2023.8.4
精神病院への入院は3種類あり、精神保健福祉法第20条の任意入院、第29条の措置入院、第33条の医療保護入院です。この内、任意入院は本人の意思が反映されており、問題ないですが、措置入院と医療保護入院は、本人の意思に関係なく入院させる、強制入院です。
措置入院は、本人の自傷行為や他を傷つける恐れがある場合、都道府県知事が行うもので、やむなきものですが、医療保護入院は3親等以内の家族の内いずれかの同意があれば、入院させることができるものです。
平成25年度までは、身内の誰か一人が保護者と位置付けられ、保護者の同意を必要としていました。保護者となる優先順位としては、
- 成年後見人か補佐人
- 0親等(配偶者)
- 一親等(親子)
- 二親等(祖父母、孫、兄弟)
- 三親等(叔父・叔母、甥・姪)
となっていました。
法改正された平成26年度以降は、この保護者制度が廃止され、代わりに「家族等」となり、身内の責任が緩和されました。ところが逆に、例えば本人の子が同意すれば、配偶者が同意しなくても、強制力が伴う医療保護入院が成立してしまうという問題が生じていたのです。
私宛に最近相談があった具体例としては、実娘が母親を神奈川県内の精神病院に入院させました。母親はSNSでSOSを発信し、それをキャッチした同県内の男性と婚姻関係を結びました。夫となった男性は妻を救出すべく、弁護士と相談し、退院申請を試みました。しかし、法第12条に基づく神奈川県医療審査会において、「引き続き入院が適当である」との答申が出たことで、未だに退院できておりません。
しかも、入院費は娘が母親の通帳を横領・管理して、病院に支払っており、それ以外も私的にお金を引き出した形跡があります。平成25年度までの保護者制度では、法第22条第1項により、保護者は当事者の財産を保護する責務が課せられていましたが、当時の改正によって、この条項は削除されていたのです。
結局この第33条そのものが人権侵害の温床になっているのです。国連人権委員会も昨年我が国に対し、精神病院の医療保護入院を人権侵害に当たるとして、是正勧告を発しているのです。
そこで私は、先日当事者の夫と共に神奈川県精神保健福祉センターを訪ね、副所長と課長に面談。結局ここでは、医療審査会の議事録等の公開請求をするしか手立てを見いだせませんでした。それを受け、県内精神病院の監査権限を有する神奈川県精神保健医療グループリーダーを訪ねました。医療審査会の答申が出ていたことで、ここも重い腰を上げることはありませんでした。
ところで、平成23年度に制定された障害者虐待防止法によると、その第2条第6項第2号に、「養護者又は障害者の親族が当該障害者の財産を不当に処分、不当に財産上の利益を得ること」を虐待と定義し、これを禁じているのです。
今後は各市町村に設置している障害者虐待防止センターに相談を持ちかけることとなりますが、ここが真剣に相談に応じてくれるかが鍵を握っています。
因みに、去る令和4年12月10日に改正された精神保健福祉法によりますと、医療保護入院に関し、下記変更がなされました。
- 令和5年度から、家族等において虐待者を除外
- 令和6年度から、家族等が同意も反意も示さなければ、市町村長の判断で可能
①は朗報。②は本来家族不在を想定していましたが、家族がいてもその意思を明示できない状況であれば、医療保護入院が認められることになりました。これは更に人権侵害の可能性を拡大した改悪と言えましょう。
一方、国会においても、共産党の宮本徹衆議院議員が、医療保護入院を採り上げ、人権侵害を追求しています。
また、以前放映されたNHK特番においては、東日本大震災で帰還困難区域指定された地域に立地していた精神病院の入院者が県外各地の精神病院に分散移転されたことを採り上げていました。
新天地に移送された入院患者は当地の院長判断により次々に退院。50代男性はインタビューに答え、「震災が起こらなければ、私は一生隔離されたまま退院することはできなかった。震災に感謝している」と発言しています。
結局多くの精神病院では、親族と入院契約をして、入院費さえ稼げればいいのです。よきカモと言えましょう。
入院患者は外部との交信手段を極端に狭められ、スマホも取り上げられ、通信内容は病院に全て掌握されます。勿論外出は一切許されず、自由もありません。加えて、本人の同意なく、覚醒剤成分を含む向精神薬を処方され、禁断症状が現れ、決して改善することはないのです。いわゆる飼い殺し状態なのです。
自然共生党としましては、法改正に向け、人権侵害と断固戦って参る所存です。