新規漁業者支援に豊島小学校跡地活用は愚策!
Facebook 2016.10.5
呉市は近隣8町と合併し、第1次産業の振興も特に重要なテーマとなりました。その中でも、豊浜町は漁業で生計を立てている家が多く、たちうおの特産は有名です。
ところが、その漁業の島も後継者不足に悩んでいます。そこで呉市が新規漁業者支援事業を近年スタートさせ、今年度は720万円を予算化しました。これは島外からの若者が先住の漁業就業の親方に弟子入りして実地で漁業を学び、それに対しての研修費や、着業にかかる経費を助成するものです。すでに何人か実績があります。
問題は、研修時の宿泊施設や、着業して島に在住を決めてからの定住場所です。当該地区には不動産業者はなく、貸家物件は殆どありません。そこで呉市当局が目をつけたのが、平成25年度末を以て廃止された豊島小学校跡地の活用です。この校舎は平成4年度から供用開始され、比較的新しいため、2階の教室をアパートに、1階の講堂部分を交流広場に改修するという趣旨です。
そこで、国の地方創生先行型交付金を全額活用して、平成26年度末に300万円の調査費を組み、そっくり27年度に繰り越しました。去る9月定例会で27年度の決算を審査する特別委員会で私は、この調査費の執行について質疑。それによると、復建調査設計㈱に予算を超過する322万円で委託し、基本設計を行ったというのです。
なるほど、調査費といっても、漁業者の住居と島民の交流広場というコンセプトは当初からできていたのですから、後はその仕様に基づいて基本設計ということになります。即ち基本構想でも基本計画でもない訳です。
であるなら、今年度は当然実施設計、来年度は施工となるのが物事の順序というものでしょう。ところが今年度予算720万円の内、豊島小学校跡地活用策に係る予算は、再度200万円が組まれたのです。基本設計ができ上がっている段階で、調査費計上とは一体どういうことなのでしょうか?当局の答弁によると、このアパートの管理を地元住民団体にお願いしようとしたところ、難色を示されたことで、暗礁に乗り上げているらしいのです。だから、再度その運営方法を探るための基本調査らしいのです。
当初から管理運営を地元に任せるのは無理があることは、分かっていたはずです。しかも、呉市は昨年度末に公共施設等総合管理計画を決定し、新たな箱物はできるだけ建設せず、既存の建物を再活用しつつ集約すると謳っています。併せてその下位計画である第3次公共施設再配置計画では、平成27年度から29年度までに、コミュニティ施設や集会施設の集約化を計るとしており、これら計画に逆行する愚策であると言っても過言ではありません。
おまけに豊浜町には、人口が少ない中でまちづくりセンターが2箇所もあり、交流スペースに事欠きません。更には離れ小島の斎島を除き、同町にはコミュニティ施設が7箇所もあるのです。これらの稼働率は、急激な人口減少に伴って極めて低くなっており、この施設の維持管理費支出に呉市は頭を悩ましているのでした。加えて、本事業を所掌する港湾漁港課が所有する施設として、大浜緑地公園管理棟がありますが、これも地元住民に管理を業務委託しているものの、その集会スペースはあまり使われていません。
私は、この様な状況下での新たな箱物整備は投資効果からみて不適切な支出であると訴えて来ました。そもそも学校跡地は原則売却する方針が平成19年度に立てられており、売却の選択肢を検討せずに、いきなりの水産関連施設への適用は過去の施策との整合性が疑われます。つまり方針が一環していないのです。
一方、呉市は住宅政策の一環として、島嶼部の空き家実態調査費1,500万円を、同じ平成26年度末補正で予算化しました。これは若者が島外に流出することで、空き家が増えている実情を調査し、住民の意向を踏まえて物件化可能な住居を特定し、空き家バンクに登録する事業です。つまり現状は空き家物件が皆無であっても、それを物件化することは十分可能な訳です。
実際、豊浜町は今年度予算において、地域おこし協力隊員の受け皿候補に挙がっているのです。これは呉市において27年度からスタートした、総務省きもいりの全額国費事業で、都会から田舎に転居して地域おこしを担当する意欲あるIターン者を公募して活用するものです。昨年度は豊町と下蒲刈町に移住し、3年間呉市嘱託職員として活動中です。これを今年度は蒲刈町と豊浜町に受け入れようとするものです。
豊浜町には空き家物件がゼロと言いながら、地域おこし協力隊員を受け入れる段になると、実は空き家が見つかっているのです。つまり必要性に迫られたら、空き家を改装して借家に転換することは家主にとって改装リスクが少ないため、物件化が容易であるということなのです。
これを新規漁業修行者に移し替えますと、そっくり同様のことが言えます。あらかじめ親方の下で修行した若者が、島に定住するために物件を探すことになりますと、ニーズが的確に把握できるため、物件改装も行うし、家主にとって家賃収入による投資経費回収の目処が立つ訳なのです。
ということで、昨年度繰り越し執行した322万円は全くの捨て銭になったと言われても仕方ありません。更にそれへの上塗りの如く、今年度200万円の調査費を再計上しました。私一人が本予算に反対しましたが、具体的に何に使おうとしているのか、全く見えて来ません。市長は速やかに決断して、潔くこの失政を認め、今年度予算に計上するのを断念すべきでした。
私は、本事業に係る予算執行の動向を今後も見極めて参る所存です。