街頭演説集

第339回 原発処理水海洋放出の既成事実を政府は隠蔽して来た!

2023.9.12

 昨日9月11日は、339回目の街頭演説。テーマは、福島第一原発処理水の海洋放出についてです。

 政府は去る8月22日に、汚染水をALPS(多核種除去設備)で浄化した処理水を海洋放出することを決定。同月24日から、東京電力が初の海洋放出を開始し、9月9日まで17日間で7,800tの放出を完了しました。これは年4回で合計年間31,200t、30年計画となっています。

 12年前の東日本大震災の巨大津波により第一原発が被害を受け、原発の電源が喪失。このため原子炉内の核燃料棒が溶け出し、それを冷却するため海水を汲み上げ使用し続けています。
 現在1日当たり90tの処理水を地上の貯水タンクに貯蔵し続けており、6月29日時点で全体容量の97%、133万8,000tが溜まっており、限界に近づいて来ていました。一見1日当たり460tを放出するので、タンクは減って行きそうですが、実際は年間の放出期間は初年度に限れば68日間。放出量31,200tに対し、新たな処理水の貯蔵は、90tの365日間分、33,850tとなり、逆に増える矛盾となります。
 ということは、2年目以降は放出量を徐々に増やしていく魂胆が透けて見えます。

 問題はALPSによる核除去です。64核種の内、フィルターに分離吸着できないのは、炭素14とトリチウムだけという説明でした。内炭素14の放射性物質は、1ℓ当たり42.4Bq(ベクレル)で国の基準2,000Bqを満たしているから問題ないとしています。

 ところが、実際は全210核種あり、除去できない核種が148核種もあったのです。しかも、除去できた核種毎の放射性データは9種しかなく、この点は政府が敢えて隠蔽していました。全核種トータルで告示濃度比総和1を満たしているから安全としたのです。
 加えて、それらの核種除去においても、その成果は28%しか現れず、2次処理が必要としており、この点も説明不足と言えましょう。

  IAEA(国際原子力機関)は、飲料水のトリチウム濃度基準が1ℓ当たり1万Bqを満たしているので、海洋放出を容認したと言います。しかしながら、万一被害があっても責任は取らないとしたのです。そもそもIAEAは原子力発電推進の立ち場を採っているので、第3者機関とは言えません。

 一方、2015年に政府は、「関係者の同意なくしては、海洋放出をしない」としていました。翌2016年に政府のタスクフォースチームは、処理水の処分方法について、5案を提示していました。

  1. 除染、希釈しての解法放出
  2. 除染、希釈、蒸発させての大気中放出
  3. 水素に電気分解しての大気中放出
  4. 深層地下にタンク毎埋設
  5. セメント等で固形化して地下埋設

 経費が最も安価である海洋放出を決め打ちして、検討を進めていた節が窺えます。実際、東電は放出用海底トンネルを1km先まで建設し、去る6月21日から、汚染されていない水を使って試験を開始していました。
 実は、トリチウムは三重水素と呼ばれ、酸素と結合し水になります。ですから高度な技術で経費をかけない限りは、トリチウム水を分離できず、ALPSでは処理できないのです。
 この半減期が12.3年。ですから12年前の3月11日に津波被害を受けて丁度12年目の3ヶ月を経過した翌日から試験を開始したとも言えましょう。

 その上で、福島県漁業組合連合会に理解を得易いとして、1日当たり63Bq/ℓとしました。国における海洋放出基準は6万Bq/ℓですが、この度の放出計画は、その1/40の1,500Bq/ℓ以下としたのです。但し、漁協に理解を得たという話は聞きません。
 その結果、去る9月8日には、福島漁業関係者151名が、放出仮差止を求めて国と東電を提訴したのです。

 問題は、ALPSでの処理が不可だとして、国の基準値以下に希釈して放出すると言っても、最終的に全て放出する総和は変わらないので、一種の安心感を与える偽装工作と言われても仕方ないでしょう。

 この結果、年間22兆Bqのトリチウムを放出することになりました。実は、事故が起こったからトリチウム水を希釈して放出するのではなく、通常運転時からもトリチウム水はこれまで放出し続けて来たことを知るべきです。政府は原発政策において、このことをこれまで一切説明して来ていませんでした。福島第一原発では、通常運転時には年間2.2兆Bqを放出し続けて来たのです。
 想えば、我が国の原発は全て海岸沿いに立地しています。それは原子炉で核分裂を起こす際発する高熱エネルギーの内2/3は海水を活用しての冷却水を海洋放出する仕組みとなっていたのです。これでは、平素から海洋汚染を続けて来たということと同義となります。
 実は、全世界の原発がそうなのです。例えば中国では、事故とは関係なく通常運転時で各原発につき100兆Bq以上のトリチウム水を海洋放出して来ました。この度の政策決定を受け、我が国の水産物の輸入を拒否すると同時に、日本に対して嫌がらせのメールが中国から多々着信しておりましたが、その後習近平が抑制の通知を出しました。それは、ブーメランで帰って来る恐れが出て来たためと推察しています。

 そもそも海は全世界の共有財産であって、海洋放出することそのものが国際法たる海洋法に基づく国際条約に違反する行為なのです。しかもロンドン条約では、放射性廃棄物の海洋投棄を禁じており、これにも違反しているのです。とどのつまりは、原発政策そのものが間違っているのです。

 今回の海洋放出を結論在りきで進めた背景には、国の核のリサイクル、プルサーマル計画があると睨んでいます。原子炉を稼動させることで、核燃料棒から摘出されるプルトニウムとウラン等の混合燃料物、いわゆるMOX燃料を生成することで、新たな原発燃料に転用できるのです。
 全国から集めたプルトニウムを所有し続けることは、核爆弾に転用される恐れがあることから、国連の敵国条項に入っている我が国は、IAEAから常に監視されています。ですから、核の平和利用の美名の下に、青森県の六ヶ所再処理工場でMOX燃料に加工することにしています。ところが同工場は過去に放射能漏れ事故が多発し、データ改竄報告も発覚したことから、未だに運転開始に至っておりません。
 これが稼動した場合に生じる処理水の海洋放出計画があり、これは多核種全てにおいて、計画を既に政府に提出済みとなっています。トリチウムに限って言えば、年間なんと1京8,000兆Bqもあるのです。ですから、同工場からは海底トンネルが3km先まで建設されているのです。

 つまり、これまで隠蔽し続けて来た原発による処理水海洋放出を、プルサーマルにおいても継続させるため、政府としては既成事実を作り、何としても海洋放出を実現させたいのです。

 今後の改善策としては、半減期を進捗させるため時間を稼ぎ、敷地内に貯水タンクが敷設できなくなれば、地下埋設で時間を稼ぎ、新たな低コストによる技術開発を待つのがベターだと考えています。
 自然共生党と致しましては、原発政策の完全な方向転換を進めるため、今後も国民啓発に邁進して参る所存です。

第339回街頭演説 トリチウム海洋放出の真意は六ヶ所再処理工場の稼働!(2023.9.11)

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