2022.12.19
この答弁を引き出す前段として、具体的に大きく二つの事例がありました。
第一は、一部病院での入院患者への厳しい面会規制です。
親族がワクチンを少なくとも2回接種した証明がない場合は、当病院が実施している抗原検査を自己負担で受け、陰性にならないと面会が許されません。しかも危篤状態に陥った場合でも、面会者が親族1名、各10分間を一人2回まで限定という厳しい制限を課しています。
これは、医療法第1条(患者の利益保護)、同条の2第1項(医師と患者の信頼)、及び第2項(患者の意向を十分に尊重)-とあり、これらに違反しているというのが、谷本議員の見解です。
これに対して、西部保健所広島支所は動きませんでした。その理由は、令和3年11月24日付け厚労省が発出した「医療施設感染拡大防止面会事例」に、「各医療機関の方針を尊重する」との記述があり、面会謝絶やマスク着用を含めた面会条件を医療機関裁量と受け取っているからです。
但し政令、省令、事務連絡はあくまで法律に基づくものでないと無効なのです。
第二は、入院患者に対して、各病院では当たり前の如く、本人の同意なくPCR検査を行っています。患者が認知症だったり、意識朦朧の際は、当然親族にインフォームドコンセントを行った上で同意を求める必要がありますが、これが現場では全く行われておりません。
また、一部産婦人科では「PCRをしないと分娩に応じない、若しくは帝王切開となる」と、ある意味脅して、事実上PCRを強制している病院がありました。
特に、PCRを条件とする分娩について、具体的相談のあった事例につき、つくば保健所も茨城県保健医療部感染症対策課も、病院への指導を拒否したのです。谷本議員の主張は下記です。
- PCRは義務でもないにも関わらず、医師が強要。医療法第1条(患者の同意)違反。
助産師に聴いてようやく説明があるくらいで、医療法第1条の4第2項(インフォームドコンセント)違反 - PCRを受けないと分娩しないのは、医師法第19条(医師の応召義務)、即ち「正当な事由がなければ診察治療を拒んではならない」に違反
- PCRを受けなければ帝王切開するというのは、条件を付けた時点で強制になる。
義務でもないことを意に反して行わせることは、未遂であっても刑法第223条強要罪に該当する恐れあり - 感染症法第4条、新型インフル特措法第5条では、国民の責務として、新型コロナ感染症対策は努力義務となっているものの、人権尊重は義務なので、後者が優位にあるにも関わらず、病院では人権を蹂躙
- 新型インフル特措法第13条第2項では、患者等への差別を禁じており、PCRを受けないと帝王切開に切り替えるというのは、これにも違反
これに対して、茨城県の回答は下記です。
- 厚労相から病院医療に係るガイドラインが出ており、病院や医師を指導できない
- PCRを拒否しても帝王切開での分娩を行うと明言しているから、医師法第19条(応召義務)違反とは言えない
- 医師法第1条は医師も努力義務でしかないので、患者の意向に沿っていないことや、同意を取らないことが即違反とは言えない
- 刑法のことは、所管外なので判断する立ち場にない
- 厚労省からコロナ対策に関連し、病院裁量であるとのガイドラインが出ている以上、これ以上踏み込めない
- 病院としては、新型コロナ感染症に配慮したり感染症の蔓延防止をする立ち場がある
結局、感染症法や新型インフル特措法は理解されてなく、この部署はあくまで医療法と医師法違反をチェックするしか能がないことが分かりました。このため谷本議員は、厚労省医政局地域医療計画課に電話したものの、ほぼ茨城県と同様の回答でした。ただ国からのガイドラインとは、「新型コロナウイルス感染症病原体検査の指針」であることが分かった程度です。
そこで、新型インフル特措法を所管する内閣官房コロナ室に電話しました。
結論としては、下記内容でした。指導権限があってもそれを行使しようとしない姿勢は頂けません。
- 個別の案件にはタッチしない
- 都道府県保健所所管部署へ直接指導する権限もない?
- PCRを分娩の条件とすることが、新型インフル特措法第5条(基本的人権の尊重)や第13条第2項(患者等への差別禁止)に該当するか、判断する立ち場にない?
結局、新型コロナウイルス感染症を所管する元締めも一切動こうとはしませんでした。
最後に、厚労省結核感染症課に電話。こちらの担当女性職員は人格者で、話を丁寧に全て聴いてくれました。やはり人により差があります。
- 感染症法第4条における感染症対策協力の努力義務より人権擁護の義務が上位であることは認める
- 医師法、医療法所管部署(地域医療計画課)には内容を伝える
- PCRだけではなく、ワクチン接種、マスク着用を診療や面会の条件にしている医療機関や医師がいることを受け、全国保健所設置市や都道府県の衛生所管部署に対し、人権擁護の通知を出すか上司に相談する
国が動かず、現場の保健所で対応が異なり、有志医師の会、有志議員の会が連携して、国会議員を動かす必要がありそうです。
ともあれ、谷本議員が呉市から、病院でのコロナ差別にある程度対応するとの答弁を引き出したことは、大きな一歩となりそうです。