街頭演説集

第36回 学生シェアハウス

斜面市街地空き家を活用した学生シェアハウスは机上の空論!?

Facebook 2016.4.7

 一昨日は36回目の街頭演説。呉市新年度予算における空き家を利活用しての定住促進策がテーマです。
 呉市は、昨年度500万円かけて行った空き家調査の結果を基に、4つの空き家利活用策を、新規に今年度に向け予算化致しました。
 その第一は、子育て世帯定住支援です。これは、出産予定を含み中学生以下の子どもがいる世帯が戸建て中古住宅を購入する際に、購入費の1/2を30万円を限度に助成する制度です。これに親世帯と直線距離で1km以内居住の場合は、10万円が近居加算されます。最大40万円で50件を見込み、2千万円を計上しました。
 第二は、移住希望者住宅取得支援です。これは、市外からの移住希望者が戸建て中古住宅を購入して移住する場合、購入費の1/2を50万円を限度に助成するものです。建物のみを購入して、土地は賃貸にする場合も、子育て世帯定住支援と併せて可能です。更に子育て世帯の場合は30万円が、親世帯と近居の場合は10万円が、島嶼部居住の場合は10万円が各々加算され、最大100万円の助成となります。これを20件と想定して、2千万円を計上しました。
 第三は、空き家家財道具等処分支援です。家主が、空き家を物件化する際に足枷となっている既存の家財道具を処分する場合、10万円を限度に全額助成される制度です。50件分の500万円を予算計上致しました。呉市空き家バンクへの登録、若しくは宅地建物取引業者との売買・賃貸仲介契約締結が条件となります。既に賃貸入居されている方が亡くなって、引き取り手がない場合の活用はできません。
 この3つの施策は、呉市空き家適正管理条例やその後に制定された空き家対策推進特別措置法を援護する意味合いもあり、空き家の物件化や解消に向けて、ある程度有効だと考えます。
 さて問題は、第四の学生シェアハウス支援です。これは斜面市街地における空き家の活用策を知恵を絞って検討する中で、捻り出した施策です。即ち、市内の大学等(呉高専を含む)に通学する学生が複数名、シェアハウス形態で賃貸居住し、地域の自治会活動に参加したり、近隣高齢者のごみ出し等生活支援を行うことを条件に、家主、居住学生双方を支援するものです。
 具体的には、家主がリフォームする際、工事費の1/2を100万円を限度に助成します。学生自らがDIYリフォーム(日曜大工)する場合は、原材料費等を50万円を限度に全額助成します。加えて入居学生1名に対して、月額5千円の家賃助成を行います。平成30年度までのモデル事業として、リフォーム物件3件300万円を、リフォーム後の8ヶ月間の家賃助成として1件当たり3名居住するとして、36万円を新年度予算計上しました。
 呉市が、提携する大学の協力を得て学生アンケートを取ったところ、グループ居住やボランティア活動に興味を持っていると回答した学生が一定程度に達したため、ニーズがあると判断したという当局側の答弁でした。しかし、希望を述べるアンケート回答と現実は大きなギャップがあるということを知っておかねばなりません。現代の学生は昔と違って、親の仕送りを頼りに、ワンルームマンションを好みプライバシー重視です。しかも車を所有しますから、車庫付きや住居までの参入が容易な場所を好みます。斜面市街地の複数入居にニーズがあるとは、非常に考え難い訳です。
 しかもモデル事業とあって、今のところ平成30年度限りの家賃助成となっており、成功すれば助成継続も十分考えられますが、その時点でまだ在学中の入居学生にとっては、入居の際に非常に不安です。
 家主から見ても同様で、3年後に家賃助成が切れて、学生が退去することになったり、学生が卒業して、その後家賃助成が見込めないため、新たに学生が入居しないケースが考えられます。そうなりますと、リホームに投資した費用を回収するために、学生以外でも誰でも入居してもらうことは避けられず、制度そのものの意義がかすれてしまいます。
 そして、学生の地域活動に対する担保が取れるのか、甚だ疑問です。これは、先週演説したCCRCにおける高齢者の複数入居の際の地域活動条件に担保が取れないのと、全く同じ図式です。
 自治会活動の基本は何と言っても、自治会加入です。自治会加入を条件とするのかと私が当局を質したところ、学生に対してその条件を課すと、入居者が激減することを恐れて、それはできないとの答弁でした。また、入居当初ボランティア活動をしますと、学生が言ったとしても、その宣誓書の証文をしたためることはありませんので、言動に行動が伴わないことは火をみるよりも明かです。しかも地域活動の捉え方は個人差があり、個人の主観によるところが大きいため、学生本人が「私は地域活動を行っている」と弁明すれば、それ以上の追求は極めて困難です。そもそも、学生の場合は親元に住民票を置いている場合が殆どですから、地域に溶け込むのは限界がある訳です。
 そこで推奨大学において、入居学生の地域ボランティア活動を卒業単位に加えることに踏み切ることは一手段です。しかし、僅か3名程度の学生のみを対象にボランティア活動を単位にすることはできませんので、全体でのボランティア活動を視野に入れることになりますが、親元から通学している学生も地域活動に協力している場合があり、その学生も地域以外のボランティアを別途行っていたりして、現実的ではありません。
 私は、リフォームに踏み切る家主がそもそも出現するのか疑問を持っています。またもしリフォームしたとしても、いずれは学生入居ではなくなり、高齢者や生活保護受給者を対象とした入居物件になり下がってしまうのではないか、学生シェアハウスの意義はなくなってしまうのではないかと、懸念しています。即ち、学生のための物件化は初期段階に止まり、リホーム補助のアリバイ作りだった言われるのが落ちで、机上の空論になる可能性が高いと考えます。
タイトルとURLをコピーしました