街頭演説集

第336回 専守防衛による我が国の防衛費大幅増は中立外交に逆行!

2023.8.22

 作日8月21日は336回目の街頭演説。テーマは、防衛費増額についてです。

 昨年2022年12月16日、岸田内閣は、翌23年度から27年度までの防衛力整備計画において、防衛費予算総額を43兆円とすることを閣議決定しました。自民党内でもハト派と言われる宏池会の岸田首相が、既存レベルの1.6倍にも及ぶ防衛費増額を急遽目指すことには驚きです。背後に日米合同委員会の影がちらつきます。

 そもそも、専守防衛を掲げる我が国において、防衛費に歯止めをかける必要性から、田中角栄内閣時代に検討を着手。それを受け1976年度の三木内閣時に、防衛費のGNP(国民総生産)1%枠内を決定。1987年度の中曽根内閣になると、「GNP比1%枠の精神を尊重」と緩和しつつも、1%枠を大幅に超えることはありませんでした。その後GDP(国内総生産)に指標が変更となった1990年代においても、GDP比1%を僅かに超えたのは2010年度しかなかったのです。

 それが、菅義偉内閣の2021年度では5.3兆円と、GDP比1.24%といきなり跳ね上がり、2022年度には5。4兆円と聖域がなし崩しになったのでした。そして昨年暮れの岸田内閣による防衛費大幅増の方針決定を受け、今年2023年度は6.8兆円と大幅増となっていたのです。
 この背景には、以前と違ってメディアが国際金融資本に牛耳られたため、防衛費増額に関し、世論を啓発しなくなったことが挙げられます。

 これらを受け、去る6月16日には防衛財源確保法が、自公与党の数の力で成立。5年間で43兆円を確保するために、不足財源である14.6兆円を賄う主力財源として、防衛力強化資金を創設することを柱としています。それは、資産売却収入3.1兆円、特別会計繰入金1.5兆円を中心とする税外収入を積み立て、4.6~5兆円を確保するとしています。特別会計としては、

  1. 財政投融資0.2兆円
  2. 外国為替資金1.2兆円
  3. 病院独立行政法人746億円

が充当されます。
 それ以外には、決算剰余金の活用で3.5兆円、歳出改革で3兆円強を捻出するとしており、それでも不足する額の最大3.5兆円を埋めるため、増税が検討されることになるのです。
 法人税やたばこ税がそのターゲットに上がっていますが、何と言っても所得税の増税です。来年度から付加税として1%を上乗せしつつ、東日本大震災の復興財源となる復興特別所得税を1%減額して、目先の国民負担を和らげ、その実それを2037年度までだったのを20年間延長するという姑息な手段を行使するようです。つまり延長部分で所得税が結局増税となり、それを防衛費、即ち防衛装備品購入や防衛施設整備等に充当することになるのです。被災地の方の心情を害するこの方策は、許容範囲を遙かに超越しています。

 一方、この法律に関係して一足先に、防衛産業基盤強化法が6月7日に成立しました。これは、限られた発注枠で苦しむ防衛産業を支援し強化するための法律です。具体的には海外輸出に関して支援金を交付したり、倒産した場合は、一時的に国が買い取ることを可能にするものです。加えて機密漏洩を防ぐべく、守秘義務を課しました。
 新規契約もこの計画期間の5年間で、これまでの2.5倍規模に拡大しようとしており、防衛装備移転三原則の更なる緩和見直しも視野に入って参ります。

 想えば、先の東京サミットにおいて、岸田首相はウクライナに防衛車両100台を無償供与すると発表し、昨年には防弾チョッキを提供していて、NATO色一辺倒に傾倒して来ました。これでは中国、インド、ロシア、ブラジル、南アフリカを中心とするBRICS経済圏の拡大による、ドルに代わる基軸通貨が出た際に、我が国は非常に辛い立ち場になります。アメリカはデフォルトを免れたばかりで、ドルの価値が非常に不安定になっているからです。
 世界唯一の被爆国であり、交戦権を放棄した憲法を有する我が国において、中立外交を死守することが肝心で、国連憲章で未だ敵国条項が生きている現段階で、西側陣営とのみ協調を図ることは、安全保障の視点からも非常に危ういと言えましょう。
 それがこの度の防衛費増額を根拠付ける法案可決が、中国やロシアからは危険な国とみなされ、戦争に巻き込まれてしまい兼ねないのです。

第336回街頭演説 防衛費増額財源に所得増税と震災復興税は許せない!(2023.8.21)

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