街頭演説集

第122回 特定健康診査

メタボ健診の促進に、安易な自己負担無料化は自殺行為!

Facebook 2018.1.15

 本日は122回目の街頭演説。テーマは特定健康診査、いわゆるメタボ健診について考察してみたいと思います。
 呉市は、高齢化率が人口15万人以上の都市で日本一の34%。総合病院が4箇所もあり、医療機関が多いこともあって、国民健康保険被保険者の高齢者占有率が52%もあります。そのことが、医療漬けになって医療費が全国平均を上回り、普段から主治医と相談しているため、逆に特定健康診査受診率が24.3%と、全国平均の35%に比べて低い訳です。
 とろこで、その特定健康診査、いわゆるメタボ健診は、平成20年度施行の高齢者医療確保法(旧老人保健法)による後期高齢者医療制度導入に合わせて医療保険者に義務づけられました。その対象は、40歳から74歳まで全ての公的医療被保険者です。
 当時、肥満の方が成人病にかかり易いとされ、これをメタボリックシンドロームと呼びました。
 メタボ健診がスタートした平成20年度当時は、24年度までの期間において、国が定める受診率を満たさない自治体への国保事業には、調整交付金を10%減額するという、政策があったのです。現在はその施策はほぼないとのことですすが、そうは言っても国の誘導目標は厳然とあり、それをクリアするための施策展開に係る経費に対し、国と県が国基準の1/3ずつ調整交付金を交付するようになっています。つまり、ムチとアメと言えましょう。
さて呉市は、制度開始から昨年度まで、健康診査受診料を、呉市医師会と協約して市民税課税世帯限り千円に設定しました。非課税世帯は無料です。ところが、今年度から課税世帯でも無料化したのです。
 しかし、受益者負担原則の規律を破るこの重要な政策転換を、議会に一切説明しておりませんでした。つまり何の議論もなく、今年度予算が可決されたことになります。予算書を見ても、無料化について記述されていませんので、全く分かりません。
 平成28年度決算を見ますと、特定健診受診者は8,973人であることから、これを無料化する前提で、29年度予算では、約13,400人分として計算しました。この内、無料化される課税世帯が約8,700人なので、自己負担千円がなくなりますと、約870万円の負担増となります。これは被保険者が納付した保険料が直接の財源となります。 実は、特定健診に係る実際の費用は、個別健診で8,330円、集団健診で6,534円です。つまり昨年度までは千円との差額を保険料と国県交付金で賄い、今年度からはその全額が公費負担となる理屈です。
 そして、昨年度健診受診者8,973人中、その後の特定保健指導受診者は、僅か24.3%の1,111人でした。その内、状態の軽い方に対する動機付け指導が271人、状態の重い方に対する積極的指導は僅か14人しかいませんでした。これは動機付け指導が無料なのに対し、積極的指導は自己負担が3千円かかるためです。
 因みに動機付け指導に係る実際の費用は、公共施設で行う非施設型で14,040円、医療機関で行う施設型では9,800円です。それに対し積極的指導に係るそれは、非施設型で21,300円、施設型で19,000円もかかるのです。その差額はやはり公費負担となります。ということは、呉市ではそれを負担する国保料以上に、国や県から調整交付金に加算されたとしても、国や県の一般財源を苦しめることになる訳です。
 実際、制度スタート当初は国民医療費が年間約30兆円でした。制度導入で重篤化や慢性化を予防する効果で、年間2兆円の削減効果があると、厚労省は豪語していました。ところが、制度導入から丸10年経った現在、医療費は42兆円まで膨れ上がってしまったのです。
 一方、メタボ健診のチェック項目は、先ず腹囲です。これは男性85cm、女性90cm以上が危険信号となります。その網に掛かった方が、血糖値、コレステロール値、血圧のどれか二つの国基準をオーバーすると、忽ち特定保健指導対象者になるのです。
 例えば血圧。平成12年度当初180を超えると危険とされて来ました。それが日本高血圧学会の意見により、徐々に引き下げられ、特定健診スタート時の20年度には130まで引き下げられたのです。つまり、これにより多くの国民が特定保健指導対象者になったのです。その後国際基準が140に引き上げられ今日に至っていますが、保健指導を受ければ、当然降圧剤の処方の話が出て参ります。降圧剤は日本で最も売れている薬剤と言われ、70歳以上の高齢者の半数が服用していると言われています。
 降圧剤とは、化学物質の毒作用で血圧が下がる反応を利用したものです。薬物療法は、主作用で狙いの症状が治まったとしても、副作用で別の症状が必ず現れるものです。いわゆる対症療法と言われる所以です。この副作用を抑えるため、別の薬を処方されると、副作用の連鎖という泥沼地獄に嵌まってしまい、飲み続けることで免疫力の弱い身体になり、医療保険料や介護保険料の更なる増加や、財源確保のための消費税増税に繋がることは明かです。
 代表的な降圧剤であるハイトラシンの副作用として、意識喪失、肝機能障害、腎機能障害、めまい、頭痛、貧血症、低血圧症、過敏症、インポテンツ等が見受けられ、これらは薬剤の添付書に記述されているのですが、医者も患者も誰も読んでいません。そればかりか、注意書きとして、慎重投与の対象者として高齢者とし、「過度の降圧は好ましくない」とまであるとは驚きです。高齢者の半数が降圧剤を処方されながら、高齢者の降圧に問題ありとしているのです。そして副作用で最も恐ろしいのは血行障害で、発癌要因になると警告する専門家もいるのです。
 また、世界で最も売れているのがコレステロール低下剤です。以前守口市で、総コレステロール値と死亡率比較のデータを見ると、コレステロール値が高くなるほど死亡率が減少し、280以上が最も死亡率が低かったとの結果が出たのです。厚労省が定めた特定健診基準では、コレステロールが高いほど死亡率が高いとされていますので、真逆だった訳です。高脂血症に無理矢理されていると言っても過言ではありません。コレステロールも血糖と同じく、重要な生命エネルギーであって、それを薬で不自然に下げることで、大きな薬害をもたらす訳です。
 実際、コレステロール低下剤の一つであるメバロチンの添付文書を見てみます。重大副作用として、横紋筋融解症、筋肉痛、脱力感、急性腎不全、肝障害、黄疸、血小板減少等々、沢山記述されているのです。
 また、特定健診基準の策定に関わった研究者や医師が、製薬会社から多額の献金を受けていたことも明らかになりました。

 ということは、特定健診の受診率を上げる自己負担の無料化は、特定保健指導の中で、薬剤療法へと繋がっていく施策とも言えます。これを議会は否決できないだろうと、当然の如く予算計上し、その中身を一切説明しなかった前市長の責任は大きいと言えます。
 県内他都市でも、広島市と府中市では各々500円と1,500円の自己負担のようで、後の13市町は全て無料化に踏み切っています。受益者負担の無料化は一見すると有権者受けがよいですが、ただほど高くつくものはありません。将来の寝たきり老人や認知症を増やす要因ともなりかねません。
 薬付け医療行政の奥には、医療業界や薬業業界と政界との癒着構造があり、既得権益を死守しようとする「医学村」の動きが背景にあることを喝破しなければなりません。国における医療費削減政策としても、このような対症療法ではなく、食生活の改善や農薬農政からの脱却といった、抜本対策にシフトして行かねばなりません。
 新市長は「隠し事はしない」「不公平はいけない」をモットーにしておられますが、前市長もガラス張りの市政を謳っていただけに、今後の政治手法が試されるでしょう。

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