街頭演説集

第278回 県立呉昭和高校の存廃議論を切る!生徒の教育力向上が鍵

Facebook 2021.3.1

 本日3月1日は、278回目の街頭演説。テーマは県立呉昭和高校の存廃についてです。
 この日呉市議会において、県知事、県教委教育長に対する「広島県立呉昭和高等学校の存続を求める意見書」が緊急上程され、賛成多数で採択。私を含む3名の議員が反対票を投じました。

 これは、広島県教育委員会が、呉昭和高校において、令和4年度から生徒募集を停止し、令和5年度末を以て廃校することを決定したことに反対を表明する内容です。県の条例案では、広島市東区にある安芸高校も廃校の対象になっています。
 先ずは、この決定根拠となっている「今後の県立高等学校の在り方に係る基本計画」を見てみましょう。計画期間は、平成26年度から令和5年度までの10年間となっています。計画策定の根底にあるのは、何と申しましても人口減少や少子高齢化の進展によって、平成元年をピークに中学校卒業者が大幅に減少しており、今後もその歯止めがかからない状況下にあるということです。
 これを踏まえ、基本的な考え方として、学校規模は1学年6学級を標準と位置付け、中山間地域所在の学校は、1学年2~6学級の範囲、それ以外の地域所在の学校では、1学年4~8学級の範囲としています。この度の呉昭和高校はそれ以外の地域に該当し、現在基準を大幅に下回る僅か2学級で、1学年定員は80名です。つまり、基本原則を満たしていないのは明白です。
 そこで計画では、1学年3学級以下の学校については、「活力ある教育展開により活性化を図る」としつつも、中山間地以外の所在学校においては、生徒急増期と学校数が殆ど変わっていないことを踏まえ、「発展的な統合の実施を検討する」と明記されていました。ということは、この度突如として廃校を決定したのではなく、その前段が、平成26年度からの基本計画策定として示されていたことになります。

 一方意見書では、呉昭和高校において、直近では2年連続して定員割れした事実はないことを、廃校反対の理由の一つに挙げています。
 ところが計画では、中山間地域内に所在している1学年1学級の学校ついて、学校活性化地域協議会で活性化を検討した上で、2年連続して在籍数が80人未満の学校について、統廃合を検討するとしています。この在籍数というのは、1学年から3学年まで120人定員で2/3の80人を確保することを存続の条件に謳っているのです。
 因みに、中山間地域所在で1学年1学級なのは、この近辺では音戸高校や大柿高校が該当します。音戸高校はこれまで1学年2学級だったのを、今年度から1学級に絞り、県教委、呉市教委、当該学校で組織する音戸高等学校活性化地域協議会を起ち上げ、既に3回議論を重ねています。
 さて、たまたま「80人」となっていたその部分のみを捉え、呉昭和高校では1学年2学級の80人定員で、「連続して80人を切ったことはない」と意見書に反対理由を記述してしまったのです。つまり、これは全く正当な理由になっていないという訳です。

 また意見書では、令和2年度の入学者63名中41名が昭和地区の2つの中学校から進学しているので、全入学者の2/3を占めており、ニーズが高いと、反対理由を述べています。
 ところがよく調べて見ますと、昭和地区所在の昭和中学校、昭和北中学校の令和元年度の卒業者は318名です。その内の僅か12.9%の生徒41名しか呉昭和高校に進学していないことが判りました。つまり、全体の入学者が少ない中で、昭和地区中学卒業者の割合を出すことそもののがナンセンスです。地元にある高校ですから、全体での進学率が昭和地区中学校卒業生が高いのは至極当然と言えましょう。
 では、昭和地区の中学卒業生はどの高校へ進学したかを見てみますと、呉三津田高校が呉昭和高校と同じく41名、少し離れた呉宮原高校で33名、呉工業高校で18名、隣接する熊野高校で38名、その他の呉市立呉高校を含む県内全日制公立高校で56名、私立学校等で91名となっています。つまり、地元所在の昭和呉高校に偏って進学しているのではなく、ばらついている訳で、決して呉昭和高校を志望するニーズが高いのではありません。
 これが県教委が過去に倉橋高校を廃止する際、音戸高校と統合としたのに比べ、この度は熊野高校との統合ではなく、単なる「廃止」とした理由なのです。県立高校は昔と比べ、校区を全県区にしていることが、その根本要因です。

 続いて意見書の3番目の反対理由として、昭和地区に居住する子供達は公共交通機関を利用せねばならず、家計負担も増大するとあります。しかし県立高校は、県内79校あり、その内中山間地域以外に所在する高校は54校にしか過ぎません。中学校とは異なり、通学距離が遠方になるのは当然のことです。
 しかも呉昭和高校に通学する昭和地区在住生徒の多くは、バス通学です。他の高校との差異は余りないと言えるでしょう。そればかりか、バス停に降りてから、山間部の市道を歩く必要があります。これはかなりの道のりです。それよりは、昭和地区に隣接する熊野町内にある県立熊野高校への通学が却って便利だとも言えるでしょう。
 この様に、意見書にある理由の主な部分において、勘違いや理屈に合わない点を指摘しました。

 確かに、昭和地区住民を中心に3万3千名超の反対署名が集まった、その重みは解らぬまでもありません。ただ、地元住民からすれば、高校があるかないかの択一を迫られれば、深い行政事情を鑑みることなく、在った方がよいと回答するでしょう。
 それは呉市立小中学校の統廃合に関しても、必ず地元住民が、地域のコミュニティが希薄になるとか、地域が寂れるとか、卒業学校がなくなり淋しいとかの理由付けで、反対して来られた歴史があるのです。それでも小学校では1学年につき最低2学級、中学校では最低3学級が必要と、呉市教育委員会は、住民説明会で説得して来ました。
 それは児童生徒数が少ないと、多様な個性との交流が狭められ、お山の大将になってしまい、視野が狭まり、教育の質の向上という面では、困難になるからです。これが教育規模の適正化という考え方なのです。財政事情も勿論ありますが、子供達への教育の質向上という視点に立脚しての、統廃合と捉えるべきでしょう。
 ですから、このことは高校においてもそっくり言えることです。呉市立小中学校は、統廃合による条例改正に呉市議会議員が過去賛意を示し議決したことをよそに、方や県立高校では県議会における条例改正には結果的に反対を求めるのでは、それこそダブルスタンダードのそしりは免れません。
 尚、両高校廃止条例案は現県議会定例会に上程されており、来る3月3日に所管の文教委員会で審議され、3月15日の本会議で採決される予定となっています。

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