街頭演説集

第273回 自動運転バス導入は時期尚早!2千万円の血税投入は無駄

Facebook 2021.1.26

 昨日1月25日は、273回目の街頭演説。この日は久々に、衆議院議員の演説と同時進行となりました。テーマは自動運転バス走行実験の問題点についてです。

 呉市は昨年度に引き続き、今年度も次世代モビリティ交通社会実験に関し、予算を計上。因みに昨年度は1千万円、特に水素燃料電池バス、今年度は2千万円で,特に自動運転バスを各々市街地を走行させる実験を挙行しました。
 自動運転社会実験は、前市長当時、島嶼部、具体的には下蒲刈町で導入を検討していました。交通が混雑してなく、新たに専用レーンを設置する必要がないこと、運転手の人件費が不要となることで赤字解消に期待してのものでした。当時国が行う社会実験に応募しましたが、落選して実現しなかった経緯があります。

 そこで、新市長の強い意向に沿って、市単独予算を2ヶ年に亘って組んだ訳です。当初の導入したい動機付けを踏まえ、この度の社会実験について検証を試みて参ります。
 先ず第一に、高額バスを購入して誰が運営するのかという問題です。赤字になれば民間事業者は手を出しません。
 加えて当初は、自動運転になれば人件費が削減されると答弁していましたが、道路運送法や道路交通法が改正されない限り、運転手が同乗することになるので、帰ってコストが大幅アップになります。確かにこの度の実験も、運転手が同乗しておりました。
 そして将来、法が改正されて無人運転が可能になったとしても、航空機の様に管制システムを敷かねばならず、このシステム構築と人件費が別途必要になることが予想されます。
 しかも経営赤字を出さないようにするには、高額料金を徴収することになりますが、これでは市内循環バスが、現状では最低区間と同じ170円で乗車できていた市民にとって負担増になり、到底受け入れられないでしょう。かといって、低料金に設定すれば、民間事業者への穴埋めは血税投入となってしまいます。
 市内バスは呉市交通局が広島電鉄㈱に経営権移譲しましたが、他社経営では、路線重複等ダイヤが組み難いため、同社に運行を委ねることになるとしても、経営支援補助金が拡大するのは火を見るよりも明らかです。実際同社に対する経営支援補助金は、民営化当初年額3億5千万円程度で続いていたものの、近年は5億円規模に膨らんでいます。それは人口減による乗員減が最大の要因です。
 社会実験では10人乗りの小型バスでしたが、55人乗り規模の大型バス導入となりますと、開発段階の高額バスの購入等で、市民の血税による経営支援補助金の増額を余儀なくされ、市政運営を圧迫されることになるでしょう。
 第二に、法改正時期の見通しが立っていない段階では、すぐに導入とはいきませんので、社会実験そのものが空虚になってしまう問題です。社会実験というのは、導入を前提として試行し、そこで課題を整理して導入の可否を最終決定しようというものです。現段階で導入時期の見通しが立たないのであれば、社会実験そのものが税金の無駄遣いということになります。
 それは昨年度の水素燃料電池バスの走行実験も同様でした。バス1台の購入費が1億円もかかり、国庫補助制度はあるものの、イニシャルコストは経営にボディブローの如く効いて来ます。しかも水素ステーションが市内に僅か1箇所、それも中心部から離れた所にしかない現状では、すぐに導入はできないのと同じことです。
 社会実験というより、デモンストレーションによる市民啓発のための予算と言っても過言ではありません。市民啓発なら市政便りに特集記事を掲載すれば事足りる訳で、ことさら2年間で3千万円の血税を投入することは、納税者にとっては大迷惑です。
 第三として、専用レーン設置に関する問題です。この度は昼夜を問わず自動運転バス専用レーンを道路左端に設置する道路空間配分実証実験を、同時並行的に実施しました。将来自動運手バスを走行させるために、専用レーンが常時必要であれば、これまでより道路の混雑事情が悪化することになります。つまり、道路環境を悪化させることと同義です。これでは何のために導入すのか解りません。
 百歩譲って、専用レーンの設置が不要になるとしても、2車線しかない道路では走行できないでしょう。この度の実験では今西通り、国道31号、蔵本通りと走行しました。今西通りと国道31号は3車線ありますが、蔵本通りは2車線しかありませんので、最初からルートの対象外となりかねません。そうなりますと、市街地を循環させるには国道185号線、即ち本通筋を走行させるよりなく、これでは既存路線と重複してしまう訳です。
 現在の市内循環は、長迫を通ったり、三条通りを通ったり、その間2車線若しくは1車線道路が多々あります。それらが走行できないとなると、そもそも市内循環線を自動運転で走行させることそのものが成り立たなくなるのです。

 一方この度の社会実験では、事業者の提案で、市役所駐車場そばの道路近くに、路車協調表示システムの装置を設置しました。これは市役所前に臨時で設置したバス停に、センサーでバス接近を知らせたり、対向車線車両や、付近の歩行者に自動運転バス接近の注意喚起を促す目的です。
 自動運転ルートにこれを何カ所設置するか、或いは全く設置しないかは交通事業者の裁量となります。ただ、余計な装置を設置すること自体、大きなコスト増となり、当初の経費削減の趣旨からは大きく逸脱することは明らかです。運営経費増となるばかりか、運転手の雇用が不要となるのでは、正に支離滅裂と言えましょう。
 これら大きく3つの課題がのしかかっており、このことは社会実験を行うまでもなく、最初から分かっていることです。これらの解決策の見通しが全く立たない中の、血税を投じての社会実験は時期尚早の愚策と言えるでしょう。
 実は、この予算案に反対したのは私1人でした。議員は市長のイエスマンに終始してはならず、しかも目先のことで一喜一憂するのではなく、物事の本質を見抜くことが肝要だと痛感しています。

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