街頭演説集

第18回 公共下水道と集落排水

公共下水道と集落排水事業は国の縦割り行政が弊害!

Facebook 2015.11.30

 本日は18回目の呉駅頭街頭演説。この日は呉市保健所のキャンペーン活動とぶつかりました。
 さてこの日テーマは、公共下水道と集落排水についてです。
 集落排水事業は国土交通省が所管する公共下水道事業と違って、農林水産省所管の補助事業です。農業集落や漁業集落という集落単位で生活汚水を終末処理施設に集約し、そこで浄化した上で海に流します。単位が集落というだけで、公共下水道と中身は全く変わりません。
 呉市音戸町は合併直前から公共下水道事業(特定環境保全公共下水道事業)の承認を受け、音戸北部区域と南部区域とに計画区域を分け、合併町の中では遅れて事業着手し、現在各地で管路の布設工事を進めています。
 具体的には、平成23年度に音戸町渡子の埋立地に音戸北部浄化センターを建設完成し、渡子を初めとする地域の汚水処理を行って来ました。
 一方、渡子地区の隣に位置する田原地区では、平成17年度に漁業集落排水事業の承認を受け、18年度から事業を進めましたが、終末処理施設建設用地の買収に失敗し、平成21年度に事業が頓挫したままの状態になっていました。
 私は以前から、田原から僅か2キロメートルの所に音戸北部浄化センターがあるのだから、集落排水事業に拘らず、公共下水道事業に組み入れ一本化すべき、と主張して来た経緯があります。その方が終末処理施設を新設する必要がなく、施設建設費に加え、人件費を含めたその管理コストが節約できるためです。
 ところが、それができない理由として、渡子地区と田原地区は別々の事業計画だったため、既に渡子では管路をかなり布設していますが、その管路に田原地区からのも受け入れると容量をオーバーするというのです。よって新たにもう一本幹線管路を布設し、且つ途中でポンプ所を複数箇所設置する必要があります。私は例えそうであったとしても、長い目で見れば浄化センターの運営費が省略できるため財政的にも有利なはず、と訴えて来ました。
 ところが先般の呉市議会での行政報告で、公共下水道への切り替えに難色を示して来た真の理由が判明したのです。
 実は、田原地区漁業集落排水事業は、既に1億7,700万円の資本投下をしていたのです。この内容を私が糺すと、同地区内の一部に対し、既に枝線管路を布設したということです。
 これは、終末処理施設用地の確保が未確定のまま、勇み足で枝線管路を建設したことになります。推察するに、用地交渉はそれまで順調だったこと、農水省の事業補助枠に余裕があったこと等が考えられます。
 しかし、その後用地(ようち)交渉は決裂致しました。交渉決着の契約書に判をついて、初めて管路布設を着手するべきで、この考えは甚だ幼稚(ようち)と言わざるを得ません。
 つまり、集落排水事業を公共下水道事業に計画転換することは可能だったとしても、それでは6,700万円の国庫補助金を、補助金適正化法に基づき返還しなければなりません。このことを当局は議会に明らかにして来なかった訳です。
 結局このような事態に至ったのは、呉市の勇み足もさることながら、国の縦割り行政の弊害があった訳です。公共下水道は国土交通省の補助率1/2、集落排水事業は農林水産省の補助率1/2で一見同じようですが、前者は幹線管路のみが補助対象に比べ、後者は枝線管路(但し2軒以上が連単している区間)も補助対象であるため、管路布設では漁業集落排水事業が有利になることも、私の質問で判明致しました。
 そういう中で平成25年度に、国交省と農水省が連携して、二つの事業における汚水処理施設の集約化と効率化が図れる方針を立てました。環境省を含めての3省合意が成されたのです。このことで、田原地区の漁業集落排水事業の終末処理施設を建設せず、隣接する渡子にある音戸北部浄化センターに管路を接続することが可能になったのです。
 しかも、建設時期が大幅ずれ込んだことで、その間田原地区の人口激減や田原小学校廃校により、計画水量が当初計画から640人減り770人となります。このことにより、田原地区から音戸北部浄化センターへ向けて、1.3キロメートルまでは幹線管路を布設する必要がありますが、その後は既設の渡子地区の公共下水道の幹線管路を代用できることになります。加えて、汚水の自然流下を促す途中の汲み上げポンプ所は9箇所から3箇所に減らすことができるそうです。
 呉市は現在、ハコモノを集約し、新たにハコモノはできるだけ建設しない大方針を掲げて公共施設再配置計画を推進しています。結果的にその方針にも合致することになりました。
 ただ、国が縦割り行政のまま、省庁間の施策を各々勝手に進めていた場合、呉市としては大変困った状況に陥る可能性を秘めていたのは確かです。そのことで田原地区住民に迷惑がかかってしまうことになり、その悪影響を最小限に抑えることができたのは、不幸中の幸いでした。
 因みに、今後のスケジュールは今年度新事業計画の承認を受け、28年度実施設計、29年度管路布設工事再開となります。そうなりますと、34年度一部供用開始、35年度整備工事完了、36年度田原全域での供用開始と予想されています。
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