の特許期間が付与されます。即ち他者によるタネ採り、自家採種権がその間保護される訳です。但し現行法第21条第2項で、農業者に限定して、一旦タネを購入した場合、次年度以降の自家採種・自家増殖が認められていたのです。これは平成25年に我が国も批准・加盟した食料・農業植物遺伝資源条約の理念である「タネは農民のもの」が反映され、知的財産権と農業者との間のバランスを取って来たと言えましょう。
 ところが現実は、この条項の例外措置として、農水省が政令農業者の自家採種権を認めない品種を近年徐々に増やして来たのです。現在は387品種にも及んでいます。これをもっと進め、例え農業者であっても自家採取権を認めず、育成者権を完全保護するというのがこの度の一番の改正点です。具体的には第21条の第2項を削除しようとするものです。
 改正法案では、農業者がタネ採りを行おうとすれば、開発登録者の許諾を得る必要があります。ということは、そこには金銭取引や、契約において様々な条件を突きつけられることになりましょう。我が国でも外資系アグリ企業の農家との契約では、栽培の際に同企業系列の化学肥料や農薬の使用が条件となったりしているのです。これでは有機栽培への移行は益々困難を極め、ひいては国民の食の安全が脅かされることに気付くべきです。
 実は、提案理由の主なものとして、近年我が国の開発品種が無断で海外に持ち出され、その作物が中国や韓国から逆輸入されているので、それを防ぐとしています。具体的には「シャインマスカット」やイチゴの「紅ほっぺ」が実例です。
 ところが農水省は平成29年に、種子や苗の国外流出を国内法で防ぐのは甚だ困難であることを認め、「国外でいち早く品種登録するしかない」と説明しているのです。ということは、この度の提案理由との整合性が図れていないのは自明の理です。
 しかも改正案では、海外流出者への10年の懲役や1千万円以下の罰金を科しているのは当然としても、農業者の無断自家採種に対しても同様の刑罰を科しているのです。

 これらのことで、大きく3点の悪影響が考えられます。
 第一は、農業者がタネ採りをしようと思えば、毎年タネを購入する必要があり、現場では大幅なコスト増になるということです。そうなれば経営を圧迫し、農家の収入が減り、次世代の担い手不足は、少子高齢化も相まって益々顕著になるでしょう。農家が減れば、食料を輸入に頼らざるを得なくなり、我が国の食料安全保障制度は崩壊してしまいます。つまり、武器や軍事によらず、敵国から兵糧攻めに遭う可能性が高まるという訳です。
 これに対し農水省は、タネ採りをしている農家は全体の1割程度しかないので、影響は小さいと豪語しています。他国と比較して著しく自家採種率が低いのを容認しているばかりか、今後これが更に低下するのをやむなしとしている向きがちらつきます。寧ろ自家採種農家に手厚い支援策を講ずるべきでしょう。
 第二は、開発者にとっては、育成者権が完全保護されるため、逆にありがたいと思われている節がありますが、これは大きな錯覚だということです。実は品種登録をしようとすれば、在来種との特性の違いを証明する必要があり、そのための試験等の労力と費用が膨大になる可能性があるのです。数百万円から数千万円かかると、農水省役人が山田正彦元農水相に説明されたそうです。
 ということは、個人事業主では到底品種登録ができず、知見を大手資本に買収され、そこが品種登録してタネを売りつける構図が成立します。しかも世界のタネ企業は、アメリカのバイエル(旧モンサント)やデュポン、スイスのシンジェンタを初め外資系が席巻していますので、とどのつまりそれらを牛耳っている国際金融資本の独占体制となることが容易に推察されます。勿論彼らアグリ企業は、F1や遺伝子組み換え、ゲノム編集作物を開発し続けており、化学肥料や農薬も当然シェアを拡げています。これらは生殖能力低下を招いている可能性が大きく、少子高齢化の要因の一つにもなっているのです。
 つまり、種苗法改正案は国際金融資本に農業を身売りすると同義なのです。
 第三は、農家が栽培する在来種農園に、開発品種が自然交雑された場合、育成者権者である大手資本から訴訟を提起される可能性が非常に大きいということです。自然交雑とは、風や昆虫が花粉を運び、受粉することで、その品種の遺伝子が自動的に組み込まれるということです。これを防ぐことは、隔離した農園を整備するしかなく、現実的には相当な労力とコストがかかります。
 これにも1千万円以下の罰金と懲役10年を科しており、農家にとっては戦々恐々となります。インドでは海外資本から訴えられ敗訴した農家が損売賠償金支払いを命じられ、借金苦で自殺者も多数出たと聞いています。

 結局同法案は、種苗の海外流出を防ぐことを表向き理由に掲げ、開発農家の権利をしっかり保護すると標榜しつつ、農家や国民の目をくらまそうとしているのです。とどのつまりは、外国資本や多国籍企業、ひいてはその陰で糸を操る国際金融資本の片棒を担ぐものであり、断じて成立させてはなりません。
 にも関わらず、マスコミはこの内容を殆ど報道しません。国民には情報が閉鎖されているのです。政府やマスコミは、巨大な資金力により、この闇の権力に支配されているからです。桜を見る会、IR法、河井夫妻による公職選挙法違反事件、検察庁法改正案と注目を浴びる中、スーパーシティ法案と並び情報が閉ざされているのが、この種苗法改悪だと知って欲しいのです。

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