街頭演説集

第219回 有機食材給食の導入

有機食材給食導入は自然栽培農業への転換とセットで!

Facebook 2020.1.20

 去る1月14日は219回目の街頭演説。テーマは有機食材給食についてです。

 平成17年に食育基本法が制定されましたが、公立学校や公立保育所の給食食材は、未だ慣行栽培が殆どです。つまり、公共が導入し得る食改善の基本である給食がこの様なありさまでは、法律が泣くという訳です。
 韓国やフランスでは、立法により学校給食に50%以上の有機食材導入を義務付け、各々2021年、2022年から実施されます。我が国では大きく遅れているばかりか、2018年12月から作物の残留農薬基準を大幅緩和しました。しかも、除草剤「ラウンドアップ」に含まれているグリホサートが発癌性物質であることが明らかになり、同年8月にアメリカのカリフォルニア州裁判所がラウンドアップの製造元「モンサント社」に対し2億9千万ドルの賠償命令を下した直後なのです。
 千葉県いすみ市では、平成30年度、全小中学校2,300食の有機米給食導入を5年間かけて達成しました。国が動かないなら、地方自治体から模範を示すしかありません。
 同市は米所ではあっても、全てが化学肥料や農薬を使用する慣行栽培でした。それを市として、環境保全型農業に転換する誘導策に打って出て、有機米栽培に転換する農家に補助金を交付したのです。但し、米の無農薬栽培は収穫高が約2割減ると言われており、同市が農協と交渉して、慣行米60kg13,000円に対し、有機米を20,000円に、有機JAS認証を受けたら23,000円で買い取ってもらうようにして、農家への所得保証に深く関与致しました。現在は「いすみっこ」との銘柄で全国販売を展開し、農家の所得安定に貢献しています。
 市としては次なる段階として、有機野菜を給食に導入していて、栽培農家と連携してその品目を増やしています。因みに現在、コマツナ、タマネギ、シャガイモ、ネギ、ニラ、ダイコンの7品目となっています。

 さて、去る12月定例会で私は、呉市立学校や保育所への給食に有機食材導入を提唱しました。呉市は現在、給食を賄えるだけの有機米や有機野菜の収穫はありません。それが根拠に、安定供給の観点から現状では困難との後ろ向き答弁は最初から分かっていました。問題は市長のやる気です。市長がその気になれば、有機栽培を政策誘導すればよいことです。私がいすみ市の実例を質問の中で出したのは、当局に言い逃れできないようにするためでした。
 実は、全国で初めて全小中学校に有機米・野菜を給食に採用したのは石川県羽咋市です。同市は平成28年1月に全小中学校1,455食を達成しました。きっかけは、世界初の無農薬無肥料栽培でりんご作りに成功した青森県の木村秋則氏を迎えて市が講演会を開催したことです。その後自然栽培推進課を設置し、セミナーを開催して自然栽培農家を増やして行きました。更には、化学肥料や農薬を販売している農協までもが自然栽培の斡旋までするようになったのです。
 またいすみ市では、有機米転換に係る米の購入費アップを給食費に転嫁させず、その差額を税金で補填しました。現呉市政は呉駅周辺地域総合開発や青山クラブ大規模改修等、ハコモノ中心の施策ですが、これでは少子高齢化から脱皮することはできません。ハードではなく、必要なソフト事業に予算を振り向けるべきなのです。
 実際昭和20年代と現在とを比較すると、成人男子の精子数が1/3に激減、奇形な精子も多くの成人男子にサンプルで60人中58人発見されたと某研究機関の発表もあります。
 コンビニや外食ファミリーレストランでは、ミネラル量が厚労省の定める基準値には遠く及ばないとの食品衛生機関への委託調査でも明らかになっています。

 食の改善こそが少子高齢化打開の鍵を握っていると言っても過言ではありません。何故戦後急速に子どもが減ったかといいますと、核家族化や住宅ローン支払い、夫婦それぞれがマイカーを所有し、塾通いや習い事等で養育費に多大な経費がかかることから計画出産の傾向があることも一つの要因でしょう。それ以上に、農薬や添加物等の石油由来の化学物質が体内に蓄積していることが挙げられます。
 石油化学コンビナートが林立し出した昭和30年代以降、農業は人糞や家畜堆肥から化学肥料に大転換しました。これが土中の微生物や昆虫を絶滅させ、それを補い、元に戻そうとする自然の働きが雑草です。雑草は枯れることで、土中で失われた養分を取り戻そうとする自然の働きだったのです。
 ところが雑草が農作物の栄養を吸収し、成長を阻害するとの理由で、除草剤という農薬が普及しました。栄養のない野菜には害虫が浸食するため、それを殺虫剤という農薬で殺すという過ちを犯し続けて来たのです。真に栄養価のある野菜、完熟堆肥下且つ無農薬で生育した作物には本来害虫とは無縁なのです。雑草も害虫も、化学物質の危険から人間を守るために出現して来たのです。この自然の摂理に反しているのが悲しいかな、現在の農業の姿なのです。
 正に便益さを求めるために自然を破壊して来たのが人間の犯した罪と言えるでしょう。今一度自然と共生する原点に立ち返らねばなりません。

 そこで我が呉市においては、農薬を使わない自然農法や有機農法に転換を促す誘導策を導入しつつ、それを食数の少ない蒲刈学校給食共同調理場や蒲刈保育所をモデルに有機食材給食を導入すべきです。その後それをどんどん他の合併町に展開するのです。幸い蒲刈町は、独自の炊飯器を有する市内唯一の給食調理場、いわゆる自所炊飯という利点、地元特産の自然海塩である「藻塩」を使用できることから、食育のモデル地域とするのです。
 旧市内の小学校は、呉市学校給食協会が広島県学校給食会から随意契約で米を購入しています。これらは広島県産との触れ込みですが、県内各地の同一品種をブレンド、混在させており、どの品種なのかを学習する機会を児童から奪っています。真の地産地消ではない訳です。
 有機栽培農家を総合的な学習の時間を活用して、現地で学ぶ授業は食育と環境教育に大いに役立つでしょう。米や野菜のありがたみを泥まみれになって体感し、昔存在した田んぼ内のどじょうや昆虫に触れることも重要な体験学習となります。
 そして、中学校デリバリー給食の愚策に気付くべきです。献立は呉市費栄養士が作るも、食材購入は受託業者です。弁当の単価契約ですから、喫食率が28%に落ち込んでいる現在業者の経営を圧迫し、それを逃れるために益々有機とは無縁の食材を購入することになるでしょう。つまり、デリバリー給食もきちっと食育を行っているという市教委の答弁は欺瞞に満ちているのです。
 以上の理由から私は、環境保全型、自然栽培農業への転換に加え地産地消と共に、有機食材給食の導入を今後も訴え続けて参る覚悟です。

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