街頭演説集

第243回 河井夫妻疑惑の根底にくすぶる政治と裏金問題にメスを!

Facebook 2020.6.30

 昨日6月29日は、243回目の街頭演説。テーマは河井夫妻疑惑についてです。
 これは、昨年7月の参議院議員選挙の広島選挙区において、出馬した河井案里元広島県議会議員の陣営が、ウグイス嬢に対し法定の2倍となる違法報酬を支払ったとされる事件が発端となりました。それに関わったとして、案里氏と夫の克行代議士の公設秘書が公職選挙法違反で逮捕されたのです。案里氏の秘書だった立道浩被告は、第一審で懲役1年半の禁固刑の判決が出て、現在控訴中ではありますが、私見では立道被告に報酬額の決定権がなかったため、克行氏を主犯とする幇助罪適用が妥当だと感じています。もし幇助罪が確定すれば罰金刑になるため、案里氏の失職を求める検察による訴訟は困難になります。
 ただ本事件はほんの入り口に過ぎず、2,570万円が地元94名の政治家や後援会幹部にばらまかれたという、買収による公職選挙法違反が検察にとって本命なのです。実際秘書逮捕による捜査の過程で、検察は買収先と買収額のリストを入手。これが決め手となって、前代未聞の河井克行前法相と妻案里参院議員の同時逮捕劇となりました。
 更に、1億5千万円の内1億2千万円が政党交付金、即ち国民の血税だったことが判明しました。これには有権者は大いに怒るべきでしょう。を受領した府中町議は「安倍さんから」と克行氏に言われ、30万円を受け取った責任を取り昨29日に、議員としては初の辞職。60万円を受領した三原市長は本日6月30日に辞職。更に同日は、150万円を受領したものの、一旦続投表明した安芸高田市長が辞職表明したところです。
 現在のところ買収額の最高は呉選出県議会議員の200万円となっており、呉市議会議員でも30万円を受領されたとの記者会見が先週末にありました。
 これまで沈黙を守っていた政治家や、受領を否定していた政治家が一転受領を認め謝罪に追い込まれたのには理由があります。河井夫妻逮捕により、立件され裁判になれば、誰を買収したかを検察が明らかにするのは必定だからです。その時に初めて名前が出ると、世間の心証を一層悪くするため、今の内に告白した方が傷口を大きくしないで済むと判断されたからだと推察されます。

 その際、受領したお金の処理方法が問題となります。
 封筒を開封せず放置した方や、後から事務所に返却した方、政治資金規正法に基づき収支報告書に記載した方と様々です。
 実は、同じ選挙区内でありながら、収支報告書に記載すれば違法ではないことが、そもそもざる法としての抜け道なのです。選挙の買収目的であることが明白の場合はさすがに報告書に記載することはありませんが、通常の政治活動、即ち地盤培養行為への支援として寄附を受け取ったと報告すれば、選挙区内への寄附であってもセーフなのです。政治団体による選挙区内の他の政治団体への寄附は禁じる必要があります。
 しかも選挙運動目的か、地盤培養目的かの線引きは曖昧で、これを証明することは、選挙時期に近いかどうか、そして平常時における寄附の有無等が判断材料になります。しかし寄附した側、受領した側双方が、口裏を合わせる如く、「政治活動目的だったと認識している」と証言するのは目に見えており、これが過去検察が立件を見送り続けて来た最大の壁だったのです。
 このため選挙買収は今に始まったことではなく、平素から当然の如く常態化して来たのです。それがこの度は別件逮捕で有力証拠が挙がったため、検察が本気になって買収事件として立件しようとしている訳です。
 ただ、選挙管理委員会に収支報告する場合、受け取った政治団体(政治家後援会)は5万円以上は記載が義務付けられてはいますが、当然それをしていない訳です。克行側からすれば領収証は不要だと当然言って来ます。それは克行や案里が支部長を務める各自民党選挙区支部からは、寄附行為としての支出を計上しない闇金だからです。受領した側も暗黙の了解で、これは選挙依頼に関わる違法なお金だとの認識があるため、自身の収支報告書には一切記載しない訳です。もし記載したら、寄附側が支出項目に記載していないミスマッチが生じ、相手に迷惑がかかるからに他なりません。

 ところで、これら買収資金の原資には、自民党本部からの河井両支部への寄附、計1億5千万円が充てられていました。同じ選挙区内自民党候補者の溝手顕正氏には1,500万円でしたから、本部が破格の扱いをしたことになります。実際選挙時には、河井候補への応援演説に、安倍首相、菅官房長官、二階党幹事長が駆け付ける力の入れようでした。当然この金額を決済したのは安倍総裁でしょう。当時克行氏が何度も安倍総理に面会していることからも容易に想像できます。
 一方、参院選挙区選挙の法定額、即ち支出の上限額は4千万円余りですから、そのような巨額な寄附がなされるのは、党本部として買収行為に使われることを黙認していたと言われても仕方ないでしょう。公職選挙法では買収の原資を与えた側も罰せられることになっているので、自民党本部、その責任者も罰せられる可能性も捨て切れません。そうなりますと、何故安倍首相が黒川弘務東京高検検事長の定年延長に固執したかが解ろうというものです。
 更に、1億5千万円の内1億2千万円が政党交付金、即ち国民の血税だったことが判明しました。これには有権者は大いに怒るべきでしょう。
 そもそも政党助成法は平成7年に施行され、国民一人当たりコーヒー1杯分の250円分を公費(コーヒ)支出することで、政治家への企業・団体献金を禁じて、癒着を断絶する名目で、合わせて中選挙区から政党主体の小選挙区制度に移行する公職選挙法改正等を伴った政治改革の一環でした。背景にはリクリート事件で自民党が直前の国政選挙に大敗したため、表向き襟を糺そうとした訳です。
 ところが、これには大きな抜け道があったのです。企業・団体献金は政治家個人の後援会にはできなくなったものの、資金管理団体である自民党の国民政治協会や、各政党の支部には引き続き可能だったのです。その支部長には各々選挙区での立候補予定者が就きますので、実質的に企業・団体から献金を受けることができつつ、且つ血税から堂々と交付金が交付されるという、逆に政治家にとってうまみが増したとも言えましょう。
 以前にも増して、政党やその公認立候補者は豊富な資金力を持つようになった訳で、企業・団体との癒着構造からの脱却はできなかったのです。
 しかも政治資金パーティ-は、これまで通り合法とされ、これが潤沢な資金に拍車をかける働きをしました。

 その政治資金パーティーは有権者への寄附行為の原資にもなっています。例えば、企業や団体に2万円のパーティー券を複数社に5千枚購入してもらったとします。収入は1億円にもなりますが、実際パーティー会場に来場する人は千人です。料理は立食ですから、その人数の7割分を準備すれば事足ります。
 その際、券を100枚購入した企業が、10名の社員にパーティーへの出席を命じたとします。券の購入は企業負担ですから、厳密には社長が従業員を買収したことになり、公職選挙法違反となりますが、これは一切表に出ることはありません。政界の常識なのです。
 加えて、5千枚券を売っても、3千枚と収支報告書に記載すれば、その差額の4千万円は裏金となって表に出ないところで流動することになります。これが選挙買収に充てられることは多々あるのです。これをチェックする機能体制は、残念ながら選挙管理委員会には全くありません。これが問題です。
 この構図が表に出たのが、前広島県知事後援会による県知事選挙に絡めた県議会議員への買収疑惑です。これは平成17年の県知事選で、知事後援会事務局長が、政治資金規正法による収支の不実記載で逮捕されたことに端を発しました。つまり実際のパーティー券収入を実際よりは少なく報告し、差額収入の使途が曖昧のまま事件は終結しました。
 その際知事秘書のメモが家宅捜索で応酬され、それより8年前の平成9年の県知事選で、自民党県議会議員に知事後援会が闇献金をしたことが判明したのです。これは知事後援会が発案したのではなく、当時の県議会議長からの要請だったことが伺い知れ、その証言も得たのですが、議長は全面否定しました。
 おまけに当初は、お金の渡った15名の元職を含む県議会議員の名前は公開されなかったのです。世論に押されて最後には現職議員10名のみ氏名が公表されましたが、その全員が受領を口裏を合わせたかのように全面否定したため、受領側の誰一人として立件されず、県知事も逮捕を免れ、後援会事務局長のみというトカゲの尻尾切りに終わったのです。非常に後味の悪い顛末を迎えてしまいました。
 結局この買収財源は、政治資金パーティーで捻出されたものと容易に推察される訳です。これは全国津々浦々で、闇資金の捻出方法としての常套手段になっていることが伺い知れます。
 その知事疑惑に関し、平成17年秋の知事選翌年12月定例会での一般質問で、当時新進気鋭の県議会議員1期生が藤田知事に対し勢いよく詰め寄りました。「知事、男らしくなさいよ。私ならもう辞めています」・・・・その質問者は河井案里その人でした。あの勇気ある発言は一体何だったのでしょうか?

 この度の金まみれ選挙の実態が、氷山の一角ではありますが、政権を揺るがす大疑獄に発展しそうな雲行きです。13年前と違うのは、配ったのが代議士やその妻本人だったことで、寄附を受領した方々が告白せざるを得ない状況に追い込まれたことです。その上で、検察がそれらの方々をどこまで立件するのか、そこが最大の関心事ではあります。
 そして、安倍首相が河井夫妻の逮捕を受け、「政治家は襟を正さなければならない」とコメントを発表しましたが、それが口だけに終わる可能性が非常に高いということです。他人事のような言い回しだったからです。本当に反省するなら、河井夫妻が離党する前に、説明責任を果たすよう、党として強く指導したはずで、本人等に説明責任を委ねたことは、大いに批判されてしかるべきです。1億5千万円の寄附をどういう課程で決定したのか、徹底した調査を自民党自ら行うべきです。
 ただこれらに対し、有権者は殆ど期待していないのも事実です。自民党に自浄作用があるとは到底思えません。広島県議会も議長が「議会として調査を検討する」と発言されましたが、そこまで踏み込めるかは甚だ疑問な訳です。
 今後はこのような事態を防止するため、公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法を3点セットで大改正する動きを与党として見せて欲しいものです。

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