街頭演説集

第35回 呉市版CCRC構想

呉市版CCRCに軽々しく飛びつくのは危険!!

Facebook 2016.3.29

 昨日は35回目の街頭演説。テーマは、呉市新年度予算に計上された、呉市版CCRC構想策定についてで、これには500万円のコンサル委託調査費が付きました。
 先ずCCRCとは、元気な高齢者の共同体のことで、アメリカがその本場ですが、共同体を集合住宅の場と捉え、自治会活動や生涯学習、在宅福祉などを、住宅内で完結します。 そこで現政権が、地方創生や一億総活躍社会を掲げる中で、日本版CCRC構想を急遽有識者会議で検討させてまとめました。アメリカ版との違いは、共同体を集合住宅ではなく、地域社会に置き換えたことです。正に地域社会への奉仕活動を基本とし、公民館等へ出掛けての生涯学習、そして将来介護が必要になったら、地域に住みながら在宅福祉や地域医療を受けるとの考え方です。これは、住み慣れた地域で生涯在宅福祉や医療を受ける、地域包括ケアシステム構築と連動致します。
 呉市は、まち・ひと・しごと総合戦略をもうすぐ策定しますが、それに基づき平成29年度以降の地方創生交付金をあてにして、この日本版CCRCにいち早く飛びついたと言えます。
 またこの背景には、日本創生会議が昨年6月、「東京圏高齢者危機回避戦略」として提言をまとめたことがあります。これは、団塊の世代が後期高齢者になる10年後に、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県において、介護施設が13万人分不足するとして、地方拠点都市への転居を促す内容です。
 その移転先候補に呉市は入ってはいませんが、来る4月1日より中核市の仲間入りをすることで、呉市を核とした連携中枢都市圏形成を視野に入れていることから、東京圏の元気な高齢者を呉市に移転して頂き、地域社会で活躍してもらおうという構想なのです。
 ただ、いいことづくめではありません。先ず、若者の流入と違って高齢者が呉市に転入して来られても、市税増収の影響は少なく、将来介護保険や医療保険財政を圧迫することになります。国は拠点住宅のモデルとしてサービス付き高齢者向け住宅を例示しており、これだと介護保険の住所地特例が使え、介護給付は転入元自治体の介護保険財政からされることとなりますが、介護を受けるようになるのは将来のことですから、住所地特例がいつまでも使えるかの保証がありません。
 また、サービス付き高齢者向け住宅には既に居住者がおり、国交省補助金を活用して新たなサービス付き高齢者向け住宅を民間会社等が建設したとしても、東京圏からの転入者を限定することは先ずできません。呉市の答弁では民間空き家を活用することも視野に入れているとのことですが、これとて、東京圏高齢者を限定することは、それなりの特典を与えないと空き室が埋まらず、施主からすれば投資額を回収できません。
 そこで、施主や居住者に恩典を与える必要がありますが、高齢者優良賃貸住宅を国交省が推奨した際、呉市もそれに乗っかりました。施主に対して建築費助成を行い、入居者には10年間家賃を半額程度に抑制し、その穴埋めに税金を投じたのです。ところが、10年経てば家賃が倍になるので、それに呼応して入居者の転居が相次ぎ、空き室が増え、施主において投資額回収が難しくなっているのが現状です。
 また、地域社会に貢献するのをどうやって担保するというのでしょう。入居者の行動は自由ですから、奉仕活動を入居条件にするなど、非現実的です。それらをサポートするコンシェルジュの派遣を考えているとの答弁がありましたが、その人件費を住宅の施主が持つはずはありませんし、それを全額公費でみるというのでしょうか?入居者からみても、東京圏から転入して来る60才以上の非要介護認定者を条件とするなら、家賃補助等の特典がないと、コンシェルジュ派遣だけでは難しいでしょう。
 結局呉市は、東京圏の高齢者以外にも、市内高齢者の住み替えも対象に考えていると答弁せざるを得ませんでした。そうなりますと、一人暮らしの高齢者が、寂しさを紛らわすため多人数交流を望み拠点集合住宅に転居したとして、却って空き家を増やすことになりかねません。これでは呉市の空き家対策の足を引っ張ることになりかねず、支離滅裂です。 しかも、これらの特典に係る財源保証は、国においてまだ何も決まっていません。つまり、有識者会議の提言は、政権がにわか仕込みでまとめさせたもので、穴だらけなのです。検討が全く足りません。即ちこれには、有権者の支持を得ようとする政治的裏があるのです。それにすぐ飛びつく呉市も呉市です。
 この様に、方向性が殆ど定まっていない段階でコンサルに発注しても、実を伴う構想や計画がまとまる道理はありません。私は、これらの問題点を先の予算委員会で指摘しましたが、それも含めてコンサル会社に考えてもらうとの答弁に終始しました。そのような無責任なコンサル発注では、受託会社も困ろうというものです。
 このCCRCは、拠点住宅は民間施工であり、この建築費補助、コンシェルジュ人件費補助、入居者への家賃補助といった、様々な税金のばらまきを含んでおり、大問題です。しかも、東京圏から元気な高齢者を市民の血税を投じて迎え入れようというのも納得が行きませんし、更にその高齢者が地域活動にボランティアを含めて積極的に参加するのは夢物語にしか過ぎません。
 そして何よりも、将来生じる医療や介護給付により、医療保険や介護保険財政圧迫要因にもなります。それは引いては、市民の保険料負担増に繋がることを知っておくべきです。
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