街頭演説集

第140回 定住促進策

定住モニターツアー失敗と重なる移住促進宿泊助成!

Facebook 2018.5.27

 去る5月22日は140回目の街頭演説。テーマは定住促進策についてです。
 呉市は、住宅政策課を設置して、人口減対策として、様々な人口流入・定住施策を打ち出して来ました。特に、平成28年度に新規予算化した子育て世帯住宅取得助成(1/2助成、上限30万円)や移住希望者住宅取得助成(1/2助成、上限50万円)がそれです。これらには国庫補助はありませんから、財源は全て血税となります。
 さて、新市長体制に入って初の新年度予算に、移住促進宿泊助成30万円がつきました。これは、広島県の片道交通費支援制度と連動させ、呉市が追加助成するものです。
 先ず片道交通費支援制度とは、就職等の理由で首都圏たる東京都、埼玉、神奈川、千葉各県から広島県内へ移住を検討する者に対し、往路若しくは帰路のどちらか安価な交通費に対して助成するもので、2万円を限度としています。因みに平成27年度は80組の内15組が県内に転入、28年度も80組が利用し、16組が転入した実績を持っています。 呉市は、この制度を活用する人を対象に、更に1泊5千円を限度に3泊まで宿泊費の助成を行います。但しこの新制度は、政府の進める地方創生を受けた、広島中央地域連携中枢都市圏における適用となり、呉市以外にも東広島市、竹原市、江田島市、海田町、坂町、熊野町、大崎上島町が対象となります。財源は特別交付税に付加されるという建前になっていますが、これは内訳が明記されていませんので、実際それが反映されているかは不確かで、国にとって地方を動かす巧妙な手段とも言えましょう。
 
 ところで予算額30万円といっても、その内10万円は啓発リーフレットの作成費ですので、実際の助成額は20万円となります。即ち40泊分となり、1回2泊平均とすると20回分の予算枠となります。
 問題は、僅かな血税であったとしても、移住が決まっていない人を対象に、そこまで投じてよいのかという素朴な疑問がある訳です。県の過去の実績を見ても、移住決定率は約2割ですので、残りの8割はどぶに捨てる結果となります。
 実は前市長が初当選した時も、当時定住対策室を設置し、新規予算として住宅モニターツアーを企画計上した経緯があります。これは呉市に移住を希望する世帯を公募し、それらの方々に試し滞在してもらい、その期間内に定住を決断してもらうものでした。当初、応募者が殆どいなかったため、補正予算を組むことなく、呉市への交通費を無料化して再公募した結果、複数組の応募がありました。
 これを18年度と19年度の2ヶ年に亘って実施した結果は、市内の物件購入が決まったのは僅か1組に止まりました。しかもその方は別荘を購入したのであって、住民票の移転はゼロだったという、苦い経験があるのです。しかも、滞在期間に、市の担当者が合併町を案内して回り、それに係った目に見えない人件費が消えたことも、大きな反省点です。
 いつも新市長になったら、このようなばらまき予算を組み、結果は徒労に帰結しているのです。本当に呉市に魅力を感じ、移住を求めて来られる方々は、自然な環境の中での田舎暮らしを切望されている場合が殆どで、それは総合的な施策をPRすることで、獲得できるのです。当時私が失敗を指摘したことで、定住モニターツアーは2年間で廃止され、定住対策室もなくなりました。
 一方、定住対策を首長選挙で訴えて当選された首長が、子育て世帯が転入される場合、市有地を無償貸与するというような施策展開をしている自治体も、全国で会間見られます。ですが、人口が数千人にも満たない自治体がこの様な厚遇をするケースが多く、呉市の様に20万人規模の中核市において、多額な公費を投じて1~2世帯移住して来ても、その効果は雀の涙程しかありません。
 これでは、自治体間における単なる人口の奪い合いにしかならず、自治体エゴのそしりを免れません。そんな目先の施策展開よりも、少子高齢化対策は国が方針の抜本的転換を図ることが求められます。その大きな柱が食の改善です。農薬栽培、遺伝子組み換え食品が横行し、ワクチン勧奨、医療・薬剤漬け行政からの脱却を図らねば、この少子高齢化という呪縛は解けず、真の地方創生は訪れないのです。
 現在の国策たるアベノミクスは、大幅な金融緩和と円安誘導策で輸出産業を活性化し、大企業と大都市には有効ではありますが、反面地域格差、大企業と中小零細企業、貧富の差が拡大するだけです。これでは地方創生が成り立たないので、地方創生法を制定し、ばらまき予算を組んでいるに過ぎず、対症療法の域を出ていないのです。
 ここから変えていかないと、呉市だけで定住を促進し、人口を増やすことなどありえません。木を見て森を見ない行政から脱却すべきなのです。
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